光速の背景  124
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第5章 未来へなにを遺すのか
は少なくなり、増加はなだらかになる。

ジョセフソン効果
 1962年、ジョセフソンは大学院生のとき、障壁が充分薄い(~109m)とき、クーパー対が通過することが可能であると予言。抵抗ゼロで流れ、電位差なしで障壁を流れるであろう、それは一年とたたず実験によって確かめられた。
 障壁を通してクーパー対電流が流れる理由は、薄い絶縁層でへだてられた2つの超伝導体は、事実上1個の超伝導体として行動することである。クーパー対はクーパー対の密度と運動量が障壁の両側で等しくなるように障壁を通過する。もし、この電流が充分大きければ、対にならない電子にこわれてしまうからである。対にならない電子は抵抗ゼロで運動することはできず、電位差が必要。したがってジョセフソン電流の大きさには上限がある。
 電流に対する外部磁場の効果には、注目すべきだ。障壁を貫く全磁束が基本量子h/2eの整数倍ならゼロになる。h/2e=2×1015Wbだから、ジョセフソン効果は磁場の存在に対し極度に鋭敏、これは、非常に弱い磁場の検出に、直流ジョセフソン効果を用いることを示唆している。0.25Tの磁場の下、1011Tよりも小さい磁場の変化が検出されている。
 絶縁体の障壁に一定の電圧がかかっているとき、クーパー対の電流は振動数2eV/hの交流になると予言。2e/hはマイクロボルトあたり483.6MHzに等しく、振動数は非常に高い。 このジョセフソン効果は広範囲な示唆と発展をひき起こしてきた。非常に小さい磁場、小変化の検出と測定が最も成功している。

その後
 1987年、異例の早さでミュラーとベドノルツのノーベル賞が決まった。彼らは学術雑誌1986年9月号に報告した。L-B-C-O系の多結晶系で10Kふきんで完全に電気抵抗がゼロになった。
 液体窒素の価格はミルク程度あるいはビール程度と言われている。また、エキゾチックな超伝導体といわれる物質群への関心も高まっていた。ある種の有機超伝導体や磁性と超伝導の共存の可能性ほか、超伝導研究の幅広いバックグラウンドをつくっている。高温超伝導体の多くは多結晶のセラミックスとして焼成される。超伝導の性質を満たす物質系にY-B-C-O系がある。さきのミュラーとベドノルツのはYがLのもの。また、BをSでおきかえた系列もある。Yをランタノイド元素(L、N、S、E、G、H、E、L)で置き換えた物質も、90K以上の Tcを示すことが知られている。

BCS理論は
    2個の電子の間に引力が働いてクーパー対をつくる。
    この電子間の引力は電子と格子振動との相互作用から生じる格子振動の量子(フォノン)を電子がやりとりすることによって電子間に引力が生じると考えられる。 BCS理論――バーディーン、クーパー、シュリーファーによる超伝導の性質を先述のように電子の行動によって理論的に解明したもの――に対して3つの立場、高温超伝導体についても有効だとするもの、クーパー対をつくる引力は電子―フォノン相互作用ではないとするもの、①も②も否定し超伝導のキャリアーはクーパー対にはない、とする考えが提出されている。90Kまでクーパー対が保たれるには電子―フォノン相互作用は弱すぎるのではないかと疑問を持つ研究者も少なくない。
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