R 印刷用は        不定期便  第101号
   
 
不定期便 101   2014 818

     物質構造超伝導
発行
2014年8月18日
発行者
熊野宗治
 
     

天邪鬼(あまのじゃく)(りよく)のメカニズム
                
014/6/18






超伝導のマイスナー効果
 超伝導の実例として、リニアモーターカーについて見てみようと思う。近年、磁界の中で超伝導物質が宙に浮くという報告を目にされているだろう。

 これは“マイスナー効果”と呼ばれ、磁力線は超伝導物質内に入りこめないで反発されるため、バネのように撥ね返されるからである、と説明される。

    

浮き磁石の実験   D.Shoenberg:

Superconductivity,Cambridge Univ.Press1960 より
 (写真は棒磁石が超伝導状態になっている鉛の椀の上に浮いている。椀は白く塗られ、立体感を出すため線が引かれている。説明では、磁力線が超伝導状態の椀に入ることができないから、磁力線の張力で磁石が宙に浮くとしている。)

  だが超伝導物質には去ろうとする磁場を引き止めようとする作用もある。このことについても、説明になるだろうか。
    わたしは自然の天邪鬼性のおこすメカニズムを以下のように解釈したい。



電磁気の不思議
 
 前に第23号で『電磁気の不思議』として、レンツの法則を図解してみたことがある。(そのときの図には一部誤りがあり、正しました)
 図は導電線をまるく閉じたリングOに対し直角の向きに、磁石の磁場が対している。





 場面@  リングに磁石N極が接近してくるとき、リングに何が起こるだろうか。このとき、次ページ図1から想像できることは、リングの円の内部を貫通している磁力線の数はしだいに増加するだろう。すると現実に起こることは、リングは近づくN極を押し戻すような磁場をつくろうとする。これはあたかも生物のような謎めいた性質であるが、これが知られるところのレンツ(Lenz)の法則だ。
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図1

いまリングの右側からリング面に垂直な向きで磁石が近づいている。質量を有するリングは慣性つまり静止を続けようとする性質を持っている。すると知られるところでは、リング導線内に電流が発生し、その発生した電流はN極が接近(N極磁束密度の増加)してくることに反抗する向きの磁場を発生させる。つまりその磁場は図の右向き(磁石へ向かう向き)となる。これは反磁場と呼ばれる。(磁力線の向きはNを出てSへ向かうことになっている)
 右ネジを右(発生する誘導磁界の向き)へ進めるときにドライバーを廻すべき回転方向に、リング内電流が発生するわけだ。すなわち電流の向きは磁石に向かって右廻り、図のiの向きである。

 するとさらに、そのリング内電流はその電流が流れる導線の周りに導線を取り巻くような磁場を発生させる(図では小さい円を描くNで表わしてある)。この磁場の向きは右回り(電流iの向きにネジを進めるためにドライバーをまわす向き)である。これはエルステッドが発見した電流の磁気作用の法則だ。
 その結果図から分かるとおり、円内の全体で、磁石の近づこうとするN極に反発する向きになる。これが天邪鬼なる電磁誘導の法則、すなわちレンツの法則である。
  このときリングには圧し縮められるような力を受けることを思い出すには、23号をお読みくだされたい。

    場面A こんどは磁石のN極が図2のように遠ざかろうとする場合はどうか。

この場合にも誘導電流は生じ、面白いことに、こんどは減少しつつある磁束を引きとめ、磁石の去るのを引きとめようとする向きに働くのだ。

すなわちコイルは相手Nに対しS極をつくろうとして、磁石へ向かって左廻りの電流が発生する。あるいは磁石の左向きの磁束密度が減らされるとき、この磁束を補おうとする向きに電流が生じる、と見てもよいかもしれない。
 磁場状態を変えまいとするこれも自然が持つ性質である。その結果リングは引かれて、図では右への加速を受ける。
 導線を流れる電流の方向へネジを進めるために廻す向きに、電流を取り巻くような磁界ができる。

 するとその磁界はリング内では左向きで貫通する。つまりその磁束密度はリング円内で高まる。リングはその結果内側から外側に拡張させる向きの力をうける。


 場面B つぎに、磁石のS極側が接近するときはどうか。

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 リング内に磁石がつくっている磁束の向きは図で右向きである。
 
           図3

 リングは近づいてくる磁石のS極に対抗して磁石の側へS極をつくろうとし、左向きの磁界をつくるだろう。導線に発生する電流の向きは@とは逆になる。近づく磁石に反発しリングはその反力をうけ左への加速をうける。リングに作用する力は@の場合と同じである。



 場面C 最後に、磁石のS極側が遠ざかるときはどうか。リング内に磁石がつくっている磁束の向きはBと同様、右向きだ。
  
 
                図4

後退しつつあるS極を引きとめようとして、コイルは相手Sに対してN極をつくろうとする向きの電流を発生させるだろう。

   リング円の内側で右向きの磁界をつくることになる。導線に発生する電流の向きはBとは逆となる。リングに作用する力はAと同様で、遠ざかる磁石を引き戻そうとし、リングはその反力をうけ右方への加速をうけよう。天邪鬼のような押せば押し返し、引けば引き戻そうとする電磁気のおもしろい性質を見てきた。

 なお、「マイスナー効果Meissner effect」は現在以下のようにされている。
 《超伝導体が持つ性質の1つであり、永久電流の磁場が外部磁場に重なり合って超伝導体内部の正味の磁束密度をゼロにする現象である。マイスナー-オクセンフェルト効果、あるいは完全反磁性(Perfect diamagnetism)とも呼ばれる。》              (ウィキペディア)

わたしもそのような理解に同意見だ。

物体間に働く力    014/6/18

 
――磁気浮上
 Superconducting Magnetic Levitation Railway (超伝導磁気浮上 リニアモーターカー)、JR通称「超電導リニア」について調べてみた。JR記事では「超電導」と「電」の字を用いている。


磁気浮上式 超電導リニア MLX01-2
試験走行として世界最高の581km/hを記録している
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 原理は先ほど考えた電磁誘導に関するレンツの法則の示す、自然の天邪鬼性を利用して列車を空中に浮かし、これに推進力を加えて運行するものである。
  磁場勾配の中で勾配に逆らって物が動こうとするとき、磁場は近づこうとするものは寄せ付けまいとし、去ろうとするものは引き止めようとする性質がある。自然の物理現象の中でこれほど面白い性質は他に類を見ない。人間が物質でできている以上、人が物事につねに反抗的であるのは自然の性質からすると、ごく自然な成り行きであるのかもしれない


電磁場の天邪鬼(あまのじゃく)

 意外に思う人がいるかもしれないが、反磁場の発生はコイルの形状に対してしか起こらないという理由はない。

 原子のレベルまで考慮すると、輪の形ではなく平板や立体的空間にさえ起こりうることなのだ。つまりそれが、電流を流さない非金属、たとえばガラス玉にだって起こる。それはその物質原子を構成する電子や陽子のスピンによるものであろう。

         ガラスが強力な磁場によって浮いている

 ガラス玉が磁場への接近・離遠という位置エネルギーの減少や増加を起こそうとするとき、不変則を保つように電子や陽子の運動エネルギーの増加・減少となって、コイルと同理に外磁場の変化に逆らう誘導磁場を生じ、それが反発力や吸引力という形で働くからである。

   したがってその電磁誘導は玉が落ちようとするのに反発するだけでなく、われわれがガラス玉を取り除こうとすることにも反抗して、引きつけて保とうとするのだ。磁場を強めてゆけばガラス玉同様、米粒や生きたカエルをさえ空中に浮かせることができるのだ。物体の引っ張り強度や圧縮強度の起源であるのかもしれない。
 未来にはUFOエンジンの原理として利用されるかもしれない。


   浮かぶ米粒


宙に浮く生きたカエル  Bitter電磁石(Bitter electromagnet)約16Tによる 。オランダ・ナイメーヘンの High Field Magnet Laboratoryから。

原理が分かったところで、列車の磁気浮上について考えてみよう。しかし、長くなるので次回に。


  


     

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