光速の背景  91
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第4章 未来への道
さは、それらの運動速度の単純和というわけにはゆくまい。それは船を浮かべる媒質と媒質との混合である。光を乗せる媒介者としての静止座標の決まり方は、川の合流をイメージすればおよそ間違いないだろう。
 主流である大河へ支流が流れ込むとき、支流の流速が主流の2倍であっても、合流後の速さが合流前の主流速度の3倍になるとは限らない。水に対して速さで走る船が流速υの川を下るときの、船の岸に対する速さはたしかに+υである。しかし船を浮かべる水のほうは、流速の主流に流速υの支流が合流するとき、合流後には流速+υになるかといえば、そうはゆかない。
 また、支流が合流した直後の流れは支流の元の流れに近い速さを持ち、主流へ深く混じるほどに、その速さに馴染んでゆくだろう。したがって流れ込む支流の速さが主流より速ければ、合流後、つまり河口付近で元の流れよりは遅いが主流よりは速く、河口から沖へゆくほど主流に近い速さに馴染むだろう。だが速かったほうの支流の流速を超えることはない。同様に、支流のほうが遅い場合にはしだいに主流と同じくらいまで速められるだろう。しかし主流の元の速さを超えることはあるまい。
 光の静止座標の流れ方も、同様に考えてよいだろう。この場合、主流とは勢いの大きいほうをいう。光の座標でいえば、その勢いは重力場が与えている影響の大きさがそれに当るだろう。重力場というものは質量に付随する。質量あるところ、重力場あり、だ。大河に相当する重力場とは、例えば太陽のような大きな質量を重力源とする場であるか、その重力源に近い空間であるために強い影響を受ける場合、それは、大河に相当する影響力を持った重力場であると言えよう。言い方を変えれば、その重力源から離れるほど、その影響は弱まるはずだ。
 もっと正確に言えば、ある空間において、周辺の物体によって起こっている重力場の流れの勢いはその物体の運動速度およびその物体の質量に比例し、物体までの距離の2乗に逆比例する、としてよいだろう。その物体までの距離に大きく左右される。
 地球の地表での重力場はそのほとんどが地球の重力場で占められ、太陽重力の影響は、太陽が重力源としての巨大な質量を持つにもかかわらず、それがはるか遠方からのものであるゆえに、ほとんど及んでいない。地球からじゅうぶん離れた宇宙を考えれば、光の静止座標は、太陽と太陽惑星たちの各重力場速度のベクトル和によって与えられており、惑星や太陽に近い場所の光の静止座標はそれぞれの影響力に応じてその惑星や太陽にとどまろうとする性質を持つものといえよう。ここですこし数式的な考慮をしてみよう。


 静止座標はどのように決まるか

流速の合成
 図のような合流河川の流速がどのように決まるかを考えてみよう。図は大きな川に支流が合流する直前の断面を描いてある。合流前の各川断面積Aおよびaの和が合流後の川断面積Sになると仮定すると、合流前の各流量は各川断面積に各々の流速を乗じたものとなるだろう。合流後のそれらの合計をQとしておく。 これは合流後の川の流速Vと、川断面積Sとの積となるはずだ。つまり合流後の流速は流量Qを断面積Sで除した値として得られる。
すなわち、合流前の流量Aυと流量aυ
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