特殊相対論 原文
B
右についての
疑義


                        
 §3.座標系と時間の変換理論.

一つの座標系からこれに対して一様な併進運動をしている他の座標系への変換

“定常的”な空間に二つの座標系をとる。これらは1点から出る三つのお互いに垂直な剛体の直線から成る二つの系とする。この二つの座標系のX軸が重なっていて、Y軸とZ軸はそれぞれ平行であるとする。また、おのおの系には測定用の剛体の棒と数個の時計とがあり、これらの二つの系にあるすべての時計は、すべての性質が同じであるとする。
 さて、この二つの系のうちの一つ(k系)の原点が、他の定常系(K系)のχの増す方向に一定の速度υで運動するものとしよう。座標系の各軸や使用する測定棒および時計も同じ速度υで運動するものとする。そうすると、定常系の各時刻ごとに運動系の各軸の位置が決まるであろう。そして対称性の原理によって、k系の運動は時間において定常系の軸に平行にとることができると仮定しよう(このt”はいつも定常系の時間を表わす)。
さて、定常系Kから定常な測定棒によって測られる空間を考える。この空間はまた、運動系kからは運動系とともに動く測定棒によって測るものとする。このような測定によって、座標、およびξηζが得られる。さらに定常系の時間は、時計の存在するすべての場所に対して、§1に述べたような光の信号の方法によって測られるものとしよう。同様に運動系の時間τは、その系について静止している時計の置かれているすべての運動系の点に対して、§1で述べたように、このような時計の置かれている各点間に光の信号の方法を用いることによって測られるものとしよう。
 定常系Kで起こる一つの事件の場所と時間を完全に定義する値の組z、に対して、運動系kについて同じ事件を定義する値の組ξηζ、τが対応する。われわれの課題は、これらの量の関係をつける方程式の組を見いだすことである。
 第一にこれらの方程式は1次でなければならない。なぜならば、空間と時間は斉一という性質をもつと仮定したからである。もし
        ……………………………3-1
 とおくと、k系に静止している1点は時間に無関係なχ()という値の組を持つはずである。まずτをχ()の関数として定義する。そのためには、τは運動系kに静止している時計の得た知識の総合にほかならないということを方程式で表わさねばならない。この時計はもちろん§1で述べたような規則によって同調させてあるものとする。
 運動系kの原点から一つの光線が時間τ()にX軸に沿って、χ()まで放射されたものとする。そして時間τ()にそこで反射されて座標系の原点に向かい、時間τ()に原点に着いたとしよう。その場合
  …………………………3-2
 を得る。あるいは定常系に対して、関数τについての上の議論と光速度不変の原理を当てはめることによって、次の関係を得る:
  ……………………3-3
 したがって、もしχ()を無限小の値にとると、
 
  ………………………3-4
 あるい
  ………………3-5
 となる
  
      続き  本文に対する批評

  AIU Planners Co., Ltd. 熊野宗治