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印刷用は 不定期便 第77号 |
不定期便 第77号 013年7月18日
物理学の別見 4
光速の謎に答える 2
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発行
2013年7月18日
発行者
熊野宗治 |
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・8・ フィゾー*の水流実験で、なぜ水流の正逆方向の各光は速度差をみせたか?
水流をつくっている水の質量は重力場に比べ微量なものだから、光速の第2法則によっても流速が光速に与える影響はない、と考えられるかもしれません。たしかに実験に用いられる質量は数百グラムほどに過ぎないかもしれませんが、光路に極めて接近もしくは一致しているもので、その距離はゼロに近く、1/r2という距離効果が無視できないほどの影響を与えると見るべきでしょう。
それゆえ流速υの水流は、水分子たちのつくる場の運動速度によって光速に相対速度
(υに比
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*アルマン・イッポリート・ルイ・フィゾー
(Armand
Hippolyte Louis Fizeau, 1819−1896)
フランスの物理学者
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フィゾーの実験
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例するような)を生じさせましょう。流水中を進む光の速さはc±υではないにしろ、水流の影響が見られて不思議でありません。
“絶対空間”問題について
・9・ 慣性系は実在するか?
宇宙空間のごく狭い範囲にのみ存在しますが、その数は無数に存在します。第39号に述べた例を思い浮かべられたい。
図
質量A,B,Cの間に無重力点 G,Q,…がある
慣性系とは、その空間内のあらゆる物体から及ぶ重力場ベクトルの総和がゼロである空間であって、自らも加速していない空間であると定義されましょよう。したがってそこでは、そこに静止する質量に、慣性加速度を生じさせません。
無数に存在するであろう狭いその範囲以外の空間は、慣性系ではないのです。ただし、慣性加速度の存在しない空間であっても、それぞれの慣性系において、必ずしも光速は不変なcであるとは限りません。
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不定期便 第77号
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・10・ 絶対静止空間は存在するか?
物理現象はいかなる座標で記述すべきでしょうか。最も基本的で最もシンプルなのは絶対静止座標においてでしょう。この座標においては、光速はどの方向でもcです。その空間はその一瞬ごとに存在します。ですから、宇宙全体にわたる唯一の絶対静止空間というものは存在しません。
しかし限られた大きな宇宙空間においては、質量mを持ってその絶対静止空間の座標上を動くものは、おそらく この座標での運動量mυあるいは運動エネルギー(1/2)mυ2 を持ち、これらはその質量が存在する有限な全空間に対してもつ絶対量としてよいでしょう。
・11・ 光の絶対座標はあるか?
広い宇宙空間に唯一の絶対(静止)座標があるか?という意味なら、存在しません。しかし、空間の任意な点の近傍で光の静止座標はその空間の瞬間ごとに存在します。
とはいえ、十分に空疎な空間においては、ある狭くない範囲に亘り、長い時間に亘って安定した静止座標は存在しうるはずです。例えば地球の公転軌道上でも、地球から十分離れた空間や惑星から離れた空間では、巨大な、そして太陽系の大部分を覆いつくす太陽質量の場に対し静止する空間は光の絶対静止座標とみなしてよいでしょう。それでも実は絶対静止ではありまぜん。太陽もまた、動いているであろう銀河系宇宙の一員なのですから。
・12・ 絶対静止座標は慣性系か?
絶対静止座標は必ずしも慣性座標(無重力空間)ではありません。物体が絶対静止座標にある――周りの重力場運動速度の総和と同じ速度である――なら、この座標に静止する物体は
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動き出さないか? つまり、この物体に加速度が働かないか?といえば、必ずしもそうではないのです。座標が静止座標としての、場の運動速度の和V0=(狽fmiυi /ri2 )/(狽fmi/ri2)=0であるからといって、その座標での重力場たちの和
g=煤iGmi)r0/ri2
(r0はri方向の単位ベクトル)
が必ずしもゼロ、つまり、全宇宙の重力場の中心たることを保障されていません。すなわち、
と定義するなら
であるのが通常です。左辺は重力場運動速度=0、右辺は加速度ベクトル総和=0を意味しています。場の運動速度がゼロであっても、その場に存在する重力場ベクトルの総和がゼロになるとは限りません。(実例で言えば、前75号図2で、Qでの静止座標は無重力だが、Pでの静止座標は明らかに地球側への加速度がある) それゆえ、光の絶対座標はその瞬間瞬間に変動しています。宇宙空間の1点で、永久不変ではありえないわけです。
・13・ 地上の観測で、星灯りのドプラー効果は観測されるか?
観測されます。地上で静止する空間は重力場に対して静止しているので光の静止座標としてよいことが分かりました。宇宙のかなたから来る様々な状況から生じた光は、地球重力場に到達した時点で、すべては地上に対してcという光速になっています。
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全方向で等しい光速となる空間でドプラー効果が生じるか?という疑問が起こるかもしれません
しかし、ドプラー効果は広大な宇宙を進んできた間に、また最後にはわが銀河系の持つ運動速度あるいは発光したときの星の運動速度により生じたドプラー効果(波長の偏移)として蓄積されたまま地上に届いています。
・14・ 太陽重力場による光の場へのレンズ効果は存在するか?
存在します。光速は重力場の密度によって一定ではないと見込まれます。 6 の6.2式で決まるとすれば、太陽の近傍ほどcの値は小さくなり、大気中の夕日のように曲がるでしょう。光は密度の大きいほう(レンズの厚みの厚いほう)へ曲がり、レンズ効果となって現れることになります。
従って諸君、レンズ効果は相対論に言う空間の曲がり(数式的空想論)によるのではありません。自然の法則つまり、重力場と電磁場の相互性質によって決まるとするのがまともでありましょう。
・15・ 物体の運動速度が光速を超えることはありえるか?
われわれの定義によりますと、宇宙のある空間の運動速度(重力場の)――この速度と同じ速度で動く座標(空間)は静止座標である――は、あらゆる物体の場の速度の合成ですから、この合成速度が彼ら物体のいずれよりも速くなって現れることはあり得ません。しかし、合成速度よりも大きい速度を持つ物体はもちろん存在しえます。その物体にさらに加速する力が加えられたら、真空で無抵抗な空間で、いかなる支障もなく加速されます。その限界はなく、光速を超えることはありえます。
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少なくとも、シンクロトロンによりますと、粒子同士の正面衝突により、光速にほとんど等しいc−εという速度を持つ素粒子を造りだすことができます。これを地球の公転速度υ方向へ打ち出せば、c−ε+υとなって、光速を超えることは可能でしょう。
2002年に小柴昌俊氏がノーベル賞を受賞する基となった1987年の観測によりますと、超新星爆発によるニュートリノが大マゼラン星雲SN1987Aから、16万年かけてはるばる岐阜県神岡町の大型施設スーパーカミオカンデまでの距離を走って光よりも先に届いたといいます。その事実に間違いないなら、この粒子の出発時速度は、光速より大きい速度であったに違いありません。
・16・ 座標間変換はローレンツ変換、ガリレイ変換のどちらが正しいか?
ガリレイ変換で正しいです。マイケルソンによる光速不変は、光速の法則(光は物質場に対してcで伝わる)の下で観測されたものです。この理解によれば、物体ごとに時間が違うとか、運動する物は縮む、といった仮定をしなくても、何の不思議もなく納得できるものです。
ぼくたちは、ぼくたちの新しい考え方によってガリレイ変換(常識論)のほうが正しく、ローレンツ変換(観念論――列車の運行ダイヤグラムのような傾けた図表を用いて、時間を変えたり、寸法を変えることに苦心している――)は実際論的にみて不適切であるとしか思えません。
実験の要請
・17・ 光速の法則は実験で検証できるか?
マイケルソン干渉計が地上でなく、宇宙空間で例えば太陽周りの公転軌道上を運動しながら光速を観測するとき、
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干渉計がその運動方向に対しいろいろな方向をとるときの光の相対速度を観測するだろうか?すなわち、干渉計の向きによって異なる光速値を計測することができれば、光速に関する新しい見解は明確に正しいと判断されるでしょう。現在の宇宙技術によって、これを実行してみようという気持しだいで、完全に可能です。これに必要なのは世論の後押しと資金です。
世界の科学史上最も重要な実験です。この検証によって、人類が先へ進める物理学としてどちらの物理学を採るべきかを、明確に示すものだからです。
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