第5章 存在論

仮定と推論
仮定
1. 組織における組成はより安定な並び方をする。
2. 凝集力によって縮むものは反発力によって止まる(1.による)
 
社会組織の中にそれを探してみると、たとえば悪は正義によって淘汰され、正義は悪によって侵される(2.による)
 そもそも“人間”の存在にどんな価値があるのか。人類とは最も進化した生物なのか。
 生物をつくる最小単位であろうはずの“物質”を考えてみるに、言わせてもらえるなら、物質とは限界の生成物である。物質には大きさあるいは拡がりに限界がある。限界のないものは永続した“存在”となりえない。
 1つの考察がある……中略……


自家製実験
実験装置の製作
 このたびは鋼鉄球(14グラム/)による衝突実験を考察してみたい。位置エネルギー+運動エネルギー=一定。つまり、物体が持ち上げられた高さという秘めたエネルギーと、現実に動いている物体の勢いとの和は不変である、玉の “位置エネルギー”が落下によって“運動エネルギー”に変わったのち、別の玉にこの運動エネルギーが与えられると、その玉はその運動エネルギーを預かって、落下する玉の落ち始めたのと同じ高さまで振りあがることができる。今回作ろうとするのは運動エネルギーだけでなく、宇宙のエネルギーについての“貸借の原理”を説明するものでもある。(書物にある各種の図や写真はここでは略します)……中略……
 装置は下げ振りによる玉の衝突を実際に観察するのが目的である。傾斜面で転がす方法は重心運動のほかに回転の運動量を生じるため、運動速度観察に関して正確でない。今回の糸による下げ振りはその回転要素をほぼ除外してくれる。

――エネルギー保存則の実験
 通常実験では打撃球を左へ15(高さにして34ミリ)持ち上げ、発射すると、第1群の頭に当たり、尻尾の玉が右へ飛び出す。それが第2群の頭に当たってこの群の尻尾の玉が右へ飛び出し11.8°まで昇った。
 次に発射玉を25°持ち上げてみると18.8°まで昇った。15(34ミリ)振り上げて放した玉から7玉経由で受け取った最後の玉は、期待のh=34ミリには12ミリも不足して、22ミリという結果を見せた。これは与えられたエネルギーの64.7%しかなく、35.3%が音や熱となって失われたことを示している。
 完全弾性体の90%の弾性体だとしても、単純思考で0.9×0.9×0.9×…=0.98
0.43
(43)しか伝達しないことだろう。実験に使用した鋼鉄球では64.7%だから、れよりも弾性率は良かったことになる。

つぎに変わった実験をしてみよう。

<マグネット付加による実験>
 ためしに第1群先頭にマグネット(15φ×5/0.35T/2.6㎏w)を付け、打撃球を15°から放してみた。すると、驚くなかれ !  尻玉は 15°を超え、24.3°84ミリ)まで 昇った。第1群にマグネットをつけると、15゜(高さ34ミリ)からの落下で24.3゜(84ミリ)まで昇った。落下始点よりなんと50ミリ高い位置だ!
 これは失速分(エネルギー損失)を加味した22ミリを超え、エネルギー損失がないとした期待値34ミリより50ミリも高い84ミリまで達したことを示している。12ミリのエネルギーロスがなかったとしたら96ミリに達していたはずである。

エネルギー貸借の原理

貸借の原理
――実験が示した物理
 先頭に付けられたマグネットがもたらす活力とは何なのか? このマグネットは落下球に対し何をしたのだろうか?

1 マグネットが働いたメカニズムとは?
 運動力学的な見方によれば、振れ落ちてくる玉を磁力によって引き寄せようと、玉を加速したにちがいない。
 観察したところ、落ちてくる玉からこのマグネットが引き寄せられるようには見えない。マグネットは後続する4つの玉たちを引き付けていて、この玉たちと一体化している。それ故、マグネットは落ちてくる玉に対して自らの4グラムという質量ではなく、4つの玉たちとの団結力によって414×460グラムの質量を持つ物体であるかのように振る舞い、14グラムの落下球をほぼ4:1の比で加速するのだ。

まず間違いないのは玉の位置エネルギーmghの変化である速度υと、マグネットの引力により加速される未知の速度χとの和になっている。衝突直前の玉のエネルギーは     (1/2)m(υχ)2
に違いない。
 この玉は初群の玉の先頭にくっついて止まり、代わりにこのエネルギーを最後尾の玉が託されて飛び出し、後群の先頭にぶつかる。仮に玉が完全弾性体(反発係数e=1)であるとするなら、飛び出した玉に託されたエネルギーはやはり
     (1/2)m(υχ)2
のはずで、空気の抵抗を無視できるとすれば、それが第2群の頭を撃ち、実験によれば同群最後尾の球がアンカー(最終ランナー)として同様の速さで飛び出すだろう。このエネルギーもまた
    (1/2)m(υχ)2
のはずである。
このエネルギーでこのアンカーがHまで昇ったとすれば、その位置エネルギーは(1/2) m(υχ と等しいのがエネルギー保存の法則だ。すなわち
    (1/2)m(υχ)2
=gH
 という方程式になる。これを解けば打撃球(落下球)が最初にマグネットを叩く速さχが求まるはずである。

2 玉はなぜ落下高を超えたのか
 これまでの常識は、落差hの打撃球に打たれた玉はベストの場合で同じ高さまで昇る、というものだ。もちろんこれは伝達率=1(完全弾性体)で、空気の抵抗なしとした場合だ。そして事実、実験でもほとんどこの通りであった。今回の実験はこの常識を覆し、撃たれた球のほうが打撃球の落ち始めた高さをはるかに超えることを明らかにして見せたものだ。
……中略……

 位置エネルギーとは、その質量が地球の重力に引かれている中を、いくらの高さまで打ち上げられるか、あるいは落下させられているかに関係している。すなわち、物体の質量と、質量の加速度の下で動いた距離である。重力の加速度はこの実験の全体を通じて不変であった(厳密には不変ではないのだが)
これらのほかに、どんなエネルギーがあるというのか?
……中略……

 さてマグネットというのは物を強く引き付け、あるいは斥けたりする。しかし、マグネットはエネルギーを造り出すことはなく、従ってマグネットだけで車両の走行など、連続して働かすことはできない。電磁石としてモーターを回すにしても、その仕事をさせるのは磁力ではなく、電流なのだ。電力の供給なしに列車を走らせることはできない。磁気はいくらかの仕事をする能力を持っているようだ。重力と似ている。

4 宇宙貸借の原理とは?
 実験を見てわれわれが驚いたのは、玉が持つ速さと重力場による潜在的エネルギー――これを“位置エネルギー”とわれわれは呼んでいた――との関係をわれわれはよく知っていて、その他のことはわれわれの念頭になかったからである。
  わたしがいたずらを思いついて、強いマグネットを玉の前に付けてみたとき、もうひとつの潜在エネルギーを付け加えたのに違いない。それはどうやら磁気の力――磁界(磁場)――を加え、このため玉は磁場のエネルギーをも、持ったことだった。この磁性物質である鋼球は、マグネットがつくっていた磁場の中で磁気誘導を生じた磁荷qを持っていて、その磁場はマグネットの磁荷Qを玉のほうへ落下させるのである。2つの間に働く力はどちらも、ニュートンの力学的“作用反作用の法則”によって相等しい。4つの玉と一体に群れたマグネット群の質量は少なくとも落下球の4倍はある。裏を返せば、落下球の質量はその4分の1であり、同じ力を受けるこの玉は4倍の加速度を得るのである。

 ところで、磁場から得た打撃球(落下球)の速度が先述のχ=√(2 g) 〔√(H0/0.647)-√() 〕=137/secであるとしてよいだろう。すると衝突寸前の玉の速さはυχということになる。g980/sec2、h=3.4㎝、H08.4㎝として計算してみると、
    υχ=√(2 g)(H0/0.647)159.5/sec ……(イ)
 になる。 これから137を引くとυは22/secにしかならない計算になるが、この式を適用するのは妥当ではないからである。通常ならυ=√(2 g)81.6/secであって、これにχを加えると218.6/secとなり、これが真のυχであり、推測値()159.5/secはその73%に当たるが、これはそれだけのエネルギー損失を含んだものとして容認できる値だ。
 このエネルギーは何がつくり出したものかといえば、マグネットであろう。マグネットはマグネットの持つ潜在エネルギーの中から、少なくともこのエネルギーを玉に貸し与えたのである。玉は借りたエネルギーをあたかも自分が現実に持っていたエネルギーであるかのように、アンカーたる打球を叩いて最初に持っていた34ミリというエネルギーよりも高い位置まで昇らせたのだ。マグネットはこれに相当する分を、最初に持っていた磁力から減らしているはずである。
 マグネットはこのとき貸したエネルギーをいつ、どのようにして回収するのだろうか。その答えはすでに前頁で述べた、「同じ実験を繰り返すためには、わたしはこのきつく付いた玉たちを引き離さなければならない。マグネットをやっと単独にさせることができたとき、わたしはマグネットに対し仕事をして返し、マグネットはそれだけのエネルギーを取り返している。」の中にあった。
 マグネットはこのマグネットが製造されたとき、潜在エネルギーとして人為的に与えられた(貸し与えられた)。マグネットはこの借りた潜在エネルギーの一部を“また貸し”をして、顕在のエネルギーをつくり出して玉を引き寄せ、自らの潜在エネルギーを減らしたが、吸い付けた玉をわたしが引き離すというエネルギーによって返済をうけ、最初の磁気を取り戻している。高く打ちあがる玉にエネルギーを与えたのは、結局、このわたしだったのである。
 これが宇宙貸借の原理だ。