光速の背景  115
次ページ

第5章 未来へなにを遺すのか
する。このときローレンツ力として磁力線の密な方から疎な方へ働く性質がある。加えられる外磁場の向きはおもてから裏への向きであるとすれば、電荷の運動がつくる磁場も電流の右側ではおもてから裏への磁力線となり、外磁場のつくる磁力線と重なって密となる。その結果電流は右から押され左への向きに円弧を描くことになる。こうして生じた左回りの電流は、紙面の裏からおもてへの磁場をつくり、これは外部磁場と対立する向きである。これは反磁性であり、こうして生じたのが反磁性電流である。》
 円柱が超伝導体でつくられているとすると、外部磁場に対立する向きの磁場をつくるように円柱表面に電流が生じる。外部磁場は反磁性電流に力を作用し、物体全体に力を及ぼすと説明される。書物『超伝導』(A・W・B・テーラー著)では、以上のことは 外部磁場が一様でない場合としてある。しかし、上に述べたメカニズム説明でよいとすれば、一様磁場での説明でも成立する。一様でないとすれば、どのように一様でないのか説明されていないが、変動する場に対してはファラデーの電磁誘導の法則から、磁場がつよく(密に)なりつつある外部磁場に対して、これと対立する向きの誘導電流が生じることになる。変動しない一様の場合、この電磁誘導電流も生じない。よく知られた、磁石が超伝導の碗のなかで宙に浮いている写真(図a)がある。

図a 

その写真についてわたしはまた、図は反磁性電流によって磁石が宙に浮いていることを示し、わたしの解釈では、超伝導体である碗に近いほど磁石の磁力線は蜜となって、ある密度まで高まった位置で反磁性電流が起こす力と磁石の重量とが釣り合ったところで浮いているとみている。 超伝導体の中では永久電流(減衰しない電流)が生じているだろう。もしも先ほどのメカニズム説明でよければ、変動磁場でなくても浮くということから矛盾しない。
 磁石が宙に浮いて静止しているつりあい状態でみれば、磁場は変動していない。そして、現に磁石は宙に浮いている。一方、ファラデーの電磁誘導は変動磁場によって生じるものであるから、実験に見られる宙に静止していることが(性質はよく似ているけれども)ファラデーの電磁誘導によると説明することはできない。しかし、すでに超伝導状態である碗へ棒磁石を置く場合、磁場の濃いほうへ動く過程で、ファラデーの電磁誘導からもまた反電流を生じ、結果的には超伝導体である碗にそのまま流れつづけていることが原因でありえる。) はじめに試料をノーマル状態にしておいて磁場を加え、そのあとで超伝導状態になるまで冷却すると、磁束の排除が得られる。はじめに超伝導状態おいて、そのあと磁場をかけると、やはり磁束の排除がおこる。
超伝導状態のバルク――侵入度(後述)に比べ肉厚なもの――な資料から磁束が完全に排除されることを1933年、マイスナー(Meissner)とオクセンフェルト( Ochsenfeld)によって発見され、マイスナー効果として知られる。


マイスナー効果の実験方法
 静磁場中にある円柱形の資料にノーマル状態のコイルを巻きつけ、検流計につないでおく。ノーマル状態の円柱を超伝導状態になるまで冷却すると、超伝導状態にはいったとたんに、内部磁場が排除された状態に急激に変わる。この磁束の変化は弾道検流計によって観測される。また、超伝導状態にある円柱をコイルから急に取り除く(内部から排除されていた磁束が外部磁場の満ちた状態になる)と、この急激な変化は弾道検流計で観測できる。円柱がノーマル状態であった場合にはそれを取り除いても、磁束線に変化は生じない。ノーマル状態の円柱を通っている磁束は、円柱が存在しない場合のパターンとおなじだからである。検流計で

  115
次ページ