光速の背景  118 次ページ

第5章 未来へなにを遺すのか
収すると、そのエネルギーによって物体の温度があがる。温度上昇は電気抵抗を上昇させることを利用して、電気抵抗の増加から電磁輻射を検出する測定器具がボロメータである。


熱効果
 外部磁場のある場合、バルクな円柱に、一定温度の下、磁場を増加してゆき円柱が超伝導状態からノーマル状態に転移したとき、周囲から熱を吸収することが見いだされている。逆に超伝導状態への転移では熱を放出する。

 第二種の超伝導体
混合状態
 1962年以降、超伝導物質は第一種と第二種に分けられることが認められた。第二種の物質は混合状態を示す。試料内部のノーマル領域は外部磁場に平行な、細い糸状に整列し、超伝導の物質で囲まれている。試料を貫いて無数の細い糸状の空孔が並び、この空孔の内部がノーマル状態の物質で満たされている。
 外部磁場に平行な太く長い第一種の円柱は中間状態を示さず、転移は突然起こるが、第二種の種の物質の同様な円柱は混合状態を示す。どちらの場合も、外部磁場が小さいとき、内部での磁束密度はゼロである。これはマイスナー効果である。
 第一種では外部磁場の強さが臨界値Hになると急激にノーマル状態に入るが、第二種の円柱では混合状態から磁束密度は徐々に増加し始める。このときの外部磁場の強さがHとされる。ついにノーマル状態での磁束密度になるときの外部磁場の強さをHc2とされる。
 c1でノーマルなフィラメント(糸状領域)が第二種の円柱内部に生じる。それはノーマルであるので、磁束線を運ぶことができ、磁束線はこのノーマルのフィラメントから、周囲の超伝導の部分に侵入度λ程度の距離だけ入り込むことができる。
 c1で混合状態に入ると、フィラメントの間隔は近似的にλとなるため、互いに相互作用が生じる。外部磁場が増加するにつれて、フィラメントの太さは増加しない代わりにより多くのフィラメントが生じる。より多くの磁束が侵入することができ、全体の磁束密度も増加する。フィラメント間隔も小さくなり、互いの相互作用はさらに強くなる。結局、外部磁場がHc2になると磁束密度はノーマル状態の値になって、円柱はノーマル状態に移行する。
 熱力学的にも、Hc1とHc2の転移にはっきりした相違がある。
 ~Hc1転移にも、Hc2~転移にも潜熱はないが、比熱は前者では無限大の不連続性、後者では有限の不連続性を示す。
 フィラメントは電流の渦巻きの中心になっていると考えられ、渦糸として知られる。これは永久電流に似ているが、永続するものではない。外部磁場を取り除くと、混合状態はなくなり超伝導状態になる。渦糸を貫く磁束は量子化される。磁束の基本電子h/2eの整数倍の値しかとれない。 各渦糸の互いの円電流はすべて同じ方向であるから、この力は反発力である。互いに等しい磁束をもつ磁束同士のあいだがrである反発力は、r≫λなら1r3/2のように変化する。rがλと同程度になるとこの力は急激に大きくなり、r=0で無限大になるという。渦糸の間隔は非常に小さいため、極度に小さい粒子が試料の上に付着され、そのパターンが電子顕微鏡で観察される。
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