第2章 中世の天文学と物理学
天文学から物理学へ
貴君もまた、うすうす感じているだろう。未だにまだ、運動している物の寸法がその速さとともに縮んだり、物の時間が伸びるなどという胡散臭い“相対論”というものがあって、なかなか払拭することができないことを。これまで受けてきたぼくらの学校教育でも、しっかりと植え込まれてきた。諸君はこれが正しい物理学であると信じられるだろうか? こんなにうっとうしく、厳めしい枷を脱ぎ捨てて、自由と希望の託せる明快な学問へ、この物理学を解放しようではないか! そのためにまず、2018年現在においてもなお謎とされる“光はどこを通るのか(光は何に対する速さをもつか)”を本書では解こうとする。諸君とともに解いてゆこう。
これに先立ち、そのために知っておくべき可能性という道具を調べておこう。つまり、これから見るいくつかの先輩たちの“知恵”がぼくたちを導いてくれるということだ。もう一つは、信用できない学説の上にうっかり立たないためだ。前もってお伝えしておくべきことは、こうして得られる本書が述べる内容は、世界でまだ誰も言ったことのない革新理論へ近づこうとしていることだ。
早速コペルニクスから見てゆこう。
主観論に立つ数学が、ときに物理学を誤らせる
140年 地球中心の宇宙 嵌まってしまった天動説
古代最後の天文学者プトレマイオス(Claudius Ptolemaeus 2世紀)は先に述べた『アルマゲスト』を著す。この本の中でプトレマイオスは、地球を宇宙の中心に据え、その周りをすべての惑星が複数の円運動を合成した運動をしながら回っているという体系を描き、惑星の運動を予測する数学の方法を確立した。……中略……
……中略……
幾何学から物理学へ
1687年 万有引力の発見 ニュートン
身近な観察からでも大発見がある。1687年、アイザック・ニュートン(1643~1727英)は著書『プリンキピア』のなかで、ガリレオ、デカルト、ホイヘンスらの成果を進め、天体間の力が質量の積に比例し、距離の逆二乗に比例する万有引力であることを初めて示した。
コペルニクスの地動説は、当時支配的だったアリストテレス流の「天体は自ら円運動を続けるが、地上では力の働くあいだ運動する」と考える自然学と両立せず、この問題が解決される必要があった。ケプラーは、太陽から出ている力によって惑星が回転していると考え、思索の末、ケプラーの三法則を見出した。ガリレオは地上の力学において、自由落下の等加速度運動を明らかにした。……中略……
ニュートンの運動の法則
物体の大きさを考えない(サイズ=0)でその運動を論ずるとき、質量をもつその物体を物理学では“質点”と呼ぶ。宇宙空間のほかの物体から十分に離れた空間にある質点は加速度(速さや方向の変化)のない運動を行う。このような質点は静止し続けるか、一定の速度ベクトル(ベクトル;方向とその値をもつ量)を保とうとするもので、これを慣性の法則または運動の第一法則と呼ばれる。
空間に2質点が存在するとき、2つの間に力学的作用(力)が働く。同じ力によって加速される各質点の運動加速度はその質点の質量が小さいほど大きい。例えば、2つのあいだの引力によって質点m1の受ける加速度α1 、質点m2の受ける加速度α2 とすると、
F= m1α1 = - m2 α2 (-は方向が逆であることを示す)
である。つまり、質点mに加速度αを起こさせる力Fとの間には
mα = F あるいは α = F/ m
なる関係がある。すなわち、物体の運動加速度は加えられた力に比例し、物体の質量に反比例する。これが運動の第二法則である。
名誉を別ける“時”
1830年 自己誘導の発見 ヘンリー
磁気によって電気を起こす電磁誘導現象をヘンリー(Joseph Henry 1797~1878米)が発見したのは1830年夏のことであった。彼は実験室の都合で詳細な実験を翌年回しにした。イギリスではその1年後れて、ファラデー(1791~1867英)が8月その現象を捉えた。ファラデーは休まず10月、磁石だけで誘導電流を発生させる実験を行なっている。……中略……
光速の謎からの迷走
1905年 特殊相対性理論 アインシュタイン
光を伝える媒質(エーテル)を当時誰も検出できなかったことをうけて、アインシュタインは光速不変の仮説を主張し、1905年、特殊相対性理論を発表する。これはさらに、10年後、一般相対性理論として彼なりに結実させる。
筆者の見解では、この特殊相対性理論と一般相対性理論は、それを立ち上げた前提から誤っていると思われるが、いまだにこれが定説とされている。この理論のため現在の物理学が歪められてしまっているとすれば、その弊害について警鐘を鳴らすのが、本書の副主題である。
……以下略