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  不定期便 第69号 013年3月3日

     える物理学 1
    
    宇宙膨張説        ―――013.2.9 


発行
2013.3月3日
発行者
熊野宗治
 
     

ビッグバン誕生説の疑惑

空間が膨張しているというのは本当か?     2013.2.9


 わたしは有り余った時を費やすために、よくカフェに出かけ、ゆったりとソファにかけて物思いにふける。ときにはこれまで積み重ねてきたものを統括してみるのもいいかもしれない。

 満天の星すべては本来よりも赤みがかっているのが観測される。これがことの発端だった。これは赤方偏移と呼ばれ、赤方偏移を起こすのは星が遠ざかりつつあるために光の波長が伸びて起こす“ドプラー効果”による、と説明されている。野原を行く汽笛が、過ぎ去りざま、音程を下げるあの現象である。
 一旦こう説明されると、それは違うと申し立てる科学者は一人もいない。なぜ申し立てることができないのかといういきさつは、色々とあろう。
  ドプラー効果はまさしく物理的現象であるから赤方偏移のこの説明はいかにもしっかりと物理学に副った説明にみえる。この説明で正しいとすれば、宇宙膨張説がもたらされたとしてもおかしくない。宇宙膨張説を遡れば、ビッグバン宇宙誕生説がもたらされても、いたしかたない。ほんとうに空間は膨張しているのであろうか?

    人は両眼で立体視することができる。いくつかの対象物までの、自分の眼からの距離を見分けられる。卓上のコップが1mの距離にあるのか2mの距離にあるのかは、他に比較物がなくても判断できる。
 いま眼の先にあるレンガ積みの柱が、自分が座っているソファから5mばかり先にあって、絵が掛けてある。それらを静かに眺めているとしよう。ぼくらは、柱までの距離(空間)が膨張していることを実感できるだろうか? もしもビッグバン説が正しいなら、空間は膨張しているはずである。宇宙膨張説が正しいならばだ。
 そしてそうなら、実際には自分は空間が膨張していることを感じることはできないから、自分の眼のレンズと網膜との距離も、空間と同じ割で膨張しているはずと考えざるを得ない。わたしはソファに深く座りなおして、さらに考えを進める。

 自分の手足も縮んで行くようには見えないから、
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眼と同じように自分の身体も空間の膨張率と同じ率で大きくなっているにちがいない。

同様にぼくがいるこの建物全体もまた、大きくなっていゆかなければならない。
 もしビッグバン説を信じるなら、以上のことも疑うことはできない。物指(ものさし)もまた同様に膨張しているから、物指でもって空間の膨張率を鑑定することもできない。2つの対象物が互いに静止しているときの音と、互いに異なった運動速度のために相互に相対速度を持っているときの音とは、ドプラー効果によって音の高さつまり振動数(1秒あたりの振れ数)に違いが生じる。ドプラー効果は互いの相対速度のために生じる。さっき確かめたのは、静かな空間のどの対象物との間にも、相対速度は生じていないことであった。このような等質膨張空間にあって、わたしと柱との距離も、レンズと網膜との距離も、他に比べて特別な運動速度(相対速度)を持っていない。
 このことを証明するもう一つの有効な例が実は以前にもあった。

もう一つの証拠



K氏への手紙 1
  《しかしK様、私たちの『幻子論』では、光波を伝える“エーテル”が独立に存在するのではなく、物質が物質の存在と同時につくっている「場」を、場の性質の相互作用という“振動”として光は走る、と唱えるわけです。
 このことは、地球がどんな高速度をもつ可能性があるにもかかわらず、いかなる方向にも、とくべつ色づいて見える(波長が変化する)こともない平穏さを持っていることを矛盾なく説明することが可能なわけです。

    ビッグバン説では、空間は等質膨張(あらゆる空間が同じ率で膨張)している、というものですが、その考えは現代の青年が頭でこしらえる“青少年向け非科学フィクション”とまったく同程“科学性”しかもっていないことを、次のようなことからも言えそうです。

私、暇になると色々頭に浮かんできて困るのですが、いま、地上に高さhの電柱が立っていて、電柱の頂上から上空χにあるPなる地点を想定します。それを空間の一点とします。この空間点のχはビッグバン理論によりますと、他のいたるところと同様にkなる率で膨張しているわけです。つまり次のある瞬間にはχより kχだけ高いところにあるわけです。ところが空間は全てがつながっていて、当然ながら、その電柱が立っている足元の地面からPまでの距離H(=h+χ)もまた、同じ率の等質膨張でなければなりません。地面からPまでの空間も、次のその瞬間には(h+χ)にkを乗じただけの空間の膨張がなければならないから、その点は電柱からの膨張量とはkhばかりズレて存在することになるのです。

つまり、空間の等質膨張だけでは矛盾のない膨張は不可能で、電柱自体も膨張するとしなければ

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理屈に合いません。電柱という物体をつくる分子・原子のサイズも、またそれらの相互間距離も、膨張していなければならず、何もかも、つまり“膨張”を測定する定規そのものも膨張していて、膨張を確認することができないわけです。するとドプラー効果も起こりえないはずです。

ドプラー効果という現象は、物指(ものさし)や時間といった常に不変な定規を基に成り立っているものです。光の振動数だけが不変で、物指も含めてあらゆるものが、まるで設計図面のように縮尺どおりに縮小あるいは拡大されている、という考えは、漫画の世界でもなければ、ナンセンスな空想論でありましょう。                           2008年3月11日》

 

K氏への手紙 2

《K様、先に3月11日付、さし上げたお手紙で、「ビッグバン説の基となる“等質膨張”とは、物体である定規もまた膨張していて、膨張を確認することができない。するとドプラー効果も起こりえないはず」と断じました。今日はそれをもっと明確にしておきましょう。

 等質膨張とは、空間も定規も、何もかもが膨張していることを言い、そのことは電柱の話で確認しました。そうしますと、この膨張という物質間距離の
変化(ヽヽ)は相互間の相対的運動(ヽヽ)ではないことを示しています。相対運動のない物同士が伝えあう“波”はドプラー効果を生じないことをわれわれは知っています。『幻子論』の中ではドプラー効果の説明図*で示してあり、あれでよくわかるでしょう。

   われわれにとって、われわれから同距離にじっとしている対象物から聞こえる音はドプラー効果を生じません。仮に等質膨張が正しいとして、対象物までの距離を測るメジャーという物体も同じ率で膨張している(我々に対しじっとしている)とすれば、対象物はメジャーに対してすこしも運動してはいません。そしてたしかに、そういう対象からはドプラー効果は生じないことを現実のこととしてわれわれは知っています。メジャーに対して“相対的”に運動するときにだけ生じるのがドプラー効果でした。つまり等質膨張というものはそれ自身“互いの間の運動”()()なく(ヽヽ)、しかるに、ドプラー効果は生じません。この事実は誰もが知っているはずです。このことは、赤方偏移が「等質膨張によるドプラー効果によって起こる」とすることは、とんだ思い違いであることを明確に示しています。等質膨張が“運動”とは異質なものであることをさらに確認しましょう。

 その証拠の一つは、具体的には何に対して運動することによって互いの距離を広げているか?という質問に答えられないことで示されましょう。じっとしているのは電柱なのか? それとも電柱からχにあった一点の方か? これを誰も決めることができないわけです。その証拠にまた、ビッグバンの中心はどこか?に、誰も答えることができません。つまり、あの膨張というのは人の頭の中に作った“概念”であって、“具体”ではないからです。
                   3月24日》

*『幻子論』 P.181

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