印刷用         不定期便  第25号
   
不定期便 25号 01010月22

電磁誘導ふしぎ

その

発行
2010年10月22
発行者
熊野宗治
 
     
 M氏への手紙 4

IHヒーター   

 不定期便第25号をさしあげたいと存じます。テーマは前回から続きます。
 本紙は、不定期便第22?号を修正した更新分です。22号は「IHヒーターのメカニズム」となっていたと思います。最近のカタログを見ましたら、本体内部のコイルまでが書かれていることに気付きました。それによりますと、コイルは大きく巻かれているようで、現在のものでは火力が大中小と調節できるように、それが二重、三重でつくられ、大小の鍋に対応するようになっているようです。
 以前差し上げた説明で、原理的には誤りはありませんが、実際のつくりに合わせて、図と文章を直しておきたいと思います。



日本電子専門学校のサイトから(転載未許可です)

   IHヒーターのメカニズム
 IHヒーターに関する各メーカーのカタログでは、企業秘密にあたるためか、あまり詳しいメカニズムを解説しないようです。

 解説に当っては、コイルによる磁場変化から電磁誘導のため反電流が生じ、電気抵抗のため発熱する、と説明してしまえば簡単ですが、いかに反電流が生じるのか、銅と鉄の違いはなにか、因果関係のよく分かる説明が欲しいところです。いかにして鍋底に熱が生じるのかのメカニズム説明をするだけでなく、鍋を置かなければ電力を消費しないことのメカニズムも説明し終えなくてはなりません。なぜなら、エネルギー保存の法則を考えれば、鍋をのせて熱しなければ、一次側でもその仕事量がゼロであり、電力を消費しないはずだからです。この二つを明瞭に説明しなければなりません。今回それを試みましょう。

電磁気には基本的に

 @電流は磁場をつくるが、磁場は必ずしも電流を作らない。
 A磁場は磁場が変化するときにだけ電流(起電力)を作る。
という顕著な性質があります。

 いま、電磁誘導を起こさせるために、コイルの電流が+方向(下から上へ向かって右回り)に次第に大きくされているところを考えます。その結果現れている現在の瞬間における磁場の様子を図に描いてみています。
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              A                             B
         非磁性金属鍋                        鉄 鍋

反電流は生じるが、良導体を流れる電流は仕事をしない。いくらかの抵抗があれば、それなりの熱を発生する。この熱は鍋に生じる内部エネルギーであって、一次側には発生させない。
 鍋底に起こる反電流とそれによる反磁場は一次側磁場の増加をいくぶん抑える。このとき力学的反力をうける。それ以外での一次側電流は自己誘導によって抑制され電力の消費もほとんどない。

電磁コイルの磁場によって鉄鍋は磁化し、鍋の鉄原子をつくる電子の向きが整列する。このため鉄鍋に強い順磁場が生じる。この強い磁場変化に対して強い誘導電流(反電流)が発生する。
 誘導電流は電気抵抗に阻まれ発熱し、電流は抑制され、一次側へ及ぼしている反磁場も弱まる。
 自己誘導で抑制されているはずの一次側電流はその分、流れることができ、電力をそれだけ消費する。

 図の左は非鉄の場合で、右は鉄鍋の場合です。いずれもコイルがN極を強めつつあります。C図の半円は天板を上から見た誘導電流の流れを示します。上半は鍋底におこる誘導電流、下半はそれを起こさせたコイルに流された電流を示します。共に上から見た図です。中間は断面図で、コイルが二重である場合を描いてあります。

 図の左はアルミや銅鍋の場合で、金属ではあるが非磁性体、右の図は鉄で代表される強い磁性体の場合です。磁力線を一目してわかりますのは鉄のほうが効率よさそうだな…ということでしょう。いずれにしてもN極の増加に対して、鍋底には誘導電流が生じるでありましょう。それはレンツの法則のとおり、N極を
   最初に鍋底に当るのは本体(一次側)のコイルによる磁場です。磁場が当っているだけでは電磁気の基本的な性質@から鍋底に電流は生じません。交流電源によるコイルの磁場はいま増加しつつあります。増加しつつある磁場に対して、そうはさせまいとして鍋底である金属に電流が生じます。磁束を取り巻く輪(電流の輪)を想定すると、その向きは図のようでしょう。は紙面の裏からおもてへ、はおもてから裏へ抜けるものと表示することにしましよう。発生した反電流が増大しつつあるかどうかはいちがいに分かりません。

 まずヒータートップに何もないとき 電源につながれた変動電圧はまず一次側の電流を流し、コイルにN極を生じさせようとします。N極磁束が増大します。この磁場変化によってコ
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ル自身、これを止めるような磁場をつくろうとして加圧電流とは逆向きの起電力を生じます。これを「自己誘導」と云い、1830年、J・ヘンリーによって発見されたものです。巻き数の十分なコイルはこの自己誘導のため電流は結局流れません。これはちょうど、強いバネを押そうとするようなものであり、つまり電力は消費されません。厳密にはコイルの電気抵抗によるわずかな発熱があり、電源が入っているかぎり幾分かの電力消費はあると思わなければならないでしょう。

 

つぎに非鉄鍋を置く場合

鍋が置かれたとき、鍋が良導体であれば一次側からの磁場変動に対して反電流を生じ、鍋の電気抵抗がゼロなら発熱せず、電磁エネルギーとして一瞬間預かります。次の瞬間には電位の向きは逆転し、エネルギーはそっくり返済します。良導体でも少しは抵抗があるので、少しだけ発熱し、電力を消費するでしょう。つぎに鉄鍋の場合はどうでしょうか。

            †

次回につづけます。それではまた。














  

  

C図










 

 

鍋底に起きる電流  鍋底硝子 コイル  コイルの電流

 

C図、上と下は平面図(IHヒーターを上から見た図)、中間は断面図を示す。

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