光速の背景  128
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第5章 未来へなにを遺すのか
 4、未来へ継ぐ 

まだ分からないことがこんなに

 謎に満ちた超伝導の世界を、さきほど覗いてみた。物理に関し、近年になってもますます分からないことが増してきている。思いつく限りでも次のようなことがある。

○ 光は写真乾板を感光させるが、それは光が物質の分子構造を化学的に組み替えることであろう。植物の葉が光合成を行なうのも同様であろう。光はいかにして分子構造を組み替えるのであろうか。
○ 物体はいかにしてその形を保持しているのか。
○ 磁場や電場はいかにして力場としての作用をするのか。
○ そもそも重力場や磁場の正体はなにか! なぜ生じているのか?
○ 磁極(磁場)は何によって、なぜ生まれたか。
○ 電荷はいかにして生じたか。
○ 重力場(質量)はなぜ、いかにして生まれたか。
○ 質量が重力場をつくり出すメカニズムは?
○ 1ミリ平方あたり500㎏もの張力をもつPAN系炭素繊維が市販されている。この張力はいかなるメカニズムから生じているか。

 ちなみに、およその値で言えば、大気を引きつけている重力(1気圧)は1㎝平方あたり0.001トン。地上の地耐力は1㎝平方あたり0.0005トン。鉄筋の引っ張り耐力、1㎝平方あたり6トン。炭素繊維の引っ張り耐力、1㎝平方あたり50トンである。これらを加速度に換算すれば――質量m㎏に働く重力をm㎏・Gとし、たとえば鉄筋応力が加速度αを作用しうるとしてmα=F=6×103kgGからα=6×103Gとする計算法によれば――
 重力の加速度はG=980/sec2  (どんな大きな質量でも)
  鉄筋の加速度6000G  (断面1平方㌢のもので 1㎏の物体を重力の6000倍早く加速)
 炭素繊維の加速度50000G  (同5万倍早く加速)
 地耐力は0.5G  (2平方㌢の地面で1㎏の物を載せ得る)

ということになる。炭素繊維の耐力の加速度は重力の加速度の5万倍も大きいということになる。 そして、地球の重力の加速度は上空に行くほどに、地下へもぐるほどに減少してゆき、地上のGで最大と思ってよいだろう。その5万倍をこす分子間結合力がいかに強大なものであるかがわかる。この分子間結合力は接近しての力であるが、原子サイズの世界でも、重力と分子間引力とはこの比であることを示していよう。この近接力を示す〝場〟が存在するはずである。この近接力は、あとわずか離れるだけで、急激にその力を失うのである!
 超伝導の世界における電子運動の抵抗のなさを宇宙空間でわたしは想像してみる。地球の成層圏を離れた宇宙空間を、なにかの天体が走り抜けているとする。もしそれが地球からの脱出速度に満たない速さであれば、いずれは地球へ落下するか周りを回り、脱出速度である第一宇宙速度をもっていれば、月のように地球の周りを回りつづけるだろう。もしそれが第二宇宙速度をもっていれば、太陽の周りの地球のように太陽の周りを回りつづけるだろう。第三宇宙速度をもっていれば、太陽系からも脱出して広い宇宙へ飛び去るであろう。それは決して太陽系にとどまることはできない。摩擦がなく、スピードを落せないからである。真空の宇宙で抵抗は皆無に等しい。その温度は3Kほどであるという。

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