C       不定期便  第88 
 
 不定期便 88 014年 1月24
          相対論を超えて 4 

    質量保存則物質誕生相容れるか 2

発行
2014年1月24日
発行者
熊野宗治

 宇宙はなぜ真空か    013/11/22

 

重力に関する一般認識は真か偽か
  万有引力によって全てのものは一箇所に集め られる――偽

万有引力はきわめて弱い。例えばコップと水との例を見よう。これらのあいだにほとんど働いていない。万有引力を式でいえば、
   F=G×質量×質量/(相互間距離)
 分母の距離を無限小にしてゆけば、力は無限大となりそうにみえる式である。
 万有引力常数Gは
   G=6.672 59×10−11 m3s-2kg-1
(国際測地学協会1999)である。


  これは質量が各々1 kgである2つの物体が1mの距離で引き合う引力を単位 N (ニュートン) で表した値と等しい(ウィキペディア)。単位は、mは長さ1㍍、sは秒、㎏は質量1キログラム。ベキのマイナスは逆数であることを示し、分数の分母に当たることを示す。だから10−11は非常に小さいものであることを示している。たとえば質量1000 kgの物体同士が1 m離れて引き合う力は約6.7×105 Nであり、
   大体地表で6.8 mgの物体に働く重さに等しい(Wp)*。1円玉の100分の1の重さよりも小さい。1㎏同士なら、その100万分の1だ。わたしの計算に間違いなければ(表1)、1kgの鉛の玉はその半径が2.76㎝になる。2つの玉は互いにおよそ5.5㎝まで寄せることができよう。このとき2つのあいだに働く万有引力は2.2×10-3㍉㌘の物体の重さに相当する。つまり、1kgの鉛玉2個を密着させたときにも、相互間には2.2㍉㌘のさらに1000分の1の重さしか万有引力は働いていない。
 水滴がコップに付くのは主として親和力*と水の表面張力による(親和力については訪れる機会に考えよう)。引力の作用はわずかである。

 磁石と鉄片とをそれぞれ指でつまんで、互いのあいだを1ミリに保持するのは困難なくらい磁力は強力である。気の緩む(いとま)もなく、二つはガチッと音を立ててくっ付いている。
 一方、静電気を帯びていない鉛玉を長さ1mの糸で吊し、同様に吊した別の鉛玉を1ミリまで接近させても、1ミリの隙間を空けて保つことができるほどに弱いのが重力である。言うまでもないが、万有引力とは、質量がつくる力場(重力場)のことである。

 万有引力とは別に、近距離において働く「場」の存在が知られている。それらは重力場よりもさらに複雑な性質を持っている。

 1つの例に、磁力のもとである「磁場」がある。もう1つは静電気力を及ぼす「電場」である。
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    不定期便  第88
力学的作用のほか、それらの場と場は互いに変わった作用をしあう。知られているところによれば、磁界(磁場と同義) の“変化”によってその周りに電界が生じる。磁場が存在するだけでは電場は生じない。

*わたしは「電界」や「磁界」のように「界」を、それがなんらかの作用を能動的に起こそうとするらしいときに用いることにしている。また、ここでの“電位差”とは電界の密度勾配を云うことにしている。

 一方、電位差の“変化”によって周囲に磁界が生じる。同様に、電場が存在するだけでは磁場は生じない。なぜ、どのような仕組みでそれが起こっているかについては、わたしにも分からない。
 場の種類に関しても、磁力や静電気力が必ずしも距離の2乗に逆比例するわけではないのと同様、最近の研究によれば、距離の3乗~6乗の逆数というように近距離で急速に働く場が存在するらしい。分子間力や核力の原因として説明されている。

 質量はそれぞれその周りに重力場を持っている。互いの場が作用しあう範囲に入ったとき、1つの質量は相手の場によって引力の作用を受ける。この仕組みの詳細についても、まだわたしは知らない。
 空間に2つの質点――質量を持つ物体の体積を理想的にゼロとみなす存在点――があって、最初互いに静止していれば、万有引力によって互いに接近しあうような運動速度を持ち始めるだろう。引力によってその速さを早める加速度は互いの距離の逆二乗則(距離の2乗に反比例)に従う。したがって、互いに近づくほど加速度は大きくなる。
  だが、質点はその体積が、つまりそれが球体だとすれば、相互間距離を決めるその直径が無限に小さいのだから、

   実際にはその内側に含まれる質量は高次無限に小さい。それゆえ、数学者を悩ませる、万有引力における“無限大問題”は存在しない。

 質点と呼ぶものは現実的には点ではなく、いわば“団子”である。つまり質点とは、中心部ほど密度が高い重力場の団子である。わたしはその最小単位である場が初めて団子になる瞬間の状態を“幻子”と呼ぶことにしている。したがって、“幻子”は“場の源泉”とも“物質”ともつかないものだ。
 2質点が互いに離れあう速度を持っている場合にも、引力によってその速度を減少させるような加速度を受ける。その加速度は互いの間隔の逆二乗則に従う。互いの運動によって間隔がひらいてゆけば、その加速度も逆二乗則に従い急速に衰えてゆく。もし間隔のひらく早さが勝っているなら、その運動速さを減少させようとする引力は急速に弱まってゆき、ついには残った速さで離れあう運動として永久に続けようとするだろう。その際、互いに相手からの脱出速度を超えている。

 質点同士が近づきあう速度を持っている場合でも、その軸がずれているときには、質点は互いのズレの中間点に焦点を持つ放物線(もしくは楕円)を描いて速度を増してゆく。そうして、焦点に対する最接近点で最高に達しその後は互いに離れあう激しい速度を持って、互いの脱出速度を超えていれば、永久に離れあうだろう。


 万有引力によって2つの物質が宇宙の一箇所に集められることは実に起こりにくいことなのだ。
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宇宙でのガスの粒子運動速度がわずかであっても、あるいは、うんと静かにガスを袋から取り出そうとしても、それぞれのあいだの万有引力がなきに等しいために、その空気分子たちが互いに離れあう速さを減じさせて近傍に留めることができないので、永久のかなたへ散ってゆくのである。それが地球の近傍での作業だとして、ガス分子の運動速度が地球へ向かっているものは地球へ戻るだろうが、残りはどこかへ去る。しかるに、宇宙は真空である。
 

幻子集団から素粒子へ  11/25

  
しかし物質誕生の謎についてよく考えてみれば、どの空間にも物質が生まれる場所があり、その意味では真空ではない。なぜなら、宇宙のたった一箇所からでも幻子が発生したのだとすれば、他の箇所から発生し得ないと限定することはできないからである。

 ではいかに地球のような天体が生まれたのであろうか。
 図1のAは互いに脱出速度を超えない幻子たちのグループである。小さな1つの点が1つの幻子を表わす。幻子が全宇宙のたった1箇所に生じたと限定する必要はない。1つが発生しうることは、別にも発生しうると考えなければ辻褄が合わないからである。
 同様のグループBが、Aのグループから離れた空間に存在する場合が考えられる。もっと間隔を置いてCなるグループの存在の可能性も認めなければならない。

  
 




           図1


  幻子たちが無きに等しい引力しか互いに持てないにしても、ある接近した同士は互いに引き合う微力を持ち始める。そうして集合したものがAである。全体の平均的引力中心が、そのほぼ球体の中心付近にあるだろう。これを重力場の中心として“重心”と呼ぶことにしよう。Aグループの中心付近に重心がある。(重心近くの幻子は大きな速さを持つことがP.2のことから想像される)
 ABの重心同士は幻子1個ずつの引力よりも大きな重力を持っているであろう。

 
 

             図2



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  つまり、ABとは、互いにずっと離れた距離にあっても、互いの脱出速度以内の速度を持って存在しあうこともあり得るだろう。
 するとAB、2グループは互いに引き合い、衝突し――といっても、共に非常に(まば)らな、ふかふか団子だから、幻子と幻子が正面衝突することはまず考えられない――互いにすれ違う際に、何らかのエネルギーを空間に放出し、うまくゆけば1個の団子に合体することもあろう。こうしてABの合体したK1という新たなグループ団子が出来上がる。当然に、AB単独にあったときよりも、K1団子の質量は大きい。
 質量の大きくなったK1のつくる重力場は、より遠くにまで及ぶようになるだろう。すこし離れていたCグループの運命はどうなるであろうか?  

*ここの「エネルギーを空間に放出し」というのを頭に留めておこう。この放出がない限り、団子が形成される原因つまり、2つの質点同士が拘束しあうことは起こらないはずだからである。


Wp ; インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」のことをこう略記しました

 

質量1000 kgの物体同士が1 m離れて引き合う力はF=G×質量×質量/(距離)
   
=G(1000 kg)/1m2=G×[106 kgm-2]
   
(6.67×10−11 m3s-2kg-1)×[106 kgm-2]
   =
6.67×10−5 kg ms-26.67×10−5 N

 
これを地表での質量Mの重さWでいえば
   
W=× ms-2×9.8 ms-2
 
これとFとが等しいとおいて
   
×9.8 ms-26.67×10−5 kg ms-2
 
すると
  
M=0.68×10−2 g6.8×10−3 g6.8 mg
 
すなわち、6.8ミリグラムの重さに相当する。 
               
 ところで、kgの鉛玉は互いの距離を何メートルまで寄せられるだろうか?テキスト ボックス:    玉の半径がrだとすれば、もちろんそれは2rであろう。そのrの値を求めてみよう。

 
半径がrの球体積V
   
V=4/3)πr であるから、鉛の密度をρとすれば、玉の質量は
   M=(4/3) ρπr

 
質量1 kg鉛玉の半径は、
M=1
kgとおいて
r=(3/4) ρ-1π-1 kg
 
鉛の密度が11.34/3なら、
 
 ρg/3 =ρ×10-3 kg(10-2m)-3=ρ×103 kgm-3 となって半径の3乗は、
 
  r=(3/4×11.34)×(103 kgm-3)-1π-1 kg
    =(0.066)×10-3
m3π-1
≒(0.021)×10-3 m3 
  
≒(0.276) 3×10-3
m3

 
これを解いてr0.276×10-1 m2.76 cm
このとき2つの玉たちのあいだで働く万有引力は
  F=(6.67×10−11m3s-2kg-1)×1kg/(0.0276×2 m)2

  
2189×10−11 ms-2kg2.19×10−8 ms-2kg
 重力
(W=×g ms-2)に換算してみよう。
   M
×9.8 ms-22.19×10−8 ms-2kg

から M=2.19×10−8 ms-2kg/9.8 ms-2
    
0.223×10−8 kg0.223×10−2 mg
    
2.23×10−3 mg  
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