論  評                     
        
アインシュタインをインターネットで検索する   2011年 10月 12日 
 
 2011年9月23日は、わたしにとって記念すべき日だ。この日
光より速いニュートリノ観測=相対性理論と矛盾
                     ――名古屋大など国際研究グループ

というニュースが流れた。読売新聞には24日の朝刊一面トップに載った。わたしの著書が正しいことを裏付けてくれる事実である。

 インターネット上で「アインシュタイン」というキーワードによって拙著『アインシュタインの嘘とマイケルソンの謎』がいかに容易にヒットするか?を試みた。ヤフーでは「アインシュタイン」のキーワードを入力すると、50ページ近くまでほとんどがアインシュタインを賛美するものばかりである。1ページに10以上載っているから、500番目以上にわたりアインシュタインを批判するホームページはない。
 47ページでやっと
科学への貢献度、「ニュートン」と「アインシュタイン」どちらが影響度が高いか?
および
世界最後のアインシュタイン像が撤去 年内にも暗殺へ
というページをヒットした。小生の『アインシュタインの嘘とマイケルソンの謎』はこのあともまったく出てこない。もっとも、「アインシュタイン 嘘」と2語を入力すると即座にわたしの書名は現れる。

科学への貢献度…」は最近のものではなく、今から6年ばかり前の2005年12月に作成されたものらしい。2005年はちょうどその100年前の1905年、アインシュタインが特殊相対論を発表した年で、この年に因んだものであろう。
 
これはGooニュース(時事通信)によれば「【ロンドン23日】相対性理論で知られるドイツ出身の理論物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879―1955年)と、万有引力の法則を発見した英国の物理学者・数学者アイザック・ニュートン(1642―1727年)のどちらが科学および人類に対してより大きな衝撃を与えたか―。英王立協会が行った2つの世論調査では、いずれもニュートンに軍配が上がった」とある。
 
この調査は英王立協会が2005年11月23日、英国ロンドンで実施した本格的なもので、科学への貢献度について「ニュートン」と「アインシュタイン」どちらが影響度が高いかを投票調査したものだ。一般人1000人以上と、王立協会メンバーの科学者300人以上を対象に別個におこなった。

その結果「科学への貢献」を問う投票では、
科学者間でのアインシュタイン投票13.8%に対し、ニュートン(86.2%)はその約6倍。一般人ではアインシュタインに対しニュートンが1.5倍である。

人類への貢献度では
科学者間でニュートンがアインシュタインの1.5倍、一般人の間ではほぼ同数である。

これらの投票は科学理論をよく知らない人にもよく知られているか、という認識度であるとみてよいだろう。耳にする機会はアインシュタインのほうが多いだろう。それでもアインシュタインの得票は半分以下である。インターネットではこんなにアインシュタインだらけなのにこうなるのは、案外と大衆もまともな感覚を持っているものだと救われる思いである。

世界最後のアインシュタイン像が撤去 年内にも暗殺へ
という見出しは、「虚構新聞」なるホームページに出ている。今年のニュートリノに関する実際のニュースは9月23日に放送で発表され、新聞紙上には翌24日に載った。その翌日が25日で、虚構の2041年に、アインシュタイン像が倒される、というのは今からきっかり30年後のニュースということになる。もちろん、パロディ。奇しくも、この100年前、1941年がわたしの生年である。不思議な因縁を感じる。
 2041.09.26 Newsの、その面白い記事の内容は次のようだ(快く転載の了解をくださった。いくぶん短くしてある)

――相対性理論など現代物理学の発展に大いに寄与し、「天才」とされてきた物理学者アルバート・アインシュタイン(1879―1955)の業績を称えた世界最後のアインシュタイン像が母校チューリッヒ連邦工科大学から撤去された。2011年に光より速いニュートリノが発見されて以降、凋落の一途をたどったアインシュタインにとって、この「2041年9月25日」は象徴的な日となるだろう。

――20世紀の物理学にとって欠かすことの出来ない存在だった。一方でこれらの理論が多くの物理学者を悩ませてきたことも事実だ。その後100年間にわたる物理学の発展と混迷は全て彼の理論を土台としてきたと言っても過言ではない。

――彼の評価が大きく転換し、その業績にほころびが見えたのは、2011年のことだった。この年に発見された光より速いニュートリノは、理論上ありえないとされた光より速い粒子の存在を裏付け、相対性理論の修正・転換を迫った。その後数々の*実証実験によって「光速度不変の原理」の誤りが証明されると、この「20世紀の天才」への評価は次第に傾いていった。」

――2020年、京都大学物理学部の坂本義太夫教授が相対性理論の誤りを証明し、新たな物理学の世界像を描いた「タキオン理論」を提唱。

――36年、この坂本理論を応用して作られたタイムマシンによって、世界で初めて1998年への時間旅行を果たしたジョン・タイター飛行士の偉業…

――これらの出来事をきっかけに、アインシュタインに対する評価は激変した。

――日本など、大学に建てられていた銅像は相次いで撤去。今月25日、最後まで残っていた母校チューリッヒ連邦工科大学の銅像も「旧世紀の遺物」として同大物理学部の学生たちによって倒された。

――現在、アインシュタインへの評価は「相対性理論という一見『真理』とも受け取れるまやかしの理論で物理学の発展を100年にわたって妨げてきた白髪の狂人」という見方が一般的になっている。

――今年三月、国際連合は、物理学の更なる進歩のためアインシュタインの暗殺を議決。相対性理論が発表される1905年より先に殺害することで、その後100年にわたった理論物理学の混迷を解消したい考えだ。(以上、「虚構新聞」より)

    

後のほうはちょっと物騒な話になっているが、ありえない空想だ。これは虚構でありながら、真実に近いだろう。興味深いパロディである。「虚構新聞」と謳いながら、よくよく見ると、実のところは虚構をつくる新聞ではなくて、世の中の虚構を裏返しにしてあばく、まことに軽妙で含蓄あるサイトである。人気を集めているというのも頷ける。見事なことに、わざと虚構も実際につくって見せ、虚構が民衆の興味をかきたてることができれば、恐ろしくも、いかに現実化してくる素養を持つものであるかも表現している――とわたしは思った。      2011年 10月 12日

 

   熊野宗治  (2011.10.18)