これも自然が持つ性質であり、われわれの思惑や推論に関係しません。 その結果リングは引かれて、図では右への加速を受けます。すなわち誘導電流の向きは磁石に向かってS極をつくろうとする向きで、誘導磁場の向きは図の場合左向きです。右ネジを左へ進めるためにドライバーを廻す向きに電流が生じるわけです。
その電流が導線の周りにつくる磁界(電流が進む向きに右ネジを廻す向きに、電流を取り巻くような磁界ができる)は必然にリング円内を図の左向きへ貫通します。つまりその磁束密度はリング円内で高まります。リングはその結果内側から外側に拡張させる向きの力をうけるのです。
これはまるで去ろうとする者を引き戻すときの筋肉のようですね。筋肉は太くなって筋繊維を縮めます。
場面B つぎに、磁石のS極側が接近するときはどうでしょうか。リング内に磁石がつくっている磁束の向きは図で右向きです。
図3
リングは近づいてくる磁石のS極に対抗して磁石の側へS極をつくろうとし、左向きの磁界をつくるのです。導線に発生する電流の向きは@とは逆になります。近づく磁石に反発しましてリングはその反力をうけ左への加速をうけます。
磁束の密度はリングの外側で密、内側で疎となり、リングは外から内への力をうけ圧縮されます。
リングに作用する力は@の場合と同じです。
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場面C 最後に、磁石のS極側が遠ざかるときはどうでしょうか。リング内に磁石がつくっている磁束の向きはBと同様、右向きです。
図4
後退しつつあるS極を引きとめようとして、コイルは相手Sに対してN極をつくろうとする向きの電流を発生させましょう。リング円の内側で右向きの磁界をつくります。導線に発生する電流の向きはBとは逆です。リングに作用する力はAと同様で、遠ざかる磁石を引き戻そうとし、リングはその反力をうけ右方への加速をうけましょう。
磁束の密度はリングの内側で密、外側で疎となり、リングは内から外への力をうけ拡張されるでしょう。
押せば押し返し、引けば引き戻そうとする電磁気のおもしろい性質を見てきました。前回のお話に、IHヒーター上で薄いものや軽いものが振動を起こすことがあると述べられていたことが思い出されます。これらの基本的な性質から、その原因が推し測られましょう。
これらのことを次にまとめておきます。
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