光速の背景  130
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第5章 未来へなにを遺すのか
ている。もっとも、われわれが原子力を用いるようになったことも、宇宙船を飛ばして地球の物質を火星以遠へ運んだりすること(地球の質量がわずかながら減少する)は、これまでの自然のままでは起こりえなかったことを起こしている。人の働きは自然のメカニズムを狂わすのであろうか? 人もまた自然から生まれたものであるのに。

いかにして物質は形状を保持するか
 これは筆者の試論であるから、真に受けないでいただきたいが、その謎の説明として次のように考えてみてはどうだろうか。
 物質は自らを形づくる原子や分子による“格子”――それが整然としたものであるか、ランダムなものであるかを別にすれば――をもっているという。いかにしてその格子を形成しているのだろうか? 格子を形成する原子たちは、いかにして格子の関節を維持しているのだろうか? その場から離れない(崩れない)のはなぜか。その関節が他の格子とも結びついて格子と格子との位置関係を保とうとするのはいかなるメカニズムによるのか? 月が地球へ落下しないのには円運動による遠心力によっている。しかし形ある物質の構造では回転することによって圧力に耐えるわけにゆかない。

 幻子――幻子とは筆者による仮説で、第4章3節参照――の構造からはどうか? 静かな水面に水滴を1滴落すと、波紋の初期に中心で高く盛り上がり、その周囲で低い輪をつくり再びやや盛り上がった大きな輪をつくり、その外側で水面になじんでゆく。その一瞬の断面は、幻子のつくる重力場の強度を示すグラフに似ているのではないかと考えている。

 地球がつくる重力場はそのひとつを見せる巨大な模型とみなせるであろう。そのグラフを考えると、無限遠でゼロ面にあり、地球へ近いほどにゼロ面から下へ曲線的に曲がってくる。「下へ」というのは引力を負として表わすからである。地球表面で最低値(重力極大)をとり、そこから地球内部へゆくに従い重力は減少し、中心でゼロとなるであろう。曲線はなめらかに連続している。

A図


                 B図

地球の中心で地球の重力場はゼロであって、決して無限大ではない。前著『アインシュタインの嘘とマイケルソンの謎』の巻末あたりにその図を示しておいた。ある種の幻子では、中心でのそれはゼロより高い位置にあるかもしれない。いくつかの球状の層をもって、幻子のいくつかのタイプが存在するであろうと考えている。その球状層は金米糖のようにいくつかの方位にうごめく濃淡をもつかもしれない。そのすべての重力場を均せばゼロに帰するのであろうと想像する。試みにわたしは、それらの結合の様子を図のように想像してみる。幻子と幻子はその、それぞれの山と山が重なるあいだは互いに反発し合い、その臨界点を破った領域で互いの山と谷が嵌合しあって、より強力な結合力を有する別な幻子に変化する、と想像することもできる。その幻子と幻子の引き合いと斥け合いは、そのゼロを境に、引力へも斥力へもきわめて大

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