「環境工芸」について



 私達のページでは、建築のページおよび、姉妹ページである「環境工芸」のページにしばしば出てくる「環境工芸」という用語について触れておかなければなりません。「建築」について考えるときに、最も重要なことの1つは、建築の出現と同時に生じる「空間」です。もともとは目的があって囲ったものが建築の始祖となったに違いないのでしょうけれども、人は心をもち、心は建築の結果生じた空間に何か別な期待を抱くようになったものと思われます。空間とはなにかしら、すごく大切なものであるらしい。それに、この空間に物体(オブジェ)が置かれたときに、驚くほどその空間が変化を遂げることがあることに気付いたことはありませんか?そこでどうでしょう、私達はそのようなオブジェたるを意図して制作されたものを、特別の呼び名で呼ぶことにしようではありませんか。


環境工芸とは?

広義に云う環境工芸
 『人の空間を構成する工業製品もしくは造形作品で、実用を超える意趣・工夫を有するものを「環境工芸品」と呼び、その創案・制作工程から完成までを総称して「環境工芸」という。』こととし、

狭義の環境工芸
 特に、建築の構成上、主要な要素として言う場合に
「建築の内外空間に在って、その空間に融合し独特の気配を醸成する造形作品」を意味して云う。
ことにします。

さらに具体化しておこう
ここに云う「環境工芸」とは

 ここに云う「環境工芸」とは、単に環境と工芸をくっつけたものを意味しない。物が空間の中に存在するのは当然のことである。環境を人に関わる空間だとすれば、人が存在する限りの全ゆる空間は「環境」ということになる。その空間に置かれる限り、全ての工芸品は環境に置かれた工芸品ということになるが、それだけでは未だ環境工芸ではない。例えば、運搬途中の荷物を駅の構内なんかで一服するために置いただけのものは単なる荷物であって駅の環境工芸と呼べないのは当然であるが、仮に、どこか邪魔にならない場所を選んで据え付けただけでも、まだ環境工芸品とは呼べない。その空間に切り離し得ぬ関係性を生成し得た時に初めて「環境工芸品」になったとするのである。


 人の環境に設置することを目的とした工業製品や造形作品を総称して一般に「環境工芸」と呼ばれてもよいが、それでも、厳密に言えばそれが実際の場所に置かれるまでは単なる製品・単なる造形作品であって、ここに云う「環境工芸」とはむろん異なる。それは「環境構成目的の作品」という合成言語としての「環境工芸」に過ぎない。たとえ、環境空間に設置するつもりであっても、実環境と融合してしまうまでは、ここでは「環境工芸」とは呼ばないのである。
 “環”は円い輪、“境”は境界・世界を意味するが、「環境」は前二者とは独立した新たな概念を意味する言語であるのと同様にして、ここでは「環境工芸」と称している。
 逆を言えば、環境に融合することを確認もしくは前提として制作された工芸品は未設定であっても「環境工芸品」と称してもさし支えない。もしそれを実際にそこに設置してみたところ、万一、目的の「気配」を醸成し得なかった場合には、「環境工芸品」としては“失敗”ということになる。ただし、環境工芸としては、今、失敗したからといって“造形作品”として失敗と言うには当たらない。別の環境で融合するかもしれないのだから。

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