R 印刷用は       不定期便  第93号
   
     不定期便 93 014416

 勉学と社会 

発行
2014年4月16日
発行者
熊野宗治
 
今回は、前々回にIさんからいただいたお手紙へのご返事を考えてみることにします。また、不定期便の前号発送と入れちがいに、米ハーバード大学からご返礼を頂戴しました。末尾に添えます。


わたしにとって“数学”は

 じつは私も、わたしは脳が老化する以前から、数学は得意でも好きでもありません。(中略) 
 数学は便利で、たとえば微分した導関数がやはり変化率を持ち、その変化率の変化率も同じ…というように、一階上の変化率がやはり同様な本体になるという便利な自然数eχがあります。三角関数についても、正弦の微分が余弦になり、余弦の微分が正弦にと交互に入れ替わります。これも数学が見つけたものと言えるでしょう。

 運動方程式をこのような波動関数として与えておけば、困難な微分や積分が容易になります。しかし、自然界の現象を波動方程式で与えたものは、正しく自然の動きを表わしているかと言えば怪しいものですね。これらは単純な統計力学であって、粒子間で互いに及ぼしあう分子間力がどうなるのか、互いがどんな場の作用をし合うのか、その粒子がいまどこにあるのかは、まったく考慮されておりません。
  ですから、方程式を変形していって、これに物理的な解釈を加えるという方法は、必ずしも自然を正しく理解したと同じであるとはいえないとわたしは考えているんです。


       
  

ビッグバンには
     たくさんの矛盾が 

ところで、120億光年の遠い星からの光はどのような経路を経てきたのか、と私が問いましたのは次のような事実があるからです。
 
2005年2月18日の朝日新聞に、《127億光年かなたの生れて間もない銀河団がハワイチームによって観測された》というニュースが出ました。以下は、『光速の背景』から引用します。

――《すばる望遠鏡を用いてハワイチームが、02〜03にかけて観測、くじら座方角127億光年かなたに、(質量100分の1からすれば)生れて間もない銀河団が見つかった。「赤く光る6つの銀河が直径300万光年の狭い範囲に集まる」という。
 国立天文台や東京大などのチームが2月17日発表。宇宙年齢137億歳とするのが有力とされ、そうすると、「宇宙誕生から約10億年後の(若い)姿を捉えていることになる」》
 という記事になっていた。これはどうも宇宙のビッグバン起源説に基づくらしく、宇宙年齢137億歳とすれば、127億光年の遠くにあるものは、宇宙誕生約10億年にして誕生した、今では年配者というわけらしい。

 
すると、妙なことになる。この考え方からして、いまだに天動説と変りがなく、宇宙の中心は地球であるかのようだ。宇宙年齢が137億歳だとすると、光速で膨張したとしても、宇宙の半径は精々137億光年である。発見された星が宇宙誕生10億年後の古い星だとして、誕生間もないとすると、127億年前に誕生し、そのとき、地球から127億光年も遠い彼方で生れたことになる。

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つまり、宇宙が誕生したころ、すでに現在の宇宙の端ふきんで、この銀河団は生れたことになる(現在図参照)。

これは宇宙のビッグバン説に、真っ向に矛盾する。127億年後に知った、「誕生間もない銀河」だとすれば、ビッグバンによってではなく、その中心から127億光年も遠い場所で誕生したとしなければ辻褄が合わない。つまるところ、宇宙はビッグバンによるどころか、宇宙のどこででも一様に誕生しうることになる。――


アインシュタインは「光は光子である」とする。すると銀河団Aから出た光が127億年の旅をしてf1ff,・・・fの光子群として私たちの望遠鏡まで到達した。光の出発時現在、銀河団から宇宙の果てまで約10億光年である。
 これが新聞記事に出た内容であろう。光子は127億年まえに星から出発したのである。
 ビッグバンが正しいとすれば、127億年前に光を放ったときの星たちの位置はaあたりであろう。光子はどのような道筋を経てきたであろうか?

わたしがビッグバンを素直に受け容れることができないのは上記のことがその1つです。観測された光は霧のような光ではなく、銀河団の姿が明瞭に像を結んでいるわけです。127億年前の銀河団の実体から出発した光を望遠鏡の像として見ているわけです。

貴兄は120億年前から現代まで、ビッグバン初期にその星から光が出発したときの状態から現在までの

   図を、光がどこまで進んでいるかを含め1億年毎のコマ送りでキネマを描くことができますか? 

ひとコマ目   ビッグバン初期(120億年前)


 現実に起こったことなら、それが描けるはずであると石田さんもお思いになるでしょう? 1億年毎が大変でしたら、10億年毎でも結構です。私には描けません。実際にそのキネマが描けましたらぜひ拝見したいです。

最終コマ   現在

 わたしたちの「光速の法則」は第49号に詳しく考察しましたので 差し上げてみます。その明確な根拠となるMGP実験とはどういうものかについては第50号、73号で詳述しましたのでこれも差し上げてみます。

             

 ビッグバン理論に言う、宇宙の等質膨張によって(赤方偏移の原因とされた)ドプラー効果が生じるというはずはない、ことを69号で述べました。(55号、76号もご参照を)
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 わたしは物理をなるべく数式を用いない方法で理解したいと考えています。正直申しまして、フリードマンの方程式というものを学んでもいませんし、学びたいと思ったこともありません。空想ごとを数理論化することは危ないと思うんです。

 また、アインシュタインの宇宙方程式というものを(一般に言われるように)“美しい”と思ったことは一度もありません。

 これまでにも、物理論をお話していて、難しいと言われました。それは、一般には学業を終えたのちに数式に接する機会が少なく、また必要もないため、なにかの数式らしいものを目にしたとたんに、すぐさま「難解」と感じるためであろうと思うようになりました。それで、説明のできる限りは数式でなく図と言葉を用いて記述するように心がけています。実際、物理の正確な定量を求める必要がない限り、自然現象を言葉で表現しようとしているわけですが、そのほうがより正確に自然の成り立ちを理解できるように思うからです。

 保管依頼その

 

小生の原稿『光速の背景』を2014年3月14日、私の国のほか、海外の4大学に保管を依頼しました。あの保管依頼に賜った もてなしの一例をご披露しましょう。

4月1日に頂戴しましたハーバード大学学長さまからのお手紙は次のようです。

   

Dear Muneharu Yuya:

Thank you for your recent letter and for sending the university copies of your work. We very much appreciate your thoughtfulness and wish you all the best with the book’s publication.

Sincerely,
Drew Faust
Drew Gilpin Faust

 
 
 小生の翻訳に間違いなければ、これを
 《近日のお手紙、それから御著書の写しを大学あてお送りいただき、有難うございます。私たちはあなたの深い考察を大変高く評価し、出版で最善に全うされることを願っています》(合ってましょうか? )
と解釈して、喜んでいるしだいですが…







筑波の桜  2012412日撮影

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