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第1章 輝かしい発見









第1章 輝かしい発見  発見史にみる発見のありよう








1.人類の歩みと古代哲学

 神は人類に、なぜこうも驚異的な可能性を与え給うたのであろう。わたしは人類が“科学的な”見方・考え方をするようになったのは紀元前280年ぐらいからではないかと思っている。いま“科学的な”と呼んだのは、真に自然の起こす現象の説明、したがって実証主義的思索を指している。それゆえ、それ以前のことをわたしは古代と呼び、これから順次、科学的発見例を見てゆくに先立って、きわめて大雑把ながら、人類文明のなるべく初期のものから、その古代を諸君とともに見直しておこうと思う。
 古代の人々が歩んできた足蹟は人類の過去からずっと続いてきて、われわれの時代をわれわれが歩み、そこから先へも続いてゆくことになる。その足蹟は次のことを教えてくれるだろう。人はこれまで何が与えられ、何を望み、何を得てそれが何をもたらしたか、自然の力をどのように受け止めどのように利用してきたか、ならびに、人類の進歩はこの先どのような性質をもとうとしつつあるかを。


 人類の歩み

 紀元前7000年頃、氷河が後退したあとの北西ヨーロッパの森林で、人類はフリント石製の鏃(やじり)を樹脂で装着した矢と、赤鹿の頭骨と角を加工した銛(もり)によって、赤鹿などの猟をして暮らしていた。それらの猟具や頭骨が出土されている。
 紀元前6000年頃のメソポタミア北部の村ではもう、日干し煉瓦で
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