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  不定期便 59号 01297日

質量重力場同一物(どういつぶつ)
 その2         ――12.7.27
 発行
012年9月7日
発行者
熊野宗治
  
 
質量は重力場であるか?   85

前回は電子とその電場の関係、その電場の動きがひき起こす磁場の誕生について考えた。電流が周りに円形磁場を生じるという一般的な認識から一歩踏み込んで、空間に及んでいる場同士がある関係を持って作用しあうものだという考えに及んだ。  電流、つまり物質の運動という概念から解き放たれて、場の相互作用として理解することを得られたと思う。

 「質量をなすものは重力場そのものであり、われわれは重力場の中心を質量として観測しているにすぎない」(第57号)

と不定期便第57号では結論した。

 結論を急がないほうがよいことはよく承知している。しかし、これから述べようとすることは、それを裏づけ、補強してくれるだろう。われわれはその証拠として、似たような現象を示すことができる。身近な実例からこれを考えてみようと思う。
  それは電場や磁場の例で、誰しも学校の初歩的な実験で体験されたことがあるであろう。両極である極(N極)と極(S極)を互いに近くに置けばからへ電場(磁場)が生じるらしいことを、電極をつけたアルミ箔に等電位線を描いたり、極を覆った紙面に砂鉄をまいたりして、実際にそれらしく並ぶことによって確かめることができた。

  

               図7
 これらの例から、場の極となる物体(物質)が存在するのをみる。これら極となる物質なしに磁場を構成することは可能であろうか? つまり、物質なしで場がつくれないだろうか?
 もし磁荷という極が場をつくるのだということが確かであるとすれば、場だけを生成しえたなら、極と場は同一物であることを示した

と言ってよいだろう。
 わたしは重力場が質量なしでできることを実験で確かめることが今はできない。しかし、いつかは学問の進歩によって、それは可能になるのではないかと想像している。
 

 無の空間に磁極をつくる  725

 これから、“空間に磁極をつくることができる”ことを確かめようと思う。 馬蹄形をした市販の磁石は容易に入手できるが、図のような馬蹄形をした鉄心に導線を巻いてコイルをつくり、両端を電池につないで電流を流せば、鉄心の端部を強力に磁化することができる。


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    不定期便  第59号

図8
 
 ただの鉄心の一部に磁荷をつくることができるのだ! 電池を外しても鉄には残留磁荷として磁気が残る。鉄という物質が磁荷をもつのである。磁性物質が存在してはじめて磁場が存在することを確かめることができた。
 次に企てるのは、鉄など磁性体なる物質を使わなくても磁場がつくれることを確かめることだ。そこでこんどはトイレットペーパーの巻き芯――これは非鉄で、電磁的には無の空間と同じである――のようなパイプに図9のように、導線を巻きつける。       図9

 そこへ電流を通すと磁界が生じ、磁針をその流れに向けさせるのをみる。
 その磁場断面は図10のようであろう。この磁場には、正真正銘、この磁場をつくっていると思われる磁性体なる物質は、どこにも存在しない。もっと疑り深い人のために、ペーパー芯を抜き去ってみせることもできよう。
図10

 

 まったくコイルが空間にあるだけで、磁界はそれを潜るように生じている。その様子として想像されることは、コイルの中心付近で磁場は大いに密集しているだろうことである。つまり、無の空間にも磁極が出現しうるということだ。
 重力場をこの磁場に倣うなら、磁場における磁極は、重力場における質量にあたることになる。無なる空間に質量が存在する。以上の簡単な実験から、すなわち、質量と重力場は同一物である、と類推するわけだ。そんな場を、どんな粒子も、他の粒子たちに分け与えられるはずがない。

宇宙の果て    725    

 
 宇宙の果てはどこだとよく人は問う。この実験を援用して磁場という宇宙について言うなら、なにやら図10のような、納豆藁苞わらづとのような形をして、遠い周辺にまで広がっているものだ。その果てというのは、その磁場の影響が他のいかなる物質にも、いかなる場にも及ばないほど、微弱になったところで、その滅小とともにその世界は消える、そんなところだろう。
 場の存在しない空間はその体積も寸法も意味がないし、存在しない。空間が「存在できない」というのではなく、空間は「存在しない」のだ。
 宇宙の果ても同様、重力場が微弱になって、ついに何者にも影響しなくなった半径のところで、その重力場の宇宙は終わる。その重力場の原因物質である原因質量からその半径相当の距離、つまりおよそ球体として、その質量はその宇宙をもっているだろう。それより外側については長さも運動もないのだから、空間としての意味はない。
 空間の意味をもち始めるのは、別なもう一つの質量がつくる宇宙が、互いに影響しあうことができるほど近づいたときに、二つはつながり、一つの宇宙になるのだろう。

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そのとき二つの間の距離(長さ)も意味を持つようになる。分子や原子や素粒子たちの世界もまた、そのように互いに結び合うところまで、出会いの手を伸ばしながら、無数の宇宙たちのつながった世界を形づくるのであろう。こうして絶えず変化してゆくものが宇宙である。そして、宇宙の果てとは、薄くなって消えてゆくものである。



   ※

コイルの導線の1本に陽電子が流れるとき、その電子に付随する電場は、その運動速度に応じて常に時計方向の磁場をつくることを前回の「電子はいかに磁場をつくるか」で確認した。その原理から、コイル内部にできる磁場の向きと外部にできるそれとは逆向きとなって、図10のような磁力線ができることが知られる。



















 
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