R  印刷用は      不定期便  第108号
   
 
不定期便 108   014  121

     衝突の実験 4
発行
2014年12月5日
発行者
熊野宗治
 
     

  エネルギー保存則 
      実験の考察
     014/8/28






――実験結果の考察

      これまでの概略
通常実験では
 打撃球を左へ15°(高さにして34ミリ)持ち上げ、 発射すると、第1群の頭に当たり、尻尾の玉が右へ飛び出す。それが第2群の頭に当たって尻尾の玉が右へ飛び出し11.8°まで昇った。

29 動画で見る
 次に発射玉を25°持ち上げてみると18.8°まで昇った。図示すると。

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   先頭にマグネットを付けて実験

初群に付けてみる
 打撃球15°(高さ34ミリ)からの落下で尻玉は24.3°(84ミリ)まで上昇した。
 25°(高さ94ミリ)落下では30.6°(138ミリ)上昇であった。
           

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ダブルマグネッの場合
 後の群にも先頭にマグネットを付けたら、さらに高く昇るのではないかをやってみた。15°(34ミリ)から落とす場合をやる。
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      不定期便  第108号
 イ) 初群と同じ向きで後群の先頭に第2のマグネットをつけようとすると、初群の磁場に引かれ、団子になるため、磁力の弱いもの(B)を玉の2番目に付けておこなった。
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すると23.3°(81ミリ)まで登った。図示すると

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ロ) 逆向き磁石を先頭に
 セカンドマグネットの極の向きをファーストの向きと逆へ向けてやってみる。

5すると42
玉が2個上がった。11.8(21ミリ)°22.7°(78ミリ)だ。

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実験の考察

これらの結果について考察してみましょう。位置エネルギーはmghで表わされ、落差hに比例するから、“高さ”はすなわちエネルギーと思って差し支えありません。mは質量、gは重力の加速度です。

通常実験の観察と考察

15°(34ミリ)振り上げて放した玉から7玉経由で受け取った最後の玉は、期待のh=34ミリには12ミリも不足して、22ミリという結果を見せました。これは与えられたエネルギーの64.7%しかなく、35.3%が音や熱となって失われたことを示しています。
 9個の玉は糸が空気から受ける抵抗のほかに、8回の衝突音と熱として失われるためと思われます。
 完全弾性体の90%の弾性体だとしても、単純思考で0.9×0.9×0.9×…=0.980.43しか伝達しないことでしょう。実験に使用した鋼鉄球では64.7%ですから、これよりも弾性率は良かったことになります。
 25°(94ミリ)振り上げに対しては18.8°(53ミリ)上昇で、41ミリ足りません。これは56.4%であって43.6%が失われています。失われる量が媒介数に関して一定率ではなく、エネルギーが大きいほど変換損失率が大きいらしいことが分かります。

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      不定期便  第108号

マグネット付加による実験の観察と考察 

第1群にマグネットをつけると、15°(高さ34ミリ)からの落下で24.3°(84ミリ)まで昇りました。落下始点よりなんと50ミリ高い位置です!
 これは失速分(エネルギー損失)を加味した22ミリを超え、エネルギー損失がないとした期待値34ミリより50ミリも高い84ミリまで達したことを示しています。12ミリのエネルギーロスがなかったとしたら96ミリに達していたはずです。
 振りあがった位置エネルギーは最初のm・34をm・50も超え、m・84の位置エネルギーを持ったことになります。損失分の12ミリを補填した上で獲得したm・50すなわち62 という余分なエネルギーはどこから湧いたものでしょうか?
 同じマグネット付加で25°(94ミリ)からは30.6°(138ミリ)まで上がって、落下地点を44ミリ上回り、これはエネルギー損失を考慮した94×(53/94)=53ミリをはるかに超え、エネルギー損失のない場合(94ミリ)より44ミリも高い138ミリまで達したものです。損失の41ミリ分(1図53-94)を補填した上に
  m・138−m・94=m・44
 つまり、m・44+m・4185 というエネルギーをいずこからか得ているわけです。
 ちなみに、玉を発射台から解放してからは一切手を触れていません。

ダブルマグネット実験の計画について

 シングルマグネット実験は、落下球を第1群の先頭に付けたマグネットで加速させ、そのエネルギーをそのまま取り込めば第2群の上昇球のエネルギーとなりうることを示そうとしたものだ。
 第2群にも同じ操作を施せばさらに上昇球の速さは上がるだろうと考え、それを確認しようという計画である。 

               計画一覧

実験

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   この配列では群れ同士が引き合い、一体化しようとするので断念
 
実験

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2群の2番目に、磁力の弱いもの(B)を付けてみた

実験

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セカンドマグネットの極をファーストとは逆向きで付けた。これなら群同士の凝集癖はない

使用マグネットはB以外すべて「ネオジウムマグネット丸」15φ×5 350mT 吸着力4.5sを使用した
Bは黒色のもので15φ×2 170mT 吸着力1.5s


ダブルマグネットについての考察
 実験2については、実験報告の通り、シングルマグネットよりもかえって、上昇高さで3ミリ劣る結果でした。これはBマグネットの磁力がAのおよそ2分の1と弱い上に、玉の2番目に置かれたため磁束がさらに削がれ、エネルギーの伝達ロスのほうが上回ったのであろうと思われます。

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    不定期便  第108号
 実験3については、第2群の頭に1群と同じAマグネットを逆向きに付けたもので、2つの上昇球が起こり、15°(34ミリ)振られた打撃球によって、角度について第2群の得たエネルギーは
  11.8°+22.7°
高さで言えば21+7899ミリとなりました。
 これに損失分41ミリを加えると140ミリ、つまりm・g140です。これはシングルの場合に比べ140-9644高いものです。  
    整理しますと、シングルでの獲得エネルギー96-34=62ミリに対し、ダブルでは140-34106を得ているわけです。
 これは第1群で62ミリ、第2群で44ミリ、合計106ミリを得たと見てよいでしょう。


 次回にはこれらの観察から、これらの持つ物理について論考してみましょう。




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竹ノ塚小学校 プール         筆者設計 平成3(1991)年8月




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