な ぜ                     

8マイケルソンとモーレーの実験における 往復時差の検討 2

実験装置の概要
 水銀に浮かべて水平に置かれたM・M(マイケルソン・モーレー)の実験装置は図のようで、45度傾けて置いたスプリッター(ハーフミラー)の左方に例えば光源がある。そこから入射してスプリッターで反射された光は図の上方(地球公転の半径方向)へ、透過したものは右方(公転方向)へ別けられる。
 それぞれはアーム長の先に直角に置かれたミラーで反射して戻る。上方から戻ったものはスプリッターを透過し、右方から戻ったものは反射して90度下方に向きを変え、両者は重なり波長のずれが観測される。
 装置全体は光の座標に対し右方へ公転速度vの速さで動いているとしよう

図はマイケルソン干渉計

        全体は図の右方向(地球の公転方向)にυの速さで動いているものとする



 







スプリッターMから、光源Pの光が2方に別けられて出発し、
 

 


秒後に公転方向の光がMに到達。すぐ反射される。
















さらにt秒後に公転方向の光がスプリッターMに戻り、上方の光と重なり、干渉縞を観察するはずである。

 
   
さて、t=0からt秒後には 装置はvtだけ右へ動いている。右のミラーに到達したときスプリッターもvtだけ右へ動いているから、往きの光路はアーム長
と装置の移動距離の和となり、それはCtである。上方の光はミラーですでに反射し終えているだろう。少なくともミラーは水平に元の位置からvtほど動いている。つまり、アームの向きへ向かった光がミラーに当たるにはミラーが移動した分、斜めに走ることになる。一方、右方への光が反射されてt秒をかけてスプリッターへ戻ったときにはスプリッターはvtだけ光に対向する向きへ動いている。上方から戻った光はたぶんすでにスプリッターを通り抜けている。上方へ往復した光がスプリッターへ戻るまでの時間をT秒だったとしよう。その間に往復する光はスプリッターの移動距離を底辺とする二等辺三角形を描いてジグザグに走行することになる。その公転半径方向を取り出してみたのがB図である。


公転半径方向も光は遅れる!

図のTは往復に要した時間。dはその間にvの速さで公転方向へ移動した距離の半分。は腕の長さである。実際には光はジグザグに進行する。


 図の斜辺にあたる往復距離をSとすると

S=CTy           …………………………@

S=(2+(2d)2    …………………A

ミラーの動いた距離2d=vT   ………………B

T;x方向光の往復時間とすると

T=t+t    …………………………………C

光の進行距離は本文(P.69)F式のLで

L=C(t+t)=CT   ……………………D

ミラーの動いた距離L

=vT    ………………………………………E

この場合、公転方向往復時間Tと半径方向往復時間Tは必ずしも等しくない。これを等しいと錯覚すると誤った式ができる。

本文(P.70)D式から

   ………………………………F

これから各往復時間比T/T=Rを求めてみよう。まず@から

S/C

これはAから

 = ………………………………G

Bから

     ∴CT

両辺2乗すると Cこれから

    ∴……………………H

これは、光が太陽方向のアームを往復する時間は単にを往復する時間に等しくないことを示しているまた、公転方向に往復する光の往復時間は(本文に示すように)更に長い。

半径方向と比べる


太陽方向往復時間に対する公転方向往復時間の比率Rtを求めてみよう。F式をH式で除す。

とおくと

   ………………………………………………I

これは公転方向の光が往復する時間はそれと直角な太陽方向の光が往復する時間に比べ、この率長いことを示す。

V=0のときのy方向往復時間はH式でv=0として、

x方向はF式から

つまりV=0なら、x,y方向に別れて往復した光は同時にスプリッターへ到着することを意味する。

ではV=vのときはどうか。静止時に比べた往復時間の増加は

y方向で

x方向で

すると

 ……………………………J

となってI式と一致する。

こんどは時間差T−Tを求めてみよう。これを凾sとして、F−Hから

分子分母Cで除す

   ………………………………………K

エーテル論(マイケルソン実験)ではこの第2項が落ちているかもしれない。

光の相対速度

マイケルソンが気づかなかったはずはないと思うが、ホーキングほか、普通にはこのM・M実験装置で、太陽に向けた片方の光はそのアームに沿って単に往復すると説明する。なぜなら、公転方向には地球の公転速度で動いているが、太陽方向へは公転半径方向なので太陽との距離は一定だ。光は公転半径方向へはB図左のように光の絶対速度でアームの線上をただ往復するだけと思える。(よく考えてみると、実際にはそんな装置の置き方は南北極地でもなければ不可能なのだが…)

だがそれは光がエーテルを伝わると考えると陥りやすい錯覚であって、同じ線上を往復するようにみえる光は図のように実際にはジグザグ走行をすることをぼくらは知る。最初にあげた図の通りである。

だから、公転半径上を往復する光も、「地球の公転速度の如何にかかわらず光速は一定」ではなく、この場合も相対速度C’となって、

C’=

と遅くなるのだ。それを確かめよう。

半径方向へ向ったアーム長のミラーまでの片道距離は、相対速度C’でt秒間かけてCtである。光の実際の走行距離は斜めに同じ時間tだけ光速Cで走りCtである。その間にアームは公転方向へvtだけ移動している。その関係は

(Ct)2 ()(vt)

である。これから

=C−v

となるから、相対速度C’は

C’=

となることが分かる。これはまた

C’=C

とも書ける(註1)。往復に要する時間はCt=2から

一方、公転方向のアームについては本文のとおり、往き帰り相殺された往復の相対速度はC=Cである。


註1 この速度でT秒間に進む距離はCTである。時空などという妙な道具は使わなくても出る。相対論では光速が遅れるのでなく、光速Cは同じでCTとして時間のほうが遅れ、CT= CTからすぐ分かるようにT=Tとなっている。人の頭の中にこしらえた「時間」という概念の方を部分的に変えている。走行距離を計算してみれば確かに答は一致する。辻褄は合わせてあるから、人をしてあたかも「相対論は間違っていない」と思わせる。という項は、例のローレンツ変換にも出てくる。むろんアインシュタインの専売特許ではない。相対論ではCを不変としたため、それは時間のほうにくっ付いてくることになる。

M・Mによる波長のずれと光路差

公転速度30q/秒として、実際に計算してみよう

3×10/3×102  =108 =0.00000001

エーテルの風の中で公転方向の光の遅れは本文(P.70)+t2 から

秒 ………………………………………L

この遅れは距離にして凾wであるとすると、

凾w×C

=2からである。これを入れると

凾w=2× ……エーテル論の計算……………………@

われわれの計算では K式から

凾w=2× ……エーテル論の計算……………………@

われわれの計算では K式から

= 

距離にして凾は

凾=t=2×……われわれの計算…………A

エーテル論(思い違いがあったとして)と比べたわれわれの計算による距離の伸びは

分子分母に(1−α)をかけ

   

1−α=0.99999999を入れてみると

   

   =0.000000005×10 =0.501 
(太陽方向でも生じる光速の遅れを考慮すると、M・Mが考える半分が妥当だ)

エーテル論の予想波長ずれ4/10は実験時刻によってもそれより少ないと考えられる。時刻により0.5ほどに少なめに出ているとすると2/10ほどとなっているだろう。これに太陽方向アームにも現れるはずのさっき出た0.5をかけると1/10(10100)と実測値に近づく。

ちなみに、我々の光路差を計算しておこう。

光路差=K×C

これに 1−α=0.99999999 を入れて計算すると1メートルとした場合、100×10−9mと得る。一方、光の標準波長は605.8nm605×10−9mで、これに対して光路差は16.5%にあたる。

マイケルソンの相対速度

さて、マイケルソン‐モーレーによれば予想された4/10波長のずれは4/100以上は認められなかったと報告されている(書物によっては全く認められなかったようにもなっている)。我々の本文中ではその差は実験誤差であろうと片付けた(『幻子論』P59)。しかし、これはあながち実験誤差ばかりでなく、ある程度正確に把握された現象であると推測することは出来る。

マイケルソン‐モーレーの観測が4/100以上の波長のずれは見られなかったとされていることは、これに近いところまでのずれが観測されたと解することもできる。そこで、我々の実験室が宇宙の絶対座標に対していかなる速度を持つかは皆目不明であるが、光の絶対座標に対してなんらかの速度であったとすれば、その速度に対してM・Mの装置は、検出されない45゜あるいは面に対して90゜とは限らず、様々な傾斜をなして観測したのではないだろうか。

公転速度の向きに合わせたつもりのM・Mの装置がその絶対座標の傾きに対して時々刻々0゜から90゜までのある傾斜を持って運動する途中を観測したはずで、光の相対速度に相当する波長のずれはその0から100パーセントまで違った値を観測するだろう。

公転方向に合わせたつもりのアームに沿って真の運動成分を加味した光の相対速度に対し、これと直角なアームの方にも相対速度が生じ、それら両方の差が波長のずれとして観測されているはずだ。つまり、観測値は思ったよりさらに小さめに検出されていたことになる。

マイケルソン‐モーレーが観測した波長の4/100のずれに相当する相対速度を計算すれば、この地球の絶対空間に対する運動速度は、少なくともそれより速いことは確認できることになろう。》

地球の絶対速度を求める

マイケルソン‐モーレーの報告で、4/10波長のずれと予測した観測結果はその10分の1以下であったとしている。太陽と地球の関係を立体的にイメージしてみよう。太陽方向アームを太陽に向けても、公転方向のアームは、装置自体が常に地面に水平であるため朝と夕には太陽方向と平行になって公転方向を指さない。アームが公転方向の速度を100パーセント捉えるのは正午か深夜0時である。実験に掛かる時間は昼食をとる正午をたぶん避けただろう。午前中に終えようとすれば、出勤すぐに取り掛かることが必要だ。あわただしい時間を避け、落ち着いてデータをとろうとすれば、昼休みののち装置の準備にかかるだろう。最終データが記録される頃はおそらく3時以降で、昼過ぎからゆったりと取り掛かったとすると、たけなわとなるのは夕刻だったろう。そうすると、公転方向に対しても全く差を観測されない時刻ということになる。彼らが観測した「4パーセントまでに過ぎないズレ」は当を得ていたと言うべきだ。

また真昼と深夜の間にも、地球の自転速度がそれぞれ逆に増減される。公転速度と考えた速度も、銀河の中心に対する太陽の公転速度が地球の公転速度に加減され、たまたま打ち消される向きであった場合は、持つと思っていた公転速度さえまるで無いのかもしれないし、公転速度と思ったより速いかもしれない。しかし、その銀河系さえ、絶対空間のどの向きへどれほどの速さで動いているかは不明である。

このようにして速さが相殺されていくと、当時のM・M装置の絶対空間に対する速さは存外、彼らが観測した、波長の最大ずれに換算して100分の4のずれ程度であるのかも知れない。

マイケルソンたちが予測した10分の4の波長ずれは、その0.5ほどが正しいはずだったとすると100分の20のずれが観測されるはずであるが、実験時刻が0から100パーセントまでの中間であるとすれば100分の10のずれが見られるべきところ、100分の4以下であったというから、宇宙運動の相殺によってこの値まで下がったとも考えられる。

あるいは、実験が終了するのがどうしても夕刻になったとすれば10のはずが4になりさらにゼロまで可能性がある。いずれにしろ、光の相対速度は観測値に表れたといえる。したがって、もしM・M装置によって地球の絶対速度を求めようとするなら、地球上の北極から南極まで、緯度にしても0度から180度までの位置に多くの実験設備を配置して、同時刻に一斉に観測する必要がある。その中で最大の値をとったものがおそらく地球のその時刻における絶対速度である。なお技術ライター窪田登司氏によれば、レーザージャイロは自己の運動速度を示すという。

                         . 熊野宗治