R 印刷用は       不定期便  第103号
   
 
不定期便 103号   014  915

     磁気の力不思議
発行
2014年9月15日
発行者
熊野宗治
 
     
 これらの技術に用いられた“磁場”や“磁石”についての、基本的なことを知っておきたい。

なぜ磁界の中で磁石が力をうけるのか                014/7/9




――
磁石の帆で船は進むか
 磁石が別の磁石や鉄片を吸いつけようとすることを諸兄も幼少の頃から体験してご存知だろう。
 その力がどのように生じているのかは、未だに謎である。謎は謎として解明されるのを待つだけだが、分かっている事実は1つの磁極がそれとは異種の磁極を引き付けることである。つまり、陽と陰の2種がある。異種同士が引き合い、同種同士は斥け合うという事実だ。なぜ磁石が力を受けるのか?という疑問とは、謎の解明は別として、次のことだ。
 磁石は常にN,S極の2極を、同時にでなければ持たず、片方だけが存在することは、人が知る限り絶対にない。その理由は磁場の成因にある、と小生は見ている。それはさておいて、磁石が2種からなるとすれば、磁界の中にある磁石も、必ず2種をペアで持つにもかかわらず、なぜ消しあうこともなく引力(斥力)が生じるかということだ。 片方が引かれるなら、必ず他方は退けられる。両方の力が等しいなら、磁石には力は生じないはずではないか?という疑問だ。
 なるほど磁針は片方が北極を向けば他方は反対の力を受けて反対向きになろうとして、その向きに回転する。

    この事実はたしかに異極は引き合い同極は反発することを認識させる。しかし諸君、磁針でも棒磁石でも発泡スチロールに貼り付けて水に浮かべてみたまえ、磁石でもって船は北へ進むだろうか? 
 地 磁

実際には回転はしても進むことはない。つまり、全体はどちらへも進み始めることはしないのだ。地磁気は巨大なものであるため、磁石船の周りでほとんど一様であって、船のN極もS極も、等しい力しか受けないからである。地磁気が一様であるということは地磁気の強さがその近辺でどこも等しい――勾配がない――ということを意味している。


――磁石が引かれる(押される)理由
 磁源Mがつくる磁場が磁極A,Bに及ぼす力が、磁源から磁極までの距離Rに伴って
  1/2 (距離の2乗に逆比例)
となるかは明言できない。なぜなら、磁源からの磁力線がきれいな放射状
――例えば質量のつくる重力場のような――であるならその距離を半径とする球面積に逆比例すると考えることは理に適うが、実際の磁力線は半割りリンゴの芯のように偏在している。それを近似的に放射線と見るとき、近似的にR2の逆比になると見て大きな間違いはないかもしれない。

   1
 
      不定期便  第101号
 力線は半割りリンゴの芯のように偏在している。それを近似的に放射線と見るとき、近似的にR2の逆比になると見て大きな間違いはないかもしれない。       図1

本図は曲面上にある棒SNの両端がコロになっていて、どちらがより強く滑り落ちようとするかを模式的に表わしてみたもの。ただし、N端には反発として作用するから、ベクトルの向きを反転してある。

傾斜は磁石に近いほど大きく描いてある

  図2

 そうした場合には磁源N極がA端に与える磁場の強さはおよそ
kM

(Mは磁源のN極磁荷)

(R−d2

B端では

kM

 

(R+d2

 この差が(磁源N極に関し)磁石ABに働く力であろう。これをfとすると

   あろう。これをfとすると
 
=kM 4Rd
(R2−d2

磁石mが磁源Mから離れるということは距離の比δ=d/Rが次第に小さくなると見てよいだろうから、d=δRとおいて fは

f=kM 4Rd
21−(d/R)2
=kM 4δR2
21−δ2
=kM 4δ
1−δ2

すると相当離れた位置では

f=kM 4δ

0

1−δ2

となって、Mから遠方にあるmにはMによる力学的作用はないと見てよいことになる。なお、最も接近してδ=1  (d=R)となったとき数式上はfは無限に大きいことになるが、このような近距離では磁場の放射状の広がりはないため、無限大の力になると考えるのは適当でない。
 では磁石は実際のところ、どれほどの力を持つものであろうか。

 磁力はどこまで強力か    014/7/9

 
――手作りの実験
 簡単な実験をご紹介するから、これによって

 2
      不定期便  第101号
ともに実感してみたい。
 ホームセンターに出かけてみると、最近では小さいながらも力の強いマグネットを手に入れることができる。写真はその1つの例だ。



 商品名は「ネオジマグネット丸皿穴付」となっていて透明なパッケージの中に発砲樹脂のクッション材とともに入れられている。
 吊されている商品同士は互いにきつくくっ付きあっていて、客が引き離そうとしたためか、マグネットが中でひどく動いた形跡がある。

 「ネオジマグネット」、直径15ミリ 厚み5ミリで、中央にビスで止められるように皿穴があけてある。磁力0.451T、吸着力4.7sと記されている。
 入手したマグネットで小生は、この磁石と磁石が向かい合ったとき、どれくらいの力で反発しあうのかを確かめてみたくなった。手で試みようとすると指先でくるりと返ってしまう。
 幸いこれはドーナツ型をしているから、その穴に竹串を通せば裏返ることもなく反発の様子を観察することができる。もうすこし精密に知るために写真のような実験装置をつくってみた。

マグネットが回転できないように木製丸棒の小口にビス止めしたものを2つこしらえ、両者を向かい合わせる。平行に向かい合わせるために、パイプの両側から挿し込むことにする。

    これでマグネット同士はすこしも裏返ることがない。
 パイプは外から観察できるように透明なものを用いる。丸棒とマグネットの外径は15ミリだ。これを通すのに格好な、内径17ミリのアクリパイプ(外径21ミリ)が見つかった。出来上がったのが右の写真。棒は18ミリ浮いている。

 

        丸棒長さ500ミリ  
 次に、荷重を載せるための皿(100円ショップで、2枚100円の植木皿)の中央に穴をあけ、丸棒を通してチェーンで吊るすことにする。これを棒の先端に置くための支点として手ごろな、アルミ製の円錐体を見つけた。それを逆さにして棒端に乗せ、
   3
    不定期便  第101号
上から茶漉しをかぶせ、その縁にチェーンをかける。茶漉しを用いる意味は、チェーンの懸け位置を円錐体の頂点よりも低くして安定させるためだ。
 円錐体を用いた理由は、マグネットへの加重を必ず鉛直にかけるため、つまり重心が必ず棒の中心を通るようにするためだ。これで棒とバイプとの摩擦を最小限に抑えられよう。

 

  ――さっそく載荷実験をしてみる
 棒とマグネットだけ(重量67)のとき、マグネットが浮いている距離は18ミリほどである(写真2の下)。すでに67gの重量をこの空間で支えている。空荷の秤の重量は174.5g。このとき浮き空間は12ミリほどになっている(写真4)








長くなるのでこの先は次回に…




      わたしのギャラリー
                    写真 輿水 

  窟居 ダイニング   筆者設計施工

  4