§5.速度の合成
(※ここでは運動しているk系でwなる運動する点の合成速度はどうなるかを述べている。その結果だけ見よう)
k系に対して平行に動くもう一つのk(′)系における量は§3で導いた方程式において、υの代りに
υ+w/(1+υw/c(2)) とおきかえると得られる。
U.電気力学の部
(※ここは項目だけにしよう)
※その項目は§6から§10まであり、
「真空に対するマックスウェル-ヘルツ方程式の変換・運動中に磁場の中に生じる起電力の性質について」、「ドップラーの原理と光行差の理論」、「光線のエネルギーの変換・完全な鏡に加えられる輻射圧の理論」、「携帯電流を考慮したマックスウェル-ヘルツ方程式の変換」、「ゆるやかな加速度を受けた電子の力学」となっている。
[A2]物体の慣性はその物体の含むエネルギーに依存するであろうか(1905)(※これも省略しよう)
[A3]質量とエネルギーの等価性の初等的証明 (1946)
次に述べる等価性の法則の証明は…中略…次のすでに知られた法則だけを用いたものである。
T.運動量保存の法則
U.輻射圧の式、すなわち一定方向に進む輻射の複合体の運動量
V.よく知られた光行差の式(恒星の見かけの位置に対する地球の運動の影響――ブラドレー)
いま、次のような系を考える。物体Bが座標系Kに対して空間に力を受けずに静止しているとする。二つの輻射複合体S、S(′)はおのおのE/2のエネルギーをもってそれぞれ正負のχ(0)方向に進み、最後にBに吸収される。この吸収によってBのエネルギーがEだけ増加する。物体Bは対称性の理由によりKに対して静止を続ける。
同じ過程をK(0)に対して一定の速度υで負のz(0)方向に動いている座標系Kから眺めたとしよう(図1)。その場合、Kに関しては上の過程の記述は次のようになる。
物体Bは正のz方向に速度υで動いている。二つの輻射複合体は今度はKに対してはχ軸と角αをなす方向を持っている(図2)。光行差の法則によれば、第1近似でα=υ/c(ただしcは光速)である。K(0)における考察から、Bの速度はSおよびS(′)の吸収のあとで変わらないことが分る。
さて、座標系Kにおいてz方向の運動量保存則をこの系に適用してみよう。
1.吸収のまえのBの質量をMとすれば、MυはBの運動量を表わす。古典力学によれば、おのおのの輻射複合体はE/2のエネルギー、したがってマックスウェル理論のよく知られた結果からE/c(2)の運動量をもっている。厳密に言えば、これはSのK(0)に関する運動量である。
しかし、υがcに比べて小さければ、Kに関する運動量も2次の微小量を無視すれば同一である。運動量のz成分は(E/2c)sinαあるいは十分な正確さで(E/2c)α=(E/2c)(υ/c)である。したがって、SとS(′)とを合わせてEυ/c(2)の運動量をz方向にもっている。吸収のまえにおける系の全運動量は、したがって、 Mυ+(E/c(2))υとなる。
2.吸収ののちのBの質量をM(′)とする。ここでエネルギーEを吸収したため質量が増加したことが予言される。吸収ののちの運動量は、したがって
M(′)υ
である。
さて、運動量保存則をz方向に対して適用すれば
Mυ+(E/c(2))υ=M(′)υ
すなわち
M(′)―M=E/c(2)
この式は、エネルギーEと質量との等価性を表わす。エネルギーの増加Eに対して質量の増加E/c(2)が伴う。通常の定義によれば、エネルギーは付加定数だけ不定のままであるから
E=Mc(2)
になるようにこれを選ぶことができる。 (※簡単な図1、2は省略した)
[A4]E=Mc(2)――現代の重要問題 (1946)
質量とエネルギーの等価性の法則を理解するには、特殊相対性理論以前の物理学において互いに独立に高い地位を占めていた二つの保存原理、すなわちバランスの原理ともいうべきものに立ち帰らねばならない。
……………中略…………………
物理学者たちは、二、三十年まえまではこの原理を受け入れてきたが、特殊相対性理論に直面するや不適当であることがわかった。…中略…エネルギー保存の原理はまえに熱量の保存を呑み込んでしまったが、今度はさらに質量の保存をも呑み込んで、自分独りその地歩を保っているのだといってよいであろう。
質量とエネルギーの等価性を表わすには、E=Mc(2)という式を使うのが普通である。ここでcは光の速度で、Eは一定の物体の中に含まれるエネルギー、Mはその質量である。質量Mに属するエネルギーは質量に光の莫大な速さの2乗を掛けたものに等しい。すなわち、質量1単位あたり莫大なエネルギーが含まれているとしたら、なぜこんなに長いあいだ気づかれなかったのであろうか? 答えは簡単である。エネルギーがすこしも外部に放出されなければ、それは観測されない。それはあたかも、ものすごく金持ちの人が1銭も費やさなかったり、人に呉れてやったりしないようなものである。だれもその人がどれだけ金持ちなのかわからない。
ところでこの関係をひっくり返して、エネルギーにおけるEだけの増加は質量におけるE/c(2)だけの増加を伴わねばならないということができる。ではなぜこの変化に伴う質量あるいは質量の増加が測られないのであろうか。問題は2cが分母にはいっていることである。…中略…
質量の増加が測られるためには、単位質量当りのエネルギーの変化がすばらしく大きくなければならない。われわれはこのように大きな単位質量当りのエネルギーの放出される場合をただ一つ知っている。それは放射性崩壊である。……以降省略
最初へ 本文に対する批評
|