光速の背景 次ページ
第2章 疑うべき学説
である。そこでは時間と空間が結びついた時空という概念が導入され、時空間の曲がりがあるとされる。一般の人々は有無を言わさず、信仰させられている。
 宇宙ビッグバン誕生説(以後「ビッグバン説」と略称する)とは、ロシアの科学者ジョージ・ガモフ(George Gamow 1904~1968)が言い出した説で、宇宙がいまも膨張しているとすれば昔ほど収縮してゆくことになり、宇宙がいまの10のマイナス28乗も小さい状態までさかのぼり、そのころビッグバン(大爆発)をおこして誕生したとする理論である。それはどんな根拠からできたものであろうか。
 アメリカの天文学者ヴェスト・スライファー(Vesto Melvin Slipher 18751969)は1915年から42年にかけて、アリゾナのロウエル天文台で天体観測をしていた。その中で彼は暗くて非常に赤くなった星雲を見つけた。地球から5000万光年もの彼方にあるソンブレロ銀河だった。非常に赤くなってみえる「赤方偏移」が、彼が知っていたドプラー効果によるものだとすれば、この星雲は時速1100㎞もの速さで遠ざかっていることになる。その後、遠い星ほど赤い(波が伸びている)ことがわかった。
 1929年、アメリカの天文学者ハッブル  (EdwinHubble 18891953)はすべての星が地球から遠ざかりつつあり、遠い星ほど速い(赤い)ということから、宇宙は膨張しているとする「ハッブル膨張則」を発表する。
   (後退速度V)=H ×(距離R)
という式で示された。Hはハッブル定数である。この膨張をさかのぼれば、ガモフのビッグバンへ戻りつくというわけであろう。それによれば、最初に1センチほどの玉(宇宙の卵)があった。それは高温高密度であり、熱核融合反応が起こる。最初に中性子だけがあって、中性子が崩壊して陽子と電子ができ、それら中性子、陽子、電子が結びついて重水素ができる。さらに爆発後3分、絶対温度10億Kに達するころ核融合によりヘリウム原子核ができる。これを説明するαβγ理論によればヘリウムまでで、それより重い元素はできないことになる。理論によれば原子核反応が起こって熱平衡に達すると、結合エネルギーの大きい鉄のような元素ができるはずだが実際の宇宙の元素組成では水素が主になっている。このことを説明するには温度が急激に下がるあいだに核反応が起これば熱平衡に達する前に核反応の進まない軽原素が多くできるからであるとした。高温状態は短時間であったことが必要で、ビッグバンは数分間の出来事であるというシナリオができた。
 熱い宇宙は膨張して冷え、バラバラであった陽子と電子は4000Kあたりで結びついて水素原子となり、3000Kになるとヘリウム原子核は電子を捉えヘリウム原子となる。爆発後40万年ころ、このようにして宇宙は晴れ上がる。これが1946年――広島・長崎に原爆が用いられた1年後――の宇宙ビッグバン誕生説の大要である。これに面白そうな尾ひれがつき、尾ひれを元に近代素粒子理論が築きあげられてゆく勢いにある。


 1、誤謬を嗅ぎつける……つじつまが合わない「二大疑惑

 宇宙膨張説は本当?

 驚くことに、宇宙膨張理論は少なからぬ学者によって本気で信じられている。真面目に考えればそのようなことはあり得ないはずだ。そこで私は「光に関連して言われる宇宙膨張説には矛盾がある」と、
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