論評  相対論は間違っている
なぜアインシュタインは天才ナンバーワンか
洗 脳

エドワード・ハンターは「洗脳」とは次のように説いている。
 「意図するところは心を根底から変え、外からは非道性が見えない形で、その人を生きたあやつり人形――ロボット人間――にすることである。目的は、肉体と血液の中に新しい信念と思考過程をつくり出して、捕らわれた人の体に挿入することである。その成果は、昔のような奴隷ではなく、決して反逆することがなく、虫がその本能に従うように、常に命令に忠実な奴隷的人種を求めるところである」(『洗脳の世界』キャスリーン・テイラー)

主として「洗脳」は民衆を統制する為政上の巧妙な道具として利用されてきた。「洗脳」にはそれゆえの目的を持っている。

洗脳は単なる説得よりもっと野心的で強制的であり、教化のような古いものとは異なり、現代のテクノロジーと密接に関連を持つようになった。それは他人の言いなりにならない人間を体系的に処理することであり、成功した場合には彼らの主体性をも変えることになる。
 と、キャスリーン・テイラーは言っている。彼女が考える「洗脳」の二つの側面の1つは、洗脳が関与する信念の強さである。彼女の考えに論拠すれば、往々、新しい信念が極度に感情的な状態と結びついている。それらの信念に議論を挑むのは難しい。そのような挑戦を敵対と受け止め議論を拒む。新しい信念は絶対的に正しく、理屈の範囲外にあると考える。
 第二の側面は、暴力と恐怖の利用である。強制的説得、それは肉体的拷問を用い、暴力がよく用いられると共に、多くのカルトは残虐行為とは逆に愛によって被害者を説得しようとする。洗脳の被害者を理解しにくいのは、自らその運命を選んだと激しく主張する点である。

彼ら洗脳者は、抽象的で曖昧かつ紛らわしい概念を用い、それらを強烈な感情に結び付け、その成果を自分たちに用のない人々を否定することの正当化に用いる(K・テイラー)。

彼女はまた、彼らの概念の曖昧さは、隠れた落とし穴や魔術的なものを含んでいることを覆い隠すため、聴衆の感情的反応を引き出して「輝かしい一般論」を用いることが多い、と指摘している。

シャロン・テートほか殺害事件をひき起こしたチャ-ルス・マンソンは16歳の売春婦を母として生まれ、親類を転々とさせられていた。9歳から32歳までほとんど少年院か監獄で過ごし、本人は出所したくないまま1967年、出獄した。暴力的性格もあったが、獄内で彼は生き延びるための強さと、相手が望むよう行動することを身につけた。マンソンはそういった人間関係での流動性の上に神秘的なオカルト的哲学に興味を寄せた。聴衆が聞きたいと思っていることを講演する才をもっていた。

出獄後60年代の反体制文化にあって、人々が望むのを理解し与える彼の技術は磨かれ、ヒッピー達の支配者になった。周囲に女性を集め、自由愛を崇拝者に捧げるファミリーを作った。彼女らに語らせそれを利用し、自分を父親と思うように言い、性的関係を持った。
 マンソンに認めてもらうことが彼女たちにとって極めて重要になった。やがて彼は悪魔崇拝集団と接触し、次第に暴力的方法が多くなり外界から孤立した。ファミリーのメンバーは彼の権威を受け入れ、彼は激しい尋問、教条を繰り返し、権威を強化した。奇怪な儀式にメンバーを参加させた。
 やがて来るべき黙示録的世界の終わりが早く来るよう手助けが必要であると決める。マンソンはファミリーに行動を起こさせた。1969年8月、ファミリーは妊娠末期の女優シャロン・テートを含むロサンゼルスの富裕層7人を残忍な方法で殺害した。マンソンは殺害現場にはいなかったが、若い女性信者たちが「死の哲学」を受け入れるよう彼が洗脳したとされた。(『洗脳の世界』から要約)

  
  熊野宗治