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第2章 疑うべき学説

(常識論) 

 図2のように、光が光源を出てアーム長Lの先にあるミラーに到達するまでにt秒要したとすると、Lctであろう。
 系がυの速度で運動しているときは、同じ向きの光がミラーに達するまでに走る距離はアーム長よりもυt1だけ余計に必要で、 ミラーからの戻りは逆にυt2だけ短い。
 すると、往きの光が進んだ距離は
  c t1   L+υt1  ………①
であって、アーム長Lは光の相対速度c1t1秒間のL= c1t1だから、①式は
c t1   c1t1+υt1であって
  c1  c υ  …………②
となる。帰りの相対速度は同様にして
  c 2   c υ …………③
となる。
       表1

一方、相対論は光速不変(相対速度はない)に基づいて説明しなければならない。そこで光速は変わらないが、動いている空間――これを動いている座標といい、相対論者によっては動いている物体とも言う――ではその物体ごとに時間の進み方がちがう、とする。定義がもうひとつ増えて、「物体は(運動速度の違いごとに)それぞれちがう時計を持っている」とする。
すると常識論の
「長さ=光の相対速度c´×時間t」
とは違って、相対論では
「長さ=c×(物体のもつ時間t´)」
だとする。

 相対論の正式の、というか、ややこしい説明はミンコフスキーのダイヤグラムという説明から起こされる。
 図は長さABである物指の中心Cが光って、時間がすこし経つごとに光が進んでいる様子をキネマのひとコマずつの絵として、重ねて描いてある。Cで
t=0、その上にt=t1 、さらにt=t2…となっている。

 χ軸は物指という「長さ」になっているが、縦軸は時間軸と称している。巧みに、時間は光速値cという定数の倍数で表わし、ctとしている。だから時間ごとにχ軸方向に進む矢先はcから引いた45度のライン(包絡線)上にある。これは図4のように表現され、いつの間にか45度のラインが光の軌跡であるかのように思われてくる。

 
     図3         図4         図5

 物指がχ軸方向、つまりχ軸と平行に
速度υで動くとき、図3での上方は右へ傾いで行き、両端A、Bへ進む光は図5となって、時間軸がct´と傾けられている。物指の中心Cから出た光は時刻tで左端に到達しているが、右端にはまだ中間にあって、B端へ達するのはtという時刻で、B´の位置であるという図になっている。説明者はCから出た光が両端と交わるのがA´、B´、物指の中天と交わるのがC´であると説明する。
 しかし、K´時計(運動しているK´系の時計)では(両端に達するのは)同じ時刻である。 同じ光速cで同時に到着するからで
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