相対論疑義
2008
4.6
  ホーキングのE=mcについて

一般に理解されているE=mcは、その真否はともかくとして、mなる質量がエネルギーに変換すればEなるエネルギーとなり、それはmcなる量となるというものであろう。そうすると、次のような、『ホーキング宇宙を語る』でホーキングが説明することに接した人は一種おどろきをもって読まれるにちがいない。
 E=mcに要約される質量とエネルギーの等価性」と説明する。エネルギーと質量の等価性ゆえに、物体が運動することによって得るエネルギーは質量を増すことになる、とする。それゆえ、しだいに加速されにくくなって、光速近くで質量が無限に大きくなるため光速を超えられないという解釈になる。
 すると彼の言う等価性とは、結果えられる運動エネルギーと同等に質量も増加するということになる。つまり運動によってエネルギーと質量とが増加し、合計二倍の増加ということになる。この考えには驚きを禁じえない。こんな不当なことはないであろうことを、論証しないではいられない。ぼくらは次のようにして論破することができよう。

 いま空間に質量2mである物体が静止しているとしよう。これが内部エネルギーによって2つに分裂したと仮定する。元々同じ質量mの2つが初期には共に静止していたとしてもよい。それらが自分たちの持つエネルギーだけで互いに真反対の向きに運動を始め、質量はそれぞれm,m、速度は互いに逆向きであるがυ1 ,υだったとしよう。
 そうすると運動量保存の法則からmυとマイナスmυの合計ははじめの静止運動量0に等しくなければならない。
  υ+(−mυ)=0 ……………@
である。これからmυ=mυということになる。そのときの全エネルギーは、ホーキングの言うとおりだとすると、質量m,mおよび各物体が得た運動エネルギー(1/2)mυおよび(1/2)mυ、これらの合計ということになる。式で表わすと、
  +m+(1/2)mυ+(1/2)mυ
     =2m     …………………A

ということになる。右辺は分裂前の物体の静止質量として入れた。初期の物体は運動エネルギーをもたないから2mだけである。こう置けば、したがってこの式はエネルギー保存の法則を満たしている。

 ところでE=mcが正しいとすれば、静止質量の、ホーキング称する等価エネルギー
   2m   ……………B
ということになる。そこでA式でυ1 ,υが静止点O(2つのmのあった中間点をイメージする)に対し、互いに逆向きで同じ速さであろうことからすれば@式から、
   υ=mυ=mυ
 これからm=mとなる。するとA式は
   2m+mυ=2m
となってこれは
  (2+υ)m=2m0  ……………C
 このとき相対論の言うところによれば

  m=m/β   (β=



) ………D

と、静止質量mからmへ増加している。これをC式に適用すると
  (2+υ)m/β=2m0 
ということになる。こうしてυが光速になったときmがどのような値になるだろうかと考えると、υと置いてβ=0となり、両端の等式から
   m=0
と得られてしまう! 最初にmなる質量を持つ物体が2つあったと前提したのに対し、それはなかった、と設問者を愚弄するものになる。ぼくらの知的プライドを保とうとするなら、ホーキングの乱暴を諌めなくてはならない。
 もちろん、ここでD式というアインシュタインの相対論(質量増加)を入れている。相対論は正しくないと主張する者が、相対論の式を用いて論証したものは正しいと言えるか、と反論するかもしれない。すこしもおかしいことはない、なぜなら、ホーキングのいまの説も相対論に基づいている。ホーキングやアインシュタインの世界で矛盾を反証すれば、ホーキングの弁が浮言
(ふげん)であったという論証としては有効だろう。

                        . 熊野宗治