C                  不定期便  第80号 
                             
不定期便 79号   013831  

     大学での相対論 3   時間の流れを見なおす?2
 

 放送大学講義の受講を続けます。
 13章 電磁波とアインシュタイン
 13.3 光速不変性により時間の流れを見直す時間あわせ,ミンコフスキーのダイアグラム
を見てきました。  
 
 
  今回は ミンコフスキーのダイアグラム
から続きます。
 なお文中、ワープロ印字の限界から、例えば√(A・B)と表記して括弧内のA・Bという数式全部が√内の数である約束をお許し願っています。
放送大学講義  初歩からの物理学 から        米谷民明教授
 講義内容  わたしの疑問
(さて、説明するところは、)

 しかし、K´時計では同じ時刻である。K´系でも中間点から発した光信号が物指の両端に常に同じ光速度cで同時に到着するからである*1 図5


   (この図は筆者が作図したもの)

それには、K´時計が合っている軸(空間軸)がK系の空間軸とは異なり、光線が軌跡の両端と交わる2点A´、B´を結ぶ斜めの直線であればよい(コロンブスの卵!)。

 
これはあたかも光はc´ から発してA´やB´へ到達するかのような説明であるが、出発した時点ではCであった。Cから出た光がもし、図の右端のB´に到着したのと、左端に到着したのとが同時なら、Cを発してAへ光線は進んでいなければならない。´が時刻tでの物指の位置だから

――疑問

χ´ 軸はまるでK´におけるχ軸であるかのように説明されているが、時間を空間と同様に見ていることから起こっている錯視であろう。もし図13.213.3の表現法によるなら、K´のχ軸はχ´のような傾斜する線ではなく、例えば´でなければならない(11)。説明で生じるこれらの角度は空間上の実際の角度でなく、計算グラフ上の補助線にすぎない。

説明での、両端への光の同時到達は下の図の右図でなければならないだろう。光源の位置が物指の真ん中にくっついている、という考え方だ。――
   8
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  講義内容  わたしの疑問
これがK´系で一定時刻の線、つまり空間軸を表わすので、χ´軸と呼ぶ*2

´時間の流れはχ´ 軸が平行に上方向にずれることに対応する。χ軸とχ´軸は互いに傾いているので、KとK´の同時刻の定義が異なる。
 K
´の時間をKの変数で表わそうとすると、K時間tと位置座標χ*が混じり合う1次の式(ct´=αct+βχ)になる。 図のχ´軸はt´0に対応しct=−(β/α)χとなる。その傾きはυ/cに等しく、−(β/α) =υ/cで1個の係数αが残り
 t´=α(t−υχ/2*3   ……13.3
 αはK系とK´系の時間空間の軸の目盛を関係付ける係数。

KとK´の時間のずれを調べる。K´で長さLの物指を、K´の運動方向と直角な向きyに向けてあるとして、その中心から両端に向け発射した場合を考える。


 両端に光が到達する時間は

 t´=L/2c)
 これをK座標から観察する。このときの光速はもちろんcである。
 光はK´で見るとK´ のy軸、つまりy´ 軸方向に進むが、K系の立場で見るとその間に物指はχ方向に速度υでずれてゆくので、Kのχy平面に描いた光線の軌跡は、Kのy軸からは傾いた線になる。到達するまでの時間凾狽ヘピタゴラス定理から
   [(/2)2(υt)2]=c凾
を満たしている。これを解けば
凾煤=i1/[1−(υ/)2])(L/2c)             ………()
を得る。物指の運動方向に直交しているので、どちらの慣性系でも両端で時計は同時刻である。

 2新発見であるかのように歓喜しておられる 線分A´´は、時間をまたぐ仮想の線なので空間を示す量ではない。このχ´軸上にχ座標があるかのような説明であるが、まるで物理量になっていないのではないか(12)。理学生が単位を取るために、こんな説明を「はいそうですか」と聞いていなきゃならないとしたら気の毒だ。 この先で説明される、運動による短縮とは逆に、図からは明らかに飛行物は伸びることになっている。

このχはなにか? K系におけるK´の原点の位置座標か?

3(確認)
 −β/α=υ/cならβ=−(υ/c)αとなる。これを仮定の式ct´=αct+βχに入れるとct´=α(ct−υχ/) になり、たしかにt´は t´=α(t−υχ/2)となる。しかしct´=αct+βχという変な式は、どんな理屈から引き出してきたものか?(13)


突如持ち出された今度の物指は今考えている物指とはまったく関係がない。

   
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KとK´に配置された物指をぴったり重ねて同じ長さであることを確かめられるので、両端間の距離はどちらも物指長さに等しいとしてよい*4。以上を合わせると、KとK´の時間は
 ´=凾煤[1−(υ/)2](13.4) *5 の関係にあることになる。Kに静止しKで光信号で合わせた時計と、それに対して速度υで運動しているK´の時計を比較すると、後者は√[1−(υ/)2]の割合で遅れている。(縮んでいると言うべきか) K´系に静止する物指はK系ではυで運動しているので、左端がt=0でχ=0にあるとすると、χ=υtだから(13.3)式は
  t´=α(t−υχ/2
   =α[1−(υ/c)2] t ……() 時間差も同じ関係になるはずだから、(13.4)と比較して
 α=1/[1−(υ/c)2]  ()*6
と決まり、(13.3)式つまり、二つの慣性系の時間の一般関係式は
 t´
=(t−υχ/2)/√[1(υ/c)2]

              ………………(13.5)
となる。

 χ=υtだとしたら、このχは原点oからt秒後にυtだけ動いた量であって、物体など対象物の位置を示すような任意のχではないことに注意を要する。

(13.5)式は
  t[1−υ(χ/)/2]/√[1(υ/)2]
となり、χ/tがυであるから
 =t[1−υ2/2]/√[1(υ/)2]
 =t√[1(υ/)2]
これは(13.4)式と同じものだ

4 
KとK´に速度差があるなら、物指をぴったり重ねておくことはできないはずでは? (14)
5確認)c凾´=L/2 を()に入れると凾煤∞凾´/[1−(υ/)2]
しかるに凾
´=凾煤[1−(υ/)2]

5右図は光の場に対して座標(マイケルソン干渉計をイメージ)がυで右へ運動している。光はL字の骨組みに沿うように発せられるが、実のところ骨組みなしでも光だけで進める。  軸の先につけてあるミラーMに光が到着したとき、骨組みo´Mに沿う光の速さ´ で凾舶b間なら、その距離はc´凾狽ナあろう。 その間、干渉計はυ凾狽セけ動いている。

 光が発した瞬間の発光点はo´ではなく、あくまでoだ。だから実際の光はc凾狽ニいう長さを走っている。そこで、三平方の定理によって求めるなら
 (c凾)2 =(´)2 (υ)2
で、´=c√[1−(υ/c)2]という見かけの光の速度(相対速度)が求められる。

 一方、相対論による見方によれば、骨組みに乗ってるアインシュタイン博士にとって
´ではなくcであり、代わりに、凾狽ナなく凾´である。すると、軸長Lはc´凾狽ナはなくc凾´である。そして三平方の定理を用いれば
  ´=凾煤[1−(υ/c)2]
である。こう考えても(13.4)式ができる。

6(確認)
  ()式のtの減率α=1/ [1−(υ/c)2] (13.4)右辺凾狽フ減率√[1−(υ/)2])とを等しく置いた? 
  α [1−(υ/c)2] =√[1−(υ/c)2]
すると()式=1/[1−(υ/c)2]を得る。
 しかし、こんな比較の仕方があるものか!(15)

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固有時間と運動による時間の遅れ
                    .238

 凾狽ェKに静止して配置されているたくさんの時計で測った結果を合わせて得た時間差である*のに対し、K´の時間差凾´は物指に固定した時計で測ったものであることを注意されたい。後者は物体そのものに特有な時間で、固有時間と呼ばれ、τ(タウ)で表わす*7

  (中略)

 慣性系ごとに時間の同時性が異なるだけでなく、時計の進み方は運動ごとに固有に定まるものだ。浦島太郎の物語のようなことが、現実に起こり得るわけである*8


              つづく























7 物体がそれぞれ自分なりの時計を用いるのは、何の支障もなく勝手である。
 カゲロウにとっての一生が我々から見て、気の毒にもたった1日であったにしても、カゲロウ自身が稲穂のひと揺れを1時間と数えたって、構わない。迫ってくるコンバイン・ハーベスタから逃げ出すべきころあいは、同じカゲロウ時計で見計らえば大丈夫であろう。
 そのコンバインの位置をカゲロウ時計で測ろうと、人の腕時計で測ろうと、その瞬間の位置は同じである。
 同じ畑で起こることを一括して把握するには、どちらでもよいから、どちらかの時計に決めたらよいではないか?(16)


*8 こんな風に(17)決め付けられて、われわれはこの先、物理学をどう進めたらいいんだ?!
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