光速の背景  56 次ページ

第2章 疑うべき学説
 だが、光速以上で離れつつあっても、見えないことにはならないことは拙著『幻子論』でも確認した。見えない”ことがあるとすれば、光速以上の速さでわれわれが逃げる場合であるが、四方からわれわれを囲む星たちのすべてから逃げることはできない。
 本当にこういう荒唐無稽に思われる説が学者のいう定説だろうか。わたしには正気の沙汰とは思えない。こんなことが通るくらいなら、火事が凍って、石が豆腐になったって、不思議でなくなる。

ハッブル則の矛盾
 ハッブル則は、初めに書いたように
 (後退速度V)=H ×(距離R)    ハッブル定数……………①
というものである。これは次のような矛盾をはらんでいる。
 ある星が赤方偏移によって後退速さがv光年/年と分ったとしよう。宇宙が仮に等方膨張だとして、宇宙にどこからかエネルギーが湧いてこない限りは、等速後退しかありえない。そのときの赤方偏移をεとしておこう。ハッブル則によれば赤方偏移εによって星までの距離Xが分る。
 さて、その星がυの速さを持っていたとすればN年後には今からNυ=χ光年だけ遠ざかっていることになる。しかし、加速度膨張でなければ、後退速さは依然υでなければならない。ハッブル定数Hが定数なら、N年後の観測者は、そんな事情を知らなければ、速さυの星の赤方偏移はハッブル則から逆算して相変わらずεである。
 速さυ、赤方偏移εという同じ値を持つはずの星の観測では、N年前とは距離だけがX+χと違ってしまう。ハッブル則から得られる距離Xは間違って得られることになる。この矛盾がないためには、赤方偏移は星が遠ざかるために起こっていることではないと結論しなければならない。つまり、宇宙膨張理論には重大な誤りがあることになる。

発覚した矛盾
 さらに矛盾した実例を挙げよう。2005年218日の朝日新聞記事は、事実上宇宙ビッグバン誕生説を決定的に打ち砕いた。それは、《127億光年かなたの生れて間もない銀河団がハワイチームによって観測された。
 すばる望遠鏡を用いてハワイチームが、0203にかけて観測、くじら座方角127億光年かなたに、(質量100分の1からすれば)生れて間もない銀河団が見つかった。「赤く光る6つの銀河が直径300万光年の狭い範囲に集まる」という。
 国立天文台や東京大などのチームが217日発表。宇宙年齢137億歳とするのが有力とされ、そうすると、「宇宙誕生から約10億年後の(若い)姿を捉えていることになる」》
という記事になっていた。これはどうも宇宙のビッグバン起源説に基づくらしく、宇宙年齢137億歳とすれば、127億光年の遠くにあるものは、宇宙誕生約10億年にして誕生した、今では年配者というわけらしい。
  すると、妙なことになる。この考え方からして、いまだに天動説と変りがなく、宇宙の中心は地球であるかのようだ。宇宙年齢が137億歳だとすると、光速で膨張したとしても、宇宙の半径は精々137億光年である。発見された星が宇宙誕生10億年後の古い星だとして、誕生間もないとすると、127億年前に誕生し、そのとき、地球から127億光年も遠い彼方で生れたことになる。つまり、宇宙が誕生したころ、すでに現在の宇宙の端ふきんで、この銀河団は生れたことになる(図参照)。
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