光速の背景   94 次ページ

第4章 未来への道
第3節 それはなにを意味するか 

自然は正しく見ようとする者にのみ、正しい姿を見せてくれる。提唱すべき二つの新しい発見について、すでに明らかにした。一つは星の赤方偏移を説明する“光の里程赤方偏移”であって、もうひとつは、それまで不明であった、光速は何に対する速さか、を解き明かす“光の背景”の発見だった。だが、われわれはそれが何を意味するかをも、明かしてゆこう。思うに、「特別な石ですぞ!」と、原石を見せるだけでは、世間は注目してくれそうにない。光り輝くダイヤモンドに磨いてお見せしなければ!  


 1. 何がわかるか

光の背景はどうなっているか

この考えに立てば、これまで矛盾したり謎であったいろいろのことが、快晴の空のようにはっきりと説明することができる。光は物質(ぶっしつ)()、ことのほか強く影響される重力場に対して光速cをもつ。これが紛れもないぼくらの「光の重力場法則」である。現在最も新しい、光に関する自然法則と言ってよいだろう。それが何のことだか解らない方には、これがどんなに重要な問題を含んでいるかも理解できないにちがいない。そこでこれから、これがどんな意味をもち、何が変わるかについても考えようと思う。
 その重力場は地球による重力場のみならず、――微粒子や原子たちが持ったと同じように――月の重力ひいては太陽と惑星たちの重力場もまた、光の航路として提供している。これらの重力場たちがどのように合成されるかを考慮すると、場の原因者たち(太陽と惑星たち)のそれぞれの運動速度を、光がいま進行中の位置に対しておよぼす場の強さの按分率にしたがうことが感じとれよう。その計算式はさきほど示した。その図解は巻末の論文中を参照されたい。
 宇宙空間やわれわれの日常空間という巨視的な空間での光の場は重力場であるが、電磁気学が適用した電磁波は、これを発生させる実験装置の、ミクロの範囲では磁場と電場が伝達空間ということになる。むろん装置(ヽヽ)に対して光速cをもつだろう。かれらの実験装置で常に決まった光速cを示したのは当然なのだ。この装置から飛び出してきた電磁波や光は、もうわれわれの空間(地球の重力場)に対してcをもつ速さになっている。さらに地球の重力圏のそとまで出た光は太陽場たちがつくる宇宙の重力場に対し光速cをもち、さらに天の川に対して光速cをもち、大宇宙空間の、全宇宙の合成としての重力場に対して光速cで走ることになる。しかしおなじ空間のどの光も同条件の運動場を走り、平行光線となり得る。重力場こそが光の背景である。サイモン・ローマンが言ったように、見つけたものが見えない人に、捜しているものがみつかるはずはない。しかし、あと一息でマイケルソンはそれをみつけただろう。
 光がこの広大な、その速さがカタツムリの速さにしかみえない空間を旅するあいだに、きわめてわずかずつ振動数を落とし、そのため波長が伸びていく赤方偏移をおこしたとしても、まったく不思議はない。赤方偏移の原因が、辻褄の合わない宇宙の等質膨張説と、それによって生じるはずもないドプラー効果によるとするより、よほど腑に落ちるものではないだろうか。これがぼくらのもうひとつの提唱、「重力場変調・赤方偏移則(里程

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