光速の背景   95
次ページ

第4章 未来への道
偏移則)」であった。

 絶対静止空間がきまる

ほんとうにどちらが動いていると見てもいいのか?
 系全体は静止していると言えるだろうか? これまでに絶対静止空間は不明である、あるいは存在しないものとされてきた。もちろんアインシュタインも絶対静止空間はないと言明している。しかし「光の重力場法則」はそれを明確に示してくれるだろう。そのことに触れようと思う。
 相対論の出発点であるA,B、2つの相対運動が、“どちらから見ても同じ”()()ない(ヽヽ)ことをまず見よう。運動について考えるとき、われわれは普段、二つの間で互いに、ある距離をおいて考えている。相手が近づいているか遠ざかっているか? また、相手から何らかの影響を受けているか? もちろん、相手と渡しあった縄を引いたり、棒で押し合ったりして力を伝え、互いに作用しあうことができるし、あるいは単独に、微細粒子を噴射する反力を利用して加速したり止まったりすることができる。これらは基礎的な力学で理解できる。ところが、縄とか棒といった固体を介さなくても、互いに作用しあう多様な加速度というものがある。その、質量に対して働くものが重力の加速度、磁性体や荷電体に対して働くものが磁界の加速度や電界の加速度として存在する。そのほかにも存在するかもしれない。
 これらは物体に働いて物体の運動速度を変化させ、すなわち加速度運動を行なわせる。しかもその物体は、自己がそういう作用をうけるだけでなく、他へもその作用を振りまいている。その振りまかれた反作用そのものが、ニュートンの第三法則のとおり、その物体が他から及ぼされた物質場というものの作用と等価なのである。
 それらの関係を視覚的に捉えてみよう。われわれは三次元の世界に住むが、イメージしやすい二次元世界の物体として考慮してみる。すなわち、地面の凹凸のような曲面を考え、下方に重力をうけている状態を想定する。するとこの場合、重力は三次元目に相当するが、凹凸の斜面上にある玉は面上を転がり、二次元の上で運動を行なう。斜面のために重力から生じる水平分力をもって、二次元上の加速度と翻訳することにする。
 幾重にも重なる、なだらかな丘陵が連なる風景のなかで、われわれが凹み――テント地を押せばできるような――をつくる玉となって転がっているとしよう。もしもじっとしていようとすると、傾斜のほうへ転がってしまう。そうならないように等高線に沿う速度を与えてもらったとしても、しだいに方向を変えられ、低いほうへ向かうだろう。いちばん低い谷のところを惰性によって越えると、次の山へ駆け登るが、やがて登る力を失い、ふたたび谷へ向かうだろう。そういうことを繰り返し、蛇行しながら進むにちがいない。谷川を下る流れのように、蛇行しながら下流へと流れてゆく。しかし、われわれが水とちがうのは、起伏をさまようわれわれ自身が小さな凹みをつくっていることだ。そのわれわれによる凹みが、われわれよりもさらに小さい谷たちを、われわれの褶曲に沿わせて、やはり蛇行させている。 重層する山々の低いほうへ蛇行しながら、小さな谷の原因者たちが惰性をもって運動している。その小さな凹みたちは、運動しながらも大きな谷を形成する一員として、わずかに起伏を変えることに参画している。同じように三次元宇宙での二人旅を考えると、さっきの蛇行というのは、らせんという三方向の運動となり、さっきの山間の低いところというのは、三次元空間では重力場の大きいところ、ということになる。二人旅の二人は相互に凹み合いうことで離れず、また互いに円運動を形づくって個々の
  95 次ページ