C 印刷用は      不定期便  第73号 
  不定期便 73 01355

     迷える物理学
      光速の解明――013.4.13
発行
2013.5月5日
発行者
熊野宗治
 
 前回は、考え得る光速の決め方の例をいろいろ見てきました。それぞれが自分の見方で論陣を張って、他の対象へ視点を移してみると、矛盾が生じてしまう、これらはみんな、自然法則としての普遍性が欠如しています。

これらの考察では、視点の置き方だけでその座標系を不変な光の速さの座標である、と前提していますが、重大な誤りがあるにちがいありません。正常な思考を辿っても、矛盾が生じることから、相対論が生まれたのを見ました。 

誤りを見つけ出す   4/13




光の素性

 われわれは地上に建物を建設し、その内部に実験室を作り、そこで光速を計測することができます。
 現在、基準とされているマイケルソンによる光速 はもちろん計測装置に対する速さです。ふかふかな宇宙空間ではないから、堅牢な実験台の上で計測できます。疑いもなく、少なくともこの装置は地球と同じだけの運動速度をもっているはずです。  であるのに、マイケルソンとモーレィが干渉計を用いて綿密に測った光速は地球の

   公転方向でも、その逆でも同じでした。
 ところで事実は、運動している発光体の放つ光速も同じく です。太陽光も人工の光も、宇宙のかなたなる恒星からくる光もみな cです。どんな星からくる光も、地球上の人間(計器)に対して不変に となるのでしょうか? それはなぜでしょうか。光の座標は地球だけに静止しているのでしょうか?
 先にも試みましたが、どれかの座標に決めようとすると、必ず矛盾が生じます。考えてみたどの座標も、光の座標ではないようです。アインシュタインならずとも、ええい、光速不変だ!と言ってしまいたくなりますが、ここでやけを起こしては、やれ時間がちがうの、動いたら縮むのと、妄想の底なし沼にはまり込んでゆくところです。
 一般社会の風評、いや科学者間の定説というマインドコントロールから解かれ、神の示唆する矛盾のない法則に気づくときはあるでしょうか。
 われわれは学者の定説にこだわらないで、光の本来の素性から見直してみましょう。すると以前の号で考慮してみたように、親愛なる諸君、ぼくたちは幸運にも、その恵みに預かることができそうなんですね。われわれは第49号で見たように、それまでとはちがう見方で光の持つ本当の(とわたしは確信する)法則を見つけ、いや、与えられます。それは起こっていたあらゆる矛盾を見事に霧消させます。


エーテルとはこういうことだ
 諸君、今のわれわれの考えはこうなりましょう。
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 つまり、音が空気分子たちの振動であったように、光は電磁場の振動なのです。電磁場の振動である電磁波は電場と磁場の相互作用です。つまりは、
 光の座標は地球や列車や飛行機などの中のどれか一つではなく、磁場・電場・重力場などの一つである、

ということにならないでしょうか。これこそが自然の性質が起こしている自然法則に違いありません。
 これが正しいなら初めて、光の座標が絶対的に決まります。あとはこの光に対してあらゆる物体がそれぞれどんな速度を持っているかというだけの話です。列車が動いているのか、地面が動いているのかは、相対論の曖昧でなく、明確に規定できることになります。
 われわれは相対論が解き得なかった光の謎を解いただけでなく、物質たちの絶対静止座標をさえ解明しそうな状況にあります。われわれを疑惑解明に駆り立ててくれたアインシュタイン博士に感謝すべきでしょう。
 光は電場や磁場の中で(音なら空気中で)それらを相互変換(空気分子たちの衝突)しながら走る。電場も磁場も重力場も、性質のよく似た“場” (わたしはこれらを“物質場”と称している)である。物理学者が勝手に定義してよいことではなかったのです。
 光は結局、重力場の中を光速 c で走り、マイケルソン干渉計をそのとき蔽っていた光のエーテルとは重力場であって、そのほとんどはその計器が据えられていた地球からのものだったのです。すなわち光の媒質は重力場という物質場なのです。マイケルソンらの実験結果は当然だったのです。
 エーテルなる重力場はそのとき、ぴたりと地球に静止していたわけですから。

  

  その後ろ盾とは 

さて、そうとなると、この新しい捉え方は正しいのかを確認したくなります。この新しい考え方がほんとうに正しいものであるなら、それを証拠立てる実験を示すことが必要です。なのになぜ実験施設を持たないぼくらがこれほどの確信を持ってそれで正しいと言えるか、といえば、新しく実験を成功させるのと同等の後ろ盾がぼくたちにはあるからです。相対論構築に口実を与えてしまったA・マイケルソンその人が、そののち光は必ずしも一定の速さcをもつのではなく、エーテルに対してυで運動する者には c±υという相対速度を見せることを示す実験――わたしがMGP実験と呼んでいる――を1925年に成功させているのです。その実験については50号で触れました。簡単に振り返りましょう。

 MGP実験はエーテルの存在を確かめるために、マイケルソン=ゲイル=ピアソンらによって米国イリノイ州で行われました。図1がその大要です。

M・G・P実験

図1

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MGP実験の要点
 図2は空気の抜かれたチューブを半径Rの円環状に組んで水平にしっかり地面に固定してあります。実際には図1に示すような実験ですが、理解の容易のために、円環に見立ててみましょう。

 この円環は地球自転と共に回転しているでしょうか。
 回転しています。ただし地球と同じ24時間に1回転ではありません。その施設が存在する緯度θにおける地面の回転角速度ωは地球の自転角速度ω0sinθを乗じた角速度
   ω=ω0 sinθ
として持っています(詳細は50号を参照)。


MGP実験で分かったこと
 地球自転による実験地での地面の回転角速度がωのとき、この実験装置が、エーテル 図3
   に対して自転しているなら、互いに逆回りさせた光の到着に差がつくことになり、その距離の差は波の重なりでできる干渉縞のずれとなって現れるはず。
 
PQ間距離は、半径Rt秒間に回転したラジアン角度ωtを乗じてRωtです。Pから左回転する光はスプリッターが左へωtだけ回転して逃げているためそれだけ余計に走り、右回転する光は同じだけ手前まで走ればよいことになります。

 つまり左回転の光の相対速度c1
  c1(2πRRωt)t  ……………@
 右回転は
  c 2(2πRRωt)t ……………A
 すると両光の速度差は@、Aの差
  c 2 Rω      ………………B
となって互いに2 Rωの速度差(相対速度)を生じることがわかります。
 緯度θの実験地では
  c2 Rω= 2 Rω0 sinθ ……C

となります。一周する両光の速度差はcということになります。これに一周に要した時間tを掛けたら両光の光路差がわかります。
 MGP実験の長方形を、円環に換算すると、その半径は約
   R1.82 π q
 また光の一周時間t
   t = Lc 秒
と与えられ、光路差d
  d = (Lc)×2 Rω0 sinθ
  知られている地球の自転角速度 ω0= .72×10−5ラジアン/秒 を入れて計算すると、d
  d 176.8  nm (ナノメートル)
            (nm109mです)
と得られます。このずれは光の標準波長605.8 nmに対し0.29波長に相当します。ぼくたちは

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0.29波長のずれとして相対速度を観測すると予言することができます。
 1925年のMGP実験によって得られた光路差は0.25波長の干渉縞のずれとして観測されました。われわれの計算の大雑把さからしますと、ほぼ一致したとして構わないでしょう。



実験が示したエーテル

 
 以上の実験はあらゆる疑問に解決を与えるでありましょう。詳しくは次回に考慮してみようと思いますが、およそ以下の件が解決されましょう。


光はどこを走るか(エーテル問題)について
@ 光は、何に対して光速cをもつか?

A 列車中での光速問題

B 光速不変の原理は正しいか?

C フィゾーの水流実験で、なぜ水流の正逆方向の各光は速度差をみせたか?

 

絶対座標問題について

D 光の絶対座標はあるか?

E 地上の観測で、星灯りのドプラー効果を観測するか?

F 慣性系は実在するか?

G 宇宙のどこかに絶対静止空間は存在するか?

   
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