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  不定期便 50 012214   第50回記念号 

 MGP実験はなにを教える 
    
    ――010.1.10                 

 発行
012年1月28日
発行者
熊野宗治
 
  
MGP実験はなにを教える


 MGP実験は、1887年の よく知られたマイケルソン・モーレィの実験とはちがって、1925年、エーテルの存在を確かめるために、マイケルソン=ゲイル=ピアソンらによって米国イリノイ州で実際に行われ、光の相対速度の存在を決定的にした実験です。

M・G・P実験

図1


観測地の自転角速度は?
 図2は空気の抜かれたチューブを半径Rの円環状に組んで水平にしっかり地面に固定してあります。実際には図1に示すような実験ですが、理解の容易のために、円環にて考察しましょう。実際には図1に示すような実験ですが、理解の容易のために、円環にて考察しましょう。
   図2
 そうしますと、この円環は地球自転と共に回転していますから、大半の人はこの施設も1日当り360度回転すると思われるのではないでしょうか。実際には必ずしもそうではないんです。
図3
 図は直線ONQを軸として角速度ω0で自転する地球であるとしましょう。緯度θにある観測点P1が地球自転のために1秒後にはP2を通りかかったものとします。 
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 m,nはそれぞれP1, P2を通る経線を示します。図4はその断面図です。
図4

 その図から見るとおり、Pの回転半径はrです。すると、弧がmからn まで移動するまでにPの動いた距離、弧P1P2つまり弧d
   d=rω0    ……………@
 P1において水平面での経線の延長はいずれ地軸と交わります。その交点をQとしますと、P2での経線延長もまたQを通ることになりましょう。P1の経線延長とP2の経線延長とはQ点で交わり、その角度だけその間に傾斜してきたわけです。その間のP地点での回転角度がその角度にほかなりません。
 その角度をψラジアンとしますと、弧dはその角度にLを乗じたものとして得られましょう。すなわち   d=Lψあるいはψ=d/L……A
の関係です。Lとrは図からLsinθ=r であって   L=r/sinθ    ……………B
 すると1秒当りのψはA,@およびBから
   ψ=d/L=rω0(rsinθ)
    =ω0 sinθ  ………………C
 すなわち、緯度θにおける地面の回転角速度ωは地球の自転角速度にsinθを乗じた角速度    ω=ω0 sinθ
として持つことがわかるでしょう。
  赤道上ではθ=0であり、地面の回転はゼロですが、極地Nではθ=π/2となって、地面は地球の自転と同じω0の角速度で回転していることがわかります。
   なお、物理学では角速度ベクトルを回転軸と平行な、つまり回転面と垂直な矢の向きと長さ(回転速さ)で表すことになっています。このベクトル表示による合成・分解の結果はもちろんベクトル計算法の結果に適合することがわかっています。
   図5

その算法によっても、緯度θにおける地面に平行な自転角速度ωは図5から
   ω=ω0 sinθ
と求められます。


MGP実験が示したのは
 図は先に説明した装置を模式的に示したものです。実験地での地球自転による地面の回転角速度はωだとしましょう。図6
 この実験装置が、エーテルに対して自転しているなら、互いに逆回りさせた光の到着に差がつくことになり、その距離の差は波の重なりでできる干渉縞のずれとなって現れるはずでした。

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 光の出発した瞬間にスプリッターのあった地点Pから互いに反対向きに進んだ光が一周して再会したのがQの位置だとします。その間にt秒が経過したとします。スプリッターはPからQへωtの角度だけ回転しています。
 PQ間距離は、半径Rに回転したラジアン角度ωtを乗じてRωtです。図によりますとPから左回転する光はスプリッターが左へωtだけ回転して逃げているためそれだけ余計に走り、右回転する光は同じだけ手前まで走ればよいことになります。
 つまり左回転の光の相対速度c1
   c1(2πRRωt)t  ……………@
 右回転は
   c 2(2πRRωt)t ……………A
 すると両光の速度差は
   cc1 c 2
   (2πRRωt2πRRωt)t
    2 Rω       ………………B
となって互いに2 Rωの速度差(相対速度)を生じることがわかります。
 地球の自転角速度をω0としますと、緯度θの実験地ではB式は
   c2 Rω= 2 Rω0 sinθ……C
となります。一周する両光の速度差はcということになります。これに一周に要した時間tを掛けたら両光の光路差がわかります。

 MGP実験の長方形を、大まかながら、円環に換算すると、その周長L=(600 300)×2 m1.8qが円環周長=2 πRであるとみなして
  R1.82 π q
とします。また光の一周時間tct=Lから
   t = Lc 秒
と得られます。光路差d
   d = tc(Lc) c
 これはC式により
   d = (Lc)×2 Rω0 sinθ
 地球の自転角速度ω0 は
      ω0 = .72×10−5ラジアン/
と知られていて、理科年表に載っています。一周2πを1日の秒数で除して確かめることができます。
 また、ずいぶんよい加減ながら、ここでθを45度くらいにしてやると
 d (1.8q/3×10q/sec)×2×(1.8q
     /2 π)×7.27×10−5×(1/√2)

 これを計算しますと
   d 1.768×1010q
   = 1.768×109×102  m
   = 176.8  nm (ナノメートル)
           (nm109mです)
と得られます。
 これは光の標準波長605.8 nmに対し0.29波長に相当します。ぼくたちは0.29波長のずれとして相対速度を観測すると予言することができます。これがこの実験による実測値と一致すれば、この理論――「光の相対速度は存在する」――は正しいとする確かな根拠となりましょう。
 
1925年のMGP実験によって得られた光路差は0.25波長の干渉縞のずれとして観測されました。われわれの計算の大雑把さからしますと、ほぼ一致したとして構わないでしょう。当時の新聞社たちはこれも相対論を証明するものだと、歪曲して報道しました。以後、この実験事実はそっと伏せられています。   
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マイケルソン=ゲイル=ピアソン実験風景
写真左からチャールズ・スタイン、トマス・オドンネル、フレッド・ピアソン、ヘンリー・ゲイル、
JH・バーディと従業員 (HISTORY OF PHYSICSより)

  研究室デスクに向かうAlbert A.Michelson   










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