§4.運動する剛体と運動する時計について得られた方程式の
物理的意味
運動系kに静止していて中心がk系の原点であるような一つの剛体球(半径R)をとる。この球が速度υでKに対して運動しているとすると、その表面の方程式は
…………………………4‐1
で与えられる。時間t=0において、この表面の方程式をχ、y、zで表わすと、
………………4‐2
で与えられる。したがって、静止しているときに測って剛体球の形をしていたものは、運動しているときには静止系から見て回転楕円体を示す。その三つの軸は
…………………………4‐3
で与えられる。
したがって、その球(そして球だけでなく、どのような形をした剛体についても)のX方向とY方向の大きさは運動によって変化を受けないが、X方向の大きさは1: の比で小さくなって見える。換言すれば、速度の値が大きいほどその短縮の程度も大きくなる。υ=cのとき――“定常系”から見て――すべての運動物体は平面の形に縮んでしまう。また、光速度より大きな速度に対しては、われわれの推察は無意味となる。しかしあとで示すように、われわれの理論では光速度は物理的には無限に大きな速度の役割を果たすのである。
同じような結果は、“定常”系に静止した物体を一様な運動をしている系から見たときにも成り立つことは明らかである。
さらに一つの時計があって、定常系に対して静止しているときに時間tを記録し、運動系に静止しているときに時間を記録するようになっているとし、この時計をk系の座標原点に置いてちょうど時間を記録するように調整したものとしよう。定常系から見たとき、この時計の速さはどうなるであろうか。
時計の位置について決まる量χ、tおよびτのあいだには、明らかに
χ=υt …………………………4‐4
の関係が成り立ち、かつ
…………4‐5
である。したがって、
………………………4‐6
となる。そこで(定常系から見て)時計の記録する時間は一秒間に1‐だけ遅れる。あるいは第4次およびそれより高次の量を無視すると、(1/2)υ2/c2だけ遅れる。
このことから次のような奇妙な結果が導かれる。もしK系の2点AとBとにそれぞれ定常時計があって、定常系から見て同調しているものとする。いまAの時計が直線ABに沿ってBのほうへ速度で運動するとすると、これがBに着いたときには二つの時計はもはや同調していない。AからBへ運動した時計は、Bに止まっていたもう一つの時計よりも(1/2)υ2/c2だけ遅れている。ここでtはAからBへの旅行に要する時間である。
すぐわかるように、この結果は、時計がAからBへとどのように折れ曲がった多角形の道を通って行ったときにも成り立つし、また点AとBとが一致しているときにも成り立つ。
もし多角形の道について証明した結果が、また連続的にカーブした道についても成り立つと仮定すれば、次のような結果が得られる:
A点にある二つの同調した時計の一つが等速度で一つの閉じた曲線上を運動して再びAにもどったとし、その運動に要した時間をtとすると、その運動に参加した時計がAに着いたとき、Aに静止していた時計から見て(1/2)υ2/c2だけ遅れていることがわかるであろう。したがって、赤道に置かれた時計は両極のどちらかに置かれた、まったく同じ性質の時計に比べて、他の条件が全部同じとして、ごく僅かだけ遅れるはずである。
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