特殊相対論への疑問

C
への
疑問

                       
☆  ☆ 特殊相対論Cへの疑義  ☆  ☆

3-7式はどのようにして導かれたのだろうか。もうひとつ戻るが、3-5式は3-4式の変形で同じものである。念のためやってみよう。まず3-4式の左辺すべてを右辺へ移項してから反転すると
 ……C
となり、括弧のなかを整理すれば3-5式を得る。これらは3-3式からχ(′)→0の極限、すなわち座標原点におけるτとtの関係式であるようだ。しかし、この3-5式である
   ……………… D
は前にも述べたように、あやしい。もしこれが正しいとしてχ(′)で積分してみると、
  
となる。積分定数Cはχ(′)=0のとき(原点に一致しているとき)τ=tであるからt+0+C=0でC= ‐tと決まる(これらのτやtは「時刻」である)。すると
    
となるから、τ以外を移項することにより
  ………………………E
を得るが、これは3-7式に一致せず、が余分に入る。3-7式のaはのちにa=1と得ているが、E式がこれに一致するには=1でなければならない。
 ところが、このあとにτ=φ(υ)β(t ‐ υχ/2c)(3-13式)が導かれる。すると、これをtで偏微分してみると
∂τ/∂t=φ(υ)βとなり、のちにφ(υ)=1、(β≧1)と決まるとなれば、υ=0でないかぎり=1にはならない。したがってE式の元であるD式は相対論の前提から矛盾する。つまり、われわれに不明であったさきほどの3-3式から3-4式へのあいだに飛躍があるのではないか。3-4式から巧みに3-7式を導くが、のちに得られるものと矛盾してしまっているわけだ。
 すると3-7式はどこから得られたものだろうか。3-3式にあるχ(′)/(c ‐υ)は O(′)からP(0)への往の時間、χ(′)/(c+υ)は復の時間である。この差をとれば往復の時間差となり、その半分で片道あたりの遅れ時間になると考えたのだろうか。時刻t(K座標での時刻)に対し、k座標ではtよりさっきの遅れだけ少ない時刻になる。その計算をすると、χ(′)/(c ‐υ)とχ(′)/(c+υ)の差はとなり、その半分をtから引くとたしかに3-7式となる。頭のaはさらに何かの原因で伸縮するかもしれないと考えて付けたものか、あるいは読者を幻惑するためのものかもしれない。あとでa=1となる。
 上のような考えだとするとは「時間」ということになる。tは時刻なのか、時間か? tが時刻ならτは「時刻」、時間なら「時間」のわけになる。
   ξ=cτ
という式に適用するものであるとすると、このτは「時間」でなければならない。するとtは時間でなければならない。なにをしている時間か? 3-3式は「k系のτを出発時τ0についてK系でt」とすればtは時刻ということになる。その流れから来る3-7式のtは時刻である。tが時刻であれば3-8式は成り立たない。速さに時刻を乗じても距離にはならないからである。
 そこでこのtへ3-9式の「時間」としてのtを入れる。しかしこのtはχ(′)の距離を、ここでは光の速度をc ‐υ(彼は光速をどの座標でもcとしたはずだが)として、光が走りきる時間としたχ(′)=(c ‐υ)tのtである。このtは出発時から変化していく時刻ではなく、走行「時間」であるとして3-8式に入れる。こんな気まぐれなことをしてはならない。


c′はぼくらの光の相対速度である
 
       なお、「光は常にこれらの軸に沿って速度で伝播するということを考慮しなければならない」とあるのは、マイケルソンの実験(図3)が彼の頭にこびりついているからにちがいない。不思議にもここではぽつりと光の「相対速度」を認めている 
   特殊相対性理論でずっと問題になるのが次に記される「光は運動系において測っても速度cで伝播するということを方程式で表す」という考えにある。これはあまりに奇妙すぎる。つぎに、放出された光線に対してξ=cτが成り立つとして、運動座標系においてもcとしている。その代わり時間がτとなって短縮している。この短縮は@、Aのとおり、往復時間に「同調」させると、3-7式のように座標間の相対速度のため時刻の遅延が起こってくると主張する。
式の誘導をもうすこし見ておこう。3-4式がおかしいことは前に述べた。3-7式(時刻)を用いて座標3-8式が得られている。その上のξ=cτに注意しよう。このτは明らかに「時間」である。つまり3-8式に入るものは「時間」でなければならない。そこへ「時刻」(3-7式)を放り込んでいる! こうして時刻tは時間tにすりかえられた。それから、この式に「k系の出発点に対して、速度(c ‐υ)で動いている(これは相対速度であると言ったのと同じで、持論を棚に上げている)」として3-9式を入れて3-10式を得ている。
 また、3-13式のτに含むtは3-9式のtとはまったく無関係のtであることを念頭に置く必要がある。このτは疑惑の3-7式(時刻)にχ(′)=χ ‐υt(このtは「時間」で、座標運動にかかわるt)を代入すれば、τ=a2β(t ‐υχ/c(2))として得られる。これも変である。ちゃんとした科学者に理解困難なのは当り前というものだ。
 次の式はおそらくマイケルソンを意識してy=t(図3参照)からもってきている。しかし図3から判断すれば、この節ではyはηでなければならず、入れ代わっていないだろうか。
 この式とχ(′)=0を3-11式に入れて3-12式ができている。しかし、χ(′)に対してその値をおきかえると3-13式になるというが、なぜこうなるのか私には分らない。おそらくη、ζについて、持論の光速度不変からすればy=ηでなければならず、そのための修正をしたのであろう。それとも、あとの方で出る4-2式からフィードバックして無理やり調整したものかとも思われる。それから、3-16式は、こうはならないのだが…。
 とにかく、はこのあとローレンツ変換のなかに頻繁に現れるものである。さて3-10〜3-12式は、そのあとの記述と同じ書き方をすれば
   τ=aβ(2)(t ‐υχ/c(2))
   ξ=aβ(2)(χ ‐υt)
   η=aβy
   ζ=aβz           ………………以上3‐12
である。この式から次に、χ(′)に対してどの値を、あるいはχ(′)をどのように置き換えるものか、βが一つずつ外された3-13式になるとしている。いろいろやってみたが、やはりどうも分らない。3-12式についてはさっき述べたように、図3のとおりyとηが入れ替わるのが正しく、η=a(1/β)y、同様にζ=a(1/β)zとなるべきであろう。その証拠に3-8式の上、ξ=cτから分るように、ξは彼の理論によれば時間τの短縮分(3-7式からτ≦tである)だけ小さいはずが、3-12式のξは2β(β≧1)によって逆に大きくなっている。だから3-12式はそれぞれ1/2β、1/βとする条件で、光の座標が静止系Kに静止し、k系が速度υでχ軸上の正の側へ運動しているとすれば、a=1としてこれらのη、ζは正しい。図3を参照しながらηについて言えば
   η=t,  y=ct
である。両座標のy座標がともに原点Oからy方向に同じt秒間に光が進む距離だとすれば正しい。座標変換論として数値らは光速という現実の道具を使えば、なるほどそのようになる。
 これに対し、どうすればこうなるのか分らなかった3-13式はηとζについては数学として結果的に正しい。ξについてはβ=1であれば正しいのだが、両座標での時間が違うという前提だから、すこし面倒な式になっている。
 すなわち、「光」という現実の現象を介在させなければ、普通のガリレオ変換(3-13式のy,z座標)となって、何も問題はない。相対論ではξにβの入ったものを用いてこの先へ進める。つまりχ軸については運動による時間の短縮があるものとして進めるが、そうだとすれば座標間相対速度の生じないy,z軸についても3-12式(ただしβたちは逆数)のように短縮を見るべきところ、まったく短縮はないものとしている。3-13式は筋が通っていない。
 3-12式ならよいかといえば、光の利用として筋は通るが、現実には光の座標がK系に静止しているものかどうか確認することは不可能で、架空の話になる。「光」という現実の道具を用いながら、実現不可能な架空の理論になる。
 アインシュタインはこの先、後者の3-13式の結論である3-17式を採るらしいが、これらの式には矛盾のあることをさっき見た。

 あとすこしだけ原文を読もう。それで特殊相対性理論の要点をほぼこえる
 
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   熊野宗治