光速の背景  99
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第4章 未来への道
れを受け入れよう。
 同じように、アインシュタインの相対論が誤謬であることを主張した私が、実はその主張の過程で、相対論の腑に落ちない一件に真剣に挑んだおかげで、光の座標を発見しえたのである。相対論も、そのための大きな一歩を進めたものであると評価されてよいだろう。もちろん、なんと言っても、エーテルを捉えそこなったと言われるマイケルソンの功績を称えないわけにゆかない。この話をニュートン卿がお知りになったら、この上ない栄誉あるお言葉を賜わるだろうに。


どう役立つか

 新しく発見された法則は今後どのように生かされるだろうか? その一つを、やはりK氏あて、書簡にしたためたものがある。当時の考えと今も変わっていないから、そのまま転記することにしよう。
 Kさま、『アインシュタインの嘘とマイケルソンの謎』で得た結果は、宇宙空間での光の座標はほとんど太陽であろうことを知りました。
 「光の重力場法則」が正しいとすれば、太陽系内を航行中の宇宙船自体の質量がつくる重力場はきわめて小さいものであるから、船体から数メートルも離れた位置ではほぼ太陽(太陽系の質量の99%以上を太陽が占める)の位置を光の座標としてよいことになります。つまり、太陽が光の静止座標です。太陽系外では銀河系の重心位置を光座標の静止系とみてよいでしょう。
 以上のことから、航海士のとらえる光―航行中のデータ―をどう捉えるかを考えますと、宇宙船の計器が宇宙船体の宇宙空間における位置を計算するために、その灯台島となる各天体あるいは地球に対して発射し反射を捉える電波を用いようとする場合、「その電波速度は太陽に対する速度として入力すれば足りる」ことを知ったわけです。
 ところで、地球が太陽に対して公転速度毎秒30㎞という速度をもっていたとすれば、航行に用いる宇宙船は太陽に対し30~100㎞/秒ほどのスピードで運行することになるでしょうか。そうしますとこの速さは光速の0・03%ほどに相当します。これは観測値の有効数字5桁目に影響する程度です。しかしこれは宇宙船に対する光の相対速度です。惑星と地球との中間での太陽の座標(光の座標)に対しおよそ地球などの惑星速度は30㎞/秒ていどです。地球からの、あるいは地球への通信電波速度に対し、地球は大きくて毎秒30㎞の相対速度をもつでしょう。これは静止に対し公転方向の片道あたり0・01%の誤差をもつことになります。GPSに用いられる精度が0・01%よりも良い精度を要求しない限り、GPS装置の設計プログラムで通信電波速度を光速cと設定しても、ほとんど差し支えないことになります。もうすこし考慮してみますと、対象とする通信相手までの電波が往復なら相対速度はほとんど相殺され、観測者の運動速度如何にもまったく心配要らないことになります。もっとも、『幻子論』に記載の通り、時間はわずか相異しますが。
 これらのことから、惑星探査船が観測の精度を必要とし始めるのは目標天体に近づいたころからですが、目標天体に対する位置制御はその目標天体―たとえば火星―を光の座標として計算すれば足りることを、「光の重力場法則」は示しています。 宇宙船が目標に接近するにつれ、目標との距離はおのずと次第により正確な値として求められてくることになります。コンピュータによる制御が目標天体との距離によって自動的にコントロールされるようプログラムしておけば、十分正確に自動操縦されることを意味します。実際に行わ
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