95%で印刷 B   不定期便  第50号
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 この実験装置が、エーテルに対して自転しているなら、互いに逆回りさせた光の到着に差がつくことになり、その距離の差は波の重なりでできる干渉縞のずれとなって現れるはずでした。
 光の出発した瞬間にスプリッターのあった地点Pから互いに反対向きに進んだ光が一周して再会したのがQの位置だとします。その間にt秒が経過したとします。スプリッターはPからQへωtの角度だけ回転しています。
 PQ間距離は、半径Rに回転したラジアン角度ωtを乗じてRωtです。図によりますとPから左回転する光はスプリッターが左へωtだけ回転して逃げているためそれだけ余計に走り、右回転する光は同じだけ手前まで走ればよいことになります。
 つまり左回転の光の相対速度c1
   c1(2πRRωt)t  ……………@
 右回転は
   c 2(2πRRωt)t ……………A
 すると両光の速度差は
   cc1 c 2
   (2πRRωt2πRRωt)t
    2 Rω       ………………B
となって互いに2 Rωの速度差(相対速度)を生じることがわかります。
 地球の自転角速度をω0としますと、緯度θの実験地ではB式は
   c2 Rω= 2 Rω0 sinθ……C
となります。一周する両光の速度差はcということになります。これに一周に要した時間tを掛けたら両光の光路差がわかります。

 MGP実験の長方形を、大まかながら、円環に換算すると、その周長L=(600 300)×2 m1.8qが円環周長=2 πRであるとみなして 
    R1.82 π q
とします。また光の一周時間tct=Lから
   t = Lc 秒
と得られます。光路差d
   d = tc(Lc) c
 これはC式により
   d = (Lc)×2 Rω0 sinθ
 地球の自転角速度ω0 は
   ω0 = .72×10−5ラジアン/
と知られていて、理科年表に載っています。一周2πを1日の秒数で除して確かめることができます。
 また、ずいぶんよい加減ながら、ここでθを45度くらいにしてやると
 d (1.8q/3×10q/sec)×2×(1.8q
     /2 π)×7.27×10−5×(1/√2)

 これを計算しますと
   d 1.768×1010q
   = 1.768×109×102  m
   = 176.8  nm (ナノメートル)
           (nm109mです)
と得られます。
 これは光の標準波長605.8 nmに対し0.29波長に相当します。ぼくたちは0.29波長のずれとして相対速度を観測すると予言することができます。これがこの実験による実測値と一致すれば、この理論――「光の相対速度は存在する」――は正しいとする確かな根拠となりましょう。
 
1925年のMGP実験によって得られた光路差は0.25波長の干渉縞のずれとして観測されました。われわれの計算の大雑把さからしますと、ほぼ一致したとして構わないでしょう。当時の新聞社たちはこれも相対論を証明するものだと、歪曲して報道しました。以後、この実験事実はそっと伏せられています。  
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