光速の背景  102
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第4章 未来への道
ばならないだろう。そこで、わたしたちの当面の仮説が空論でないことを正当に主張するために、実行可能な実証方法の存在することを示そう。
 いま提唱される「光速の重力場法則」の仮説で実証されるべき点は、光の速さは重力場(ヽヽヽ)()対してもつものであるか、ということである。わたしが実行可能だと見る実験によって次のことが明らかになれば、この仮説はその時点において自然法則であると認められてよいだろう。それはひとえに、重力場に対する観測装置の運動速度に応じて()()相対(ヽヽ)速度(ヽヽ)が観測されるか否か?ということにある。その確実な方法のひとつは再びマイケルソン装置による宇宙空間(ヽヽヽヽ)()の確認である。現今の宇宙技術によれば、十分可能だ。その際、装置は地球に対し一定の運動速度をもつ状態においてそれが観測されることを必要とする。
 あるいは、もしも地上で行なう方法を問われるのであれば、次に示す二つの方法が提案できよう。


地上での実証

 地球の重力場は地球の自転とともに自転しているだろうか? 重力場に関する新しい法則に基づいて重力場を合成する計算方法が正しいとすれば、地表付近では重力場も地球自転とともに回転しているだろう。地球を無数の小さい塊の集まりと考えると、自転につれて動いている装置すなわち測点に対し、測点近辺の地面のつくる重力場たちはその測点と同じ速さであろうとしており、したがって相対的に静止していようとすると思われる。しかし、それは全体のうちのわずかな範囲の部分で、それ以遠の、測点から等距離にある各部分では、回転体を(回転軸を通る平面で)半分に割って考えてみると、割った両方の断面には回転軸を境に互いに方向が真逆なだけで速さの等しい部分が必ずペアで存在する。このことはある測点において地球各部の自転速度からくる重力場運動を法則に基づいて合成した結果はゼロに帰すことを意味している。光の座標は自転していない。また、地球の裏側に当たる地表部分を考えてみれば、地球の直径ほども計測器から遠いところにある。するとそれらの影響力は直径の二乗に逆比例するように弱まっている。かわりに、他の天体たちの影響力が、無視できぬほど参画してくるだろう。

もしも宇宙に地球独りぼっちならば、地球全体の場の速度集合はほぼ装置の運動速度に等しいと見られる。しかし実際には太陽、月ほかからの影響をうけ、重力場の移動速さは装置の速さの百パーセントには満たないであろう。言えるのは装置付近の重力場は地球の自転とともに動いているから、装置に対して幾分かの影響を与えるにちがいない。また、上の考えを辿ればわかるように、地球から遠く離れた宇宙空間に対しては、地球自転による重力場の回転効果は消失してゆく。回転の裏面の運動方向と表面の運動方向とは、遠距離では互いに相殺されるからである。
 それでは、いかなる観測方法によって、光の相対速度を検出し得るだろうか。

〈 M‐G‐P実験による実証 〉
  そのひとつは、M‐G‐P(マイケルソン=ゲイル=ピアソン)方式の実験装置による実験である。すでに第二章で述べたように、M‐G‐P実験は、全体が環状に組まれた管のなかを、光を互いに逆行する二つの光に分けて

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