ビッグバンの疑義 熊野宗治
―迷える物理学―    不定期便第69号 から


   もう一つの証拠       ――12.2.9

氏への手紙 2

《K様、先に311日付、さし上げたお手紙で、「ビッグバン説の基となる“等質膨張”とは、物体である定規もまた膨張していて、膨張を確認することができない。するとドプラー効果も起こりえないはず」と断じました。今日はそれをもっと明確にしておきましょう。

等質膨張とは、空間も定規も、何もかもが膨張していることを言い、そのことは電柱の話で確認しました。そうしますと、この膨張という物質間距離の変化(ヽヽ)は相互間の相対的運動(ヽヽ)ではないことを示しています。相対運動のない物同士が伝えあう“波”はドプラー効果を生じないことをわれわれは知っています。『幻子論』の中ではドプラー効果の説明図で示してあり、あれでよくわかるでしょう。

われわれにとって、われわれから同距離にじっとしている対象物から聞こえる音はドプラー効果を生じません。仮に等質膨張が正しいとして、対象物までの距離を測るメジャーという物体も同じ率で膨張している(我々に対しじっとしている)とすれば、対象物はメジャーに対してすこしも運動してはいません。そしてたしかに、そういう対象からはドプラー効果は生じないことを現実のこととしてわれわれは知っています。メジャーに対して“相対的”に運動するときにだけ生じるのがドプラー効果でした。つまり等質膨張というものはそれ自身“互いの間の運動”()()なく(ヽヽ)、しかるに、ドプラー効果は生じません。この事実は誰もが知っているはずです。このことは、赤方偏移が「等質膨張によるドプラー効果によって起こる」とすることは、とんだ思い違いであることを明確に示しています。等質膨張が“運動”とは異質なものであることをさらに確認しましょう。

その証拠の一つは、具体的には何に対して運動することによって互いの距離を広げているか?という質問に答えられないことで示されましょう。じっとしているのは電柱なのか? それとも電柱からχにあった一点の方か? これを誰も決めることができないわけです。その証拠にまた、ビッグバンの中心はどこか?に、誰も答えることができません。つまり、あの膨張というのは人の頭の中に作った“概念”であって、“具体”ではないからです。

324日》

『幻子論』 P.181から