光速の背景  50
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第2章 疑うべき学説
 しかしこれは冷静に見て非科学というほかない。事実、M・G・P実験が光の相対速度を検出したことで否定される。
――気まぐれ
 すなわち彼は、光速だけは座標ごとに違うことはない、とした。それにしては、理論式を進める過程で、場合によっては光の相対速度を、母さんの小言みたいに都合よく使い分けていて、おかげで論理のいたるところ、もつれている。
――巧みなごまかし
 “同調”を利用して座標変換を進める際に、“時刻”を示すtと〝時間”を示すtに同じ文字を用いているが、読者の目をごまかして、時刻を示すtの式に、時間を表わす別なtを放り込む。これは乱暴であろう。
――時間の混同
 そればかりではない。彼の数式たちの中には“同調”を施すためのtと、座標間運動を記述するtとがある。同じ書体のtであるが、それぞれ性格の異なるtであるのに、推論の混乱に乗じてそれらを混同することで、意味のない式をこしらえている。これに都合よく面白い説明を加え、幻惑された人々を人騒がせな結論へ導く。
――忘れたころの変貌
 彼が説明当初用いたχ´χυt という式は、結論間際になると、彼は“明らかに”という修飾語付で χυt なる関係だとする(原文を読まれないかたには解りにくいが、そうすることには矛盾がある)。前者のことを忘れてしまっている読者は、ここで“明らかに”と言われれば、「χυt か…ふんふん」と思うだろう。余計な詮索はするなと言わんばかりであるが、これによって思い通りの結論へ彼は導いていく。
――幻覚と実際の混同
 相対論には“そう見える”ことを、数行先では“そうなる”と言い切ることをする。太陽が東から昇り西に沈むように見えることを、太陽は地球を廻る、と断定するようなものだ。錯覚と現実を混同するのが相対論の顕著な特徴である。

このように欺瞞で固められた相対論が、事実、誤っていることを具体的に示す実証例がある。


 相対論を否定する実証実験は存在した

 相対論が根拠とする「光の速さは運動中の誰にとっても不変」が否定されるべき、確かな実験のあったことをお見せしよう。先ほど触れたように、M・G・P実験(マイケルソン‐ゲイル-ピアソンの実験)という、相対論とは明らかに対立する実証実験が実際に行われたのである。これは重要なことであるからご注意をねがいたい。しかし、すでにその詳細は前著に述べたので、ここではそのおよそを示すことにしたい。
 この実験は1919年の日食観測で、エディントンが恒星からの光を観測した結果、一般相対論の予言どおり重力場で空間が曲げられることを証明されたということに触発され、エーテルを通る地球の自転を検出しようとマイケルソンたちがオドンネルらの技術協力を得て行ったものである。それは1925年、米国のイリノイ草原で行われた。実験装置は直径12インチの管を縦横300×600メートルの長方形の(リング)として地表に水平に組んだもので、コーナー一箇所にマイケルソン干渉計がつく。管内は排気されている。

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