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不定期便 24号 01082

電磁誘導ふしぎ

その3

発行
2010年8月2
発行者
熊野宗治
 
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M氏への手紙 3


 8月、終戦記念日が近づきました。今年は長崎へ帰郷してみるつもりです。テーマは前回から続きます。

 
電磁気の不思議 


磁気の不思議
 生体磁気の研究も現在大きく進歩しています。
 旧約聖書に記された出エジプト記によりますと、ユダヤの民をエジプトから脱出させるためにモーゼが紅海を二つに分けます。海は二つに裂け、地肌を現わします。
 それを現実に起こす実験を九州大学上野研究室は(放送大学講義で)見せるのです。長い透明な容器に水を注ぎ、8テスラの磁場をかけますと、深さ2センチほどの水は左右に押しやられ底板を現わしました。赤い色の寒天は冷やして固まったところで取り出されると、その姿をそのままみせます。水は反磁性だからです。コップ一杯(100cc)の水に働く反磁性によって、このとき0.3ニュートンほどの力で押し合っています。重力の3分の1ほどの力です。

  興味深いもう一つの実験は、先を平たく尖らせた(60度ほど)電磁極を向かい合わせ、極の中間部へロウソクの炎を近づけるものです。ソレノイドコイルに電流を流して磁場をつくると、炎は変わった形に変形します。

   頭を押えられ、葉の繁った樹木のように横に広がります。ロウソクをさらに持ち上げてゆくと、両極の間で毛槍のような形になって、それから、ついに上下に瓢箪のようにくびれました。ロウソクの炎は磁場を避けます。酸素(O)は常磁性で磁場に引きつけられます。
 ロウソクが磁気を避けることはファラデーが発見していました。上野照剛教授は、酸素は常磁性で磁場に引きつけられる性質を持ち、空気も常磁性のように振舞うと考えます。酸素の壁ができて炎を押し戻すと考え、これを磁気カーテンと呼んでいます。
 そこでつぎに、半球状に凹んだ極を向かい合わせ、炎を挟みました。ぐるりと囲むような空間をつくって、そこでロウソクを燃やすのです。電流を流して磁場をつくりますと、炎はしだいに消えました。磁気カーテンとなって空気を遮断したと思われます。
 わたしは酸素分子たちが数珠繋ぎになって両極に束ねられている様を想像しました。それが筒になって炎を囲み、消したのです。
 生体にも様々な影響が見られます。「地球は大きな磁石である」と言ったイギリスのウイリアム・ギルバートは1600年『磁気について』の中で「磁気の力は生きており、命あるものの営みにも似ている。多くの現象を見ると磁気の力は人間生活を超えた世界に存在するようだが、一方では、生体と深いかかわり合いを持っているのである」と述べています。深遠で意義深いものであると上野先生は述懐されました。
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