ビッグバンの疑義 熊野宗治
―迷える物理学―    不定期便第69号 から


   もう一つの証拠       ――012.2.9


 氏への手紙 1

 《しかしK様、私たちの『幻子論』では、光波を伝える“エーテル”が独立に存在するのではなく、物質が物質の存在と同時につくっている「場」を、場の性質の相互作用という“振動”として光は走る、と唱えるわけです。

 このことは、地球がどんな高速度をもつ可能性があるにもかかわらず、いかなる方向にも、とくべつ色づいて見える(波長が変化する)こともない平穏さを持っていることを矛盾なく説明することが可能なわけです。

 ビッグバン説では、空間は等質膨張(あらゆる空間が同じ率で膨張)している、というものですが、その考えは現代の青年が頭でこしらえる“青少年向け非科学フィクション”とまったく同程度の“科学性”しかもっていないことを、次のようなことからも言えそうです。

  私、暇になると色々頭に浮かんできて困るのですが、いま、地上に高さhの電柱が立っていて、電柱の頂上から上空χにあるPなる地点を想定します。それを空間の一点とします。この空間点のχはビッグバン理論によりますと、他のいたるところと同様にkなる率で膨張しているわけです。つまり次のある瞬間にはχより kχだけ高いところにあるわけです。ところが空間は全てがつながっていて、当然ながら、その電柱が立っている足元の地面からPまでの距離H(=h+χ)もまた、同じ率の等質膨張でなければなりません。地面からPまでの空間も、次のその瞬間には(h+χ)にkを乗じただけの空間の膨張がなければならないから、その点は電柱からの膨張量とはkhばかりズレて存在することになるのです。



つまり、空間の等質膨張だけでは矛盾のない膨張は不可能で、電柱自体も膨張するとしなければ理屈に合いません。電柱という物体をつくる分子・原子のサイズも、またそれらの相互間距離も、膨張していなければならず、何もかも、つまり“膨張”を測定する定規そのものも膨張していて、膨張を確認することができないわけです。するとドプラー効果も起こりえないはずです。ドプラー効果という現象は、物指(ものさし)や時間といった常に不変な定規を基に成り立っているものです。光の振動数だけが不変で、物指も含めてあらゆるものが、まるで設計図面のように縮尺どおりに縮小あるいは拡大されている、という考えは、漫画の世界でもなければ、ナンセンスな空想論でありましょう。           2008311日》

324日》

『幻子論』 P.181から