光速の背景 117 
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第5章 未来へなにを遺すのか
 円筒の内部での全磁束密度Bは、外部磁場の磁束密度Ba、マイスナー効果による内部磁場の磁束の変化Bdis、および永久電流による磁束密度Bcurrからなる。すなわち、
   BBaBdisBcurr
 磁束で定義して言えば、全磁束はΦ=πrB (rは円筒の内径)、外磁場によってΦ=πr、同様にマイスナー効果による変化をΦdiss 、永久電流による磁束をΦcurrとすると、全磁束はそれらの和 Φ=Φ+Φdis+Φcurr として表れるであろう。
 Φの存在の下で超伝導状態にすると永久電流が生じ、それから外場を取り去れば永久電流とそれに伴う磁束だけが残るはずである。
 ディーバー(Deaver)とフェアバンク(Fairbank)の実験による図(破線で外場磁束Φとマイスナー効果による変化との和(Φ+Φdis)を示す)が示され、これと実線(図では右上がり斜線が段状に、とびとびに上昇している)との差が永久電流による磁束の存在を示しているという。その磁束が《全磁束を増加させる》と述べられる。(これは筆者には反磁性電流と矛盾しているような気がする)。
 また実験の結果から、
   Φcurr=n・h/2e (=2×1015Wb2×107gauss cm2
 ここで、hはプランク定数、eは電子の電荷、nは整数。これは永久電流による磁束はh/2eの整数倍の値しかとることができないことを示し、これが“磁束の量子化”である。1961年に発見された。永久電流による磁束は外場磁束に最も近い、h/2eの整数倍の値をとる。(図では、外場の増加のある区間で永久電流は階段のようにフラットで、次の区間で不意に一段上昇する、というように段状をなしている)。

第一種の超伝導体

超伝導状態は2つの状態をとる。
外磁場がないとき
 超伝導体は完全に超伝導状態にあるか、完全にノーマル状態にある。
外磁場があるとき
 超伝導体は超伝導の領域とノーマルの領域とに分割される。
 分割はつぎの3種の様態でおこる。
 中間状態
 混合状態
   表面に超伝導状態
 外部磁場があるときは中間状態をとることがある。中間状態とは超伝導体が超伝導の領域とノーマルの領域とに別れることをいう。
 超伝導体は外磁場の大きさと温度によってノーマル状態から中間状態、完全に超伝導状態に変化する。外磁場が小さいほど、中間状態が起こりにくく、外磁場がゼロで、転移温度でノーマル状態から急に超伝導状にうつる。

電気抵抗について
 外磁場のある強さで中間状態となって電気抵抗が発生し、漸増的に増加し始め、さらに強い外磁場のもとでノーマル状態となって(グラフは一旦折れて)抵抗は漸増的に増大する。超伝導の導線は無制限に電流を流すことはできない。電流が十分強くなると導線は中間状態となり、その抵抗は一部復活する。臨界磁場の強さとなる電流のとき、これが抵抗ゼロで導線を流れる最大電流である。
 超伝導ボロメータへの応用がある。ノーマル状態にある物体が輻射を吸

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