C       不定期便  第90号 
 不定期便 90号 014年 3月3
  相対論を超えて 6

       宇宙誕生試論 2
発行
2014年3月3日
発行者
熊野宗治

物質誕生の種子と萌芽   013/12/20

 
 前号までに、質量とは磁性と同様、重力場の凝集されたもの、と理解してよいものではないかというところまできた。

     

性質空間の誕生

そこでさし当たって、質量とは重力場の凝集したものであると帰結される、としておいてみよう。わたしは“力”の作用する場のことを重力場と区別して“力場”と呼ぶのがよいと思う。質量のつくる重力場は力場の一種である。すると電荷のつくるのが電気力場、磁荷の作るのが磁気力場ということになる。

そこでもし諸君が賛成してくれるなら、親愛なる友人諸君、ぼくらは物質誕生の想像力を以下のように膨らませてみてはどうだろうか。

最初に宇宙は無であった。あるいは、すでに誕生していて無ではなかった――にしても同じであるが…、むしろ、そうでなければ一般性がない。仮にそうであっても、周りが無であるところから始めなければなるまい。形あるものはなにもなかった。そこへ、無である空間が生まれた。そこには重さのあるような抵抗物もないから形もなく、依然として物といえるものは
  

その空間は突如ほのかな変容を遂げて、ある性質が生じた。平たい板を叩けば凹む部分と、その凹みの代償に膨らんだ部分ができるように、相反する2つの性質が。それがどんなメカニズムで生じるのかは想像もつかないのだが…。

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  その性質の1つは、空間に対して縮もうとするもので、他方はこれに抗するものである。その他方とは、片方の縮もうとする性質のほうが広く拡がっていて大きいために、その内部に閉じ込められた性質であろう。これら、性質を持った空間のことを性質空間と名づけておきたい。縮もうとする空間の性質を今仮にGと呼ぶことにしておこう。Gは漂っているうちに、自分と同様に生じたもう1つのGから何かの作用を受けるという宿命を負う。

縮もうとする性質の両者はその性質のために寄り合う万有引力の法則を形成し一体化した。それが88号で考えたように、このとき幻子という微小空間に変わった。これをFと呼ぶことにしよう。性質がすこし濃くなる。

性質空間の集合と進化

 Fはいくつでも存在し得るはずだから、別のFと出会うたびにグループを成長させ性質を凝縮させていく。引力はごく弱いもので、ふわっとした球体になるんだろう。より凝縮した大きなものが小さいものをかき寄せる。しだいに凝縮してゆく幻子グループは脱出速度の問題から、それだけ運動速度の変化しにくい性質、“慣性”というものが顕著になり始める。
              

集合体は他の集合体と合併するたびに、ある決まった構造で寄り合うようになり、別な性質を生じつつより丈夫な結合体を形成していったのだろう。原始集合体は慣性を持った性質空間の凝集体、つまり、質量の性質を持つ。質量とは1つの性質に過ぎない。ある容積中のその強度のことを、定量的にその容積のもつ“質量”とする、と解釈するのが適当であろう。

   あとは現代物理学にいう“素粒子”へと進化を遂げる。

 そう考えてくると、素粒子は粒から成るのではなく、ある性質を持つ空間が凝縮していったもの、ということになる。その正体を見究めようと近づいていっても、粒のようなものはなく、“何もない空間”を通り抜けて反対側へ出てしまう。そういったものである。そこには力場だけではなく、数種の場が絡んでいることもある。中心付近に吸引力を持った非常に密度の高いものがあると期待していたのに、その中心には引力がないのだ。ないどころか、なにか他の接近を拒む懲りのようなものがある。それは第2の近距離力場で、万有引力とは対極的な性質だ。 


                オリオン大星雲

さて諸君はすでにご存知であろう、粒子には動きにくさと同時に互いに引き合う性質の広がりをもつものや、電荷を帯びたものや、その他の数種の素粒子などに進化する。動きにくさの量はいまや質量と呼ばれ、質量のつくる引力の場を重力場と呼ばれている。現在知られている素粒子は原子の原子核をつくる陽子や中性子に進化し、たとえば水素原子の原子核を造ったりしている。

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 こんな風に天地創造を哲学すれば、無の空間から物質の誕生までごく自然に、連続的につながった宇宙誕生を説明することができる。

光の役割

光ははるか宇宙を旅するあいだに、物質の種子を宇宙空間に振り撒いている。いや、刺激を与えていると言ったほうがいいかもしれない。光と、光の進む空間とは、互いに密接な関係を持っている。「光速の背景」という法則の理解なしにはこの先の物理学へ進むことはできまいとわたしは考えている。

光は幻子の元である場へ、きわめてわずかずつ自らのエネルギーを変換しながら振動数を減じてゆく。それは、遠く輝く恒星からの光が赤方偏移を起こす原因ともなっていて、減少した分の光のエネルギーをそれだけ宇宙の“場”――すなわち幻子Fantrino――という物質の元に再び変えてゆく。

宇宙には、均せばゼロに帰すような、相反する2様の性質を持ちあった場で満ちている。場の種類にもいくつかがありそうだ。それらは互いに作用し合って変容し、互いに負債を負い合って 存在している。
           

すこし振り返ってみたい。考え進めてきたところでは
 ――空間に生じた場としての性質の分離と、それらの凝縮である幻子の生成と、その生成を促すエネルギーすなわち光の役割と、そのために光波に生じる振動数の減少つまり赤方偏移と、光が走る背景すなわち重力場たちの運

   動ベクトルの和は動いている(第49号)という事実、それゆえに地表に据えられたマイケルソン干渉計が光の相対速度を検出しなかった事実、MGP実験において環状干渉計が地球自転分の相対速度を検出した事実(第50号)とが、ほとんど破綻なく連絡する。

 これらの下では、相対論で仮定しなければならなかったような根拠のない奇怪な前提は必要とされない。
               

 しからば、以上をもって親愛なる諸君、天地創造の全てを、さし当たっては破綻なく理解しえたと結論させていただけるだろうか。
 しかし、ただ1つ、いかにして空間に各種の性質の場――重力場、磁場、電場ほか――が生じたのかという、空間分化のメカニズムについては、わたしにとっていまだに最大の謎だ。それらの間の相互作用がいかなるメカニズムによって働くのかについても謎である。物理学はまだまだ先が深いようだ。

  
2010.10.17  

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