光速の背景  116
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第5章 未来へなにを遺すのか
磁束の変化は検出されない。(わたしの考察によれば、さきほど反磁性電流のところで述べた作用により、前半では試料に永久電流が生じて静磁場を相殺(排除)し、後半の現象については、その永久電流を取り除くことによるファラデー電磁誘導が生じ弾道検流計を動かすからではないだろうか?外部磁場のもとで超伝導体に流れる反磁性電流は、磁場による力をうけ、超伝導状態にある物体がその力を感じることが可能である。
 バルクな超伝導体の内部では磁束密度はゼロに等しく、反磁性電流はその内部には存在しないので表面を流れるほかなく、磁気的な力を表面で受けることになる。
 外部磁場が超伝導体に及ぼす力は、物体の表面の各点で“内向き”の圧力であり、その大きさは
   2/2μ
と計算される。Bはその点での磁束密度。この圧力は浮力に似たもののようである。実際には表面の種々の点での圧力が互いにつり合って、全体として力が加わらない場合も多い。一様な磁場の中の球はこの一例。全体として力が加わる例では、グイの実験はその一例。サイモン(Simon)の浮遊する超伝導球は、2個の超伝導の円環を流れる電流がつくる磁場たちの上で超伝導球が浮いている写真が示されている。
 前出の、碗の中に棒磁石が浮いている写真は、外部磁場が棒磁石によって生じているとき、超伝導の資料(碗形をしている)は誘起された反磁場によって、棒磁石に力が加わったものである。最初棒磁石をノーマル状態の碗の底に置いておく。次に碗を超伝導状態にすると、碗に生じた反磁場が棒磁石に力を及ぼし、棒磁石の重量とつり合うまで磁石を持ち上げる、と説明される。試料が侵入度よりも薄いときは、外部磁場の磁束は貫通することができる。薄い材料でつくった筒の周りにコイルを巻き、筒の中には細長いコイル(検出用)を差し込んでおき、外のコイルに電流を流して外部磁場をつくって変化させると、内部のコイルで磁束の変化を検出できる。超伝導体のバルクな試料からは外部磁場が排除され表面にだけ残る。その侵入度に関してH.London F. Londonの兄弟は、その表面からχにおける磁束密度は次式で与えられる、と提言した。
   dB2(χ)/d2χ=B(χ)/λ2  (ロンドン方程式)………①
λはロンドンの侵入度と呼ばれるある長さ(深さ)である。(この式は物性から導かれたものではないであろう。その変化に近似な曲線を数学的に与えた方程式にすぎないとすれば、ロンドン方程式によって他の性質を導き出すことを期待すべきではない。

 磁場が弱いときには、ロンドン方程式が成立することがわかっている。バルクな資料ではロンドン方程式を満足しないので別な式で定義されている。この定義によるλを用いて、バルクな資料の磁気的な特性を予知できるとされる。
 温度変化については、ほとんどすべての物質について
    λ=λ /{1 ― (T/TC41/2
で与えられる。

磁束の量子化
 原子の中の電子に対し、4種の量子数、エネルギー量子n個、軌道角運動量の量子個、その角運動量のある決まった方向の成分の量子m個、スピン角運動量の量子がm個ある。磁束の量子化とは、磁束が自然の単位となって現れることを意味する。永久電流は、外部磁場のもとで円環を冷却して超伝導状態にするときに生じる。
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