どこまでも海面ばかりが広がる海洋を、正しい目標をめざして飛ぶことのできる渡り鳥はどのようにしてそれが可能なのでしょうか。蜜蜂や魚が地磁気を感じて動いているのはなぜでしょうか。1975年、地磁気を感じて動く磁気バクテリアがブレッグモアによって発見されました。磁性細菌とも呼ばれます。写真には、長S字の形をしたバクテリアの体内に黒い豆粒がつながって数珠のようになって写っています。体の中で磁石をつくっているのです。「マグネタイト」という酸化鉄の強磁性体の単結晶を数珠つなぎでつくっています。これが地磁気を回転力として検出するわけです。東京農工大学の松永研究室では数珠をつくる遺伝子をみつけて分子レベルで研究しています。
生体磁気現象
医療で使用される磁気の強さはどれくらいでしょうか。医療時、脳にかけられる脳磁気刺激は10の4乗ヘルツほどの周波数で約0.1ミリ秒間、磁気強度10テスラていど、心室細動刺激は同様の周波数で約1ミリ秒間、磁気強度100テスラていどをかけられているといいます。これらは都市の磁気ノイズていどです。
一方、生体自身である脳からの磁気信号は10のマイナス15乗テスラで、100億分の1の磁性、心臓では10のマイナス13乗という微弱さといいます。
こんなに微小な磁場は高感度磁気センサーSQUIDで測ることができます。MRIでは1.5〜3テスラの磁場が使われています。8テスラで先に見たように水が割かれます。
1985年パーカーが円形コイルで磁気刺激に成功しました。
上野教授らは8の字コイルを用い、大きな渦電流をつくることができます。実験によって脳の運動野に磁気刺激(TMS)を与えますと手が動きました。脳の場所によって違った動きが現れます。
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適度(0.75T)のTMSは海馬の記憶をよくするようですが、強すぎる(1.25T)TMSは海馬の記憶を悪くしました。
ガンを治療するハイパーサーミアという方法は43℃に熱を与えて治療します。一方、熱を与えないで強烈な磁気パルスを与えて治療する方法があります。磁気パルスで白血病細胞TCC-Sを標的として破壊します。
物質の磁気的特性 |
磁性 |
性質
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現象例
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物質
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反磁性 |
ほとんどは非磁性強い磁性に反発
外からの磁場がなくなると磁性を示さない。 |
水の二分
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オキシヘモグロビン
水
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常磁 |
強い磁気に引きつけられる
外からの磁場がなくなると磁性を示さない。 |
磁気カーテン
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ディオキシヘモグロビン
酸素、ラジカル種
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強磁性 |
弱い磁場にも引きつけられる
磁石の性質をもつ
外からの磁場がなくなっても磁性を示す |
磁気バクテリア
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鉄、ニッケル、コバルト、
マグネタイトFe3O4
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生体磁気現象
医療時、脳にかけられる
脳磁気刺激は104HZ
τ=0.1ms 10T ていど
心室細動刺激は104HZ
τ=1ms 102 T ていど
これらは都市の磁気ノイズていど
脳からの磁気信号は10−15T 100億分の1の磁性
心臓では 10−13T
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