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第2章 疑うべき学説
れわれは知っています。『幻子論』の中ではドプラー効果の説明図で示してあり、あれでよくわかるでしょう。
 われわれにとって、われわれから同距離にじっとしている対象物から聞こえる音はドプラー効果を生じません。仮に等質膨張が正しいとして、対象物までの距離を測るメジャーという物体も同じ率で膨張している(我々に対しじっとしている)とすれば、対象物はメジャーに対してすこしも運動してはいません。そしてたしかに、そういう対象からはドプラー効果は生じないのを現実のこととしてわれわれは知っています。メジャーに対して“相対的”に運動するときにだけ生じるのがドプラー効果でした。つまり等質膨張というものはそれ自身“互いの間の運動”で・は・な・く・、しかるに、ドプラー効果は生じません。この事実は誰もが知っているはずです。このことは、ビッグバン説の根拠とされた赤方偏移が「等質膨張によるドプラー効果によって起こる」とすることは、とんだ思い違いであることを明確に示しています。等質膨張が“運動”とは異質なものであることをさらに確認しましょう。
 その証拠の一つは、具体的には何に対して運動することによって互いの距離を広げているか?という質問に答えられないことで示されましょう。じっとしているのは電柱なのか? それとも電柱からχにあった一点の方か? これを誰も決めることができないわけです。その証拠にまた、ビッグバンの中心はどこか?に、誰も答えることができません。つまり、あの膨張というのは人の頭の中に作った“概念”であって、“具体”ではないからです。このように、具体をなおざりにして、“概念”だけで押し広げていくものを、“物理”を考えるべきはずの「物理学」であると、どうして言えるでしょうか。》



 誤った前提に立つ人は多弁になる――相対論へのさまざまな説明


ホーキングの光速

 『ホーキング宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』(ホーキング著)という本の巻末で、ホーキングはなぜかニュートンを誹謗している。
 彼がどういう人柄であったにしろ、、ニュートンの物理学が道理にかなったすばらしいものであることを、わたしは驚嘆をもって受け入れる。同じように、道理を追ってみれば、アインシュタインによる相対論は非物理な想像論としてしか思えなくて仕方がない。
 すくなくともニュートンとホーキングは考える機械ではなく、精神というものをもった「人」であって、彼らの知的作業はまた、この精神の作用によって達成されたものである。敵対する論敵に対し、好ましい心証をもたなかったからといって何が言えよう。そもそもわたし自身からして人間であり、同じ心証をもたない自信はない。
 このように自然科学という学問においても、そのより正しい学問が完成するかは大いに人間性に関わっていることを認めないわけにゆかない。真に正しい科学が進められるかは、実際、その大いなる困難によって阻まれることがある。
 アインシュタイン時代当時の常識から言えば、光に向かって運動する人には光はそれだけ速く見えるはずであった。ところが、それはそう簡単なことではなかった。このことをいろんな科学者が説明していて、『ホーキング宇宙を語る』の中でホーキングもまたふれている。
 「とくに地球は太陽のまわりを回るのにエーテルの中を運動するので、
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