光速の背景   30 次ページ

 第1章 輝かしい発見

そんななか、1895年暮にレントゲンが放電管の実験中、透過力は強いが目に見えないX線を発見したのを知って、トムソンはすぐ追試にかかった。このX線が管内の空気に伝導性を与えることをみつける。トムソンの霊感はこの瞬間に訪れた。それなら、陰極線も管内の気体を電気伝導性にし、その結果ヘルツの電極は中和されてしまうのではないか。この仮説を証明するには管内の空気をもっと抜いてしまって伝導性が生じないようにしてみたらどうだ! ヘルツの電極にたった2ボルトの電圧をかけただけで陰極線は曲がり始めたのであった。
 原子は最小単位であり、それ以上分割できないものと、長い間考えられてきた。最小の原子のさらに1000分の1以下の粒子の存在が受け入れられるまでに2~3年を要したのは無理もない。
 トムソンのキャベンディッシュ研究所では、実験方法の探究が進められ、帯電粒子のまわりに水蒸気を凝縮させた粒子の軌跡を目に見えるようにする霧箱も、この研究所のウィルソン(
18691959スコットランド)の発明したもので、粒子の存在を確実にした。
 1911年、トムソンの弟子ラザフォードは原子構造を決定し、その後、物理学は原子核の構造と核反応、核エネルギー、素粒子論等々、現代物理学の扉を開いたのが電子の発見にあったことは言うまでもない。

















       30 次ページ