光速の背景  52 次ページ

第2章 疑うべき学説
ソンは「地球が回転していることをただ示したに過ぎない」と、そっけないコメントだけ残している。しかしこの値は、われわれが示した「光の仮説」を美しく証明することになる。
 マイケルソンの不機嫌には、「相対論を証明したつもりはない」という心境が隠れているように、わたしには思われる。報道陣のことごとくは〝相対論の実証〟を期待していたであろう。

マイケルソン=ゲイル=ピアソン実験風景

 写真左からチャールズ・スタイン、トマス・オドンネル 、フレッド・ピアソン、ヘンリー・ゲイル、JH・バーディと従業員            (HISTORY OF PHYSICSより)
 ところで、光は相対速度をもつとするわれわれの主張にとって、波長の0.25というずれは見当ちがいになっていないかを確かめておくべきだろう。地球の自転は一日あたり2πであるから、1日の秒数で除してみると地球自転の角速度は、7.27×10-5ラジアン/秒となる。実験の行われた位置が仮に緯度45度くらいだとすると、このリングの角速度ωは5.14×10-5 ラジアン/秒と得られる。リングは長方形であるが、平均半径Rのリングであるとして計算すれば平均周速度はおよそRωである。
 周長が2(300+600)=2πRメートルであることから、平均半径Rは、およそR=0.286㎞となる。リングの周長1.8㎞を光速cが1周する時間tは1.8/c0.6×10-5 secと得られ、互いに逆向きの光の光路差Rωtは176×10-9mと得られる。これは光の標準波長とされている605.8nmに対して0.29(前著0.288は誤っている)、つまりわれわれはおよそ0.29の波長のずれが観測されると予言する。
 それが近似計算であることからすれば、この値は実験結果の0.25に比較して、ほぼ一致したと見てよいだろう。すなわち、この実験結果は光の相対速度を実際に観測し、相対論の大前提を明確に否定したものだといえよう。マイケルソンの直角二方方式ではなぜ相対速度を観測し得なかったのかは、第4章で考慮しよう。 

※註 この7.27を前著ではなぜか7.22と誤っている。従って、次の5.14176も、5.02175となっていたのは誤りである。


シンクロトロンも証言
 『幻子論』の草稿に没頭していた当時、わたしの頭は相対論の問題のため宇宙的空想に浸っていた。そんな、夢だか(うつつ)だかの中で私は質量mなるものが宇宙空間を走行するさまを想った。
 mがジェットを使って加速し、光速近くまでスピードを上げたとすれば、mに対するまず全ての恒星はmに対して光速運動をしていることになる。このとき、特殊相対性理論は、mに対して光速で運動するものはmから見て質量が無限大になると主張し、恒星たち相互間の距離は、やはり特殊相対性理論によれば縮み、互いに密着してしまうことになる。
 茨城県のつくば学園都市に、大規模な陽子シンクロトロンをもつ高エネル
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